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幕開け
悪役令嬢にされた姉妹 後編
しおりを挟む「…………これが強制力なのね」
クロエはポツリと呟く。
晩餐の席で、突然父が言ったのだ。シロエを母の実家へ養女に出すと。
(一年間頑張って仲良くなったから油断してたわ……)
そう、両親は姉妹の奮闘により仲睦まじい関係になっていた。離縁などあり得ないほど。
(まさかの、お祖父さま介入なんて!)
母フヨナは、一度だけ不仲で実家に泣きついた。それを、溺愛する娘の帰還を勝手に妄想し、離縁を首を長くしていたらしい。いきなり熱愛に戻ったことでがっくりしすぎて寝こんだ祖父は、病床で「シロエを養女にしたい」と願ったのだそうだ。
「お父様、わたくしではダメなのですか? シロエをひとりぼっちにさせるぐらいなら、わたくしが行きます」
呑気で甘えん坊なシロエには実家にいさせてやりたい。何しろ学園の入学式で再会するシロエは、別人のように荒んでしまっているらしいのだ。
「……気持ちはわかるがクロエは私にそっくりだ。お祖父さまはフヨナに似たシロエしか駄目だというのだよ」
「いくら病床とはいえ、他家の娘を寄こせとは理不尽ですわ!」
「クロエちゃん、ごめんなさい。でも会えないわけではないのよ? いつでも会えるから」
「………はい」
決定を覆すことは七歳のクロエには出来ず、従うしかなかった。
シロエの部屋で、姉妹は再びの作戦会議を開いていた。
「入学式まで会えないのね、お姉ちゃんと」
「ええ。あなたが《蒼嵐》に行ってすぐに国境で小競り合いがあるの。それで二国間はいつ戦争をしてもおかしくない状態になる」
「それじゃぁお手紙も無理会かぁ……」
「逢える日までお互いに頑張りましょう! 何があっても悪役令嬢なんかになっちゃだめよ」
「大好きなお姉ちゃんと会えるまでシロエも努力する。だからお姉ちゃんも悪役令嬢にならないでね!」
クロエは愛する妹を奪われて心を凍てつかせ暗い娘に、シロエは離縁した母と祖父に冷たくあたられ心を閉ざし奔放に。
しかし、その初期設定は変化している。
「ならないわよ、わかってるもの」
「そうね。ならないわね!」
しばらくの別れ。
姉妹の証として紅い石のネックレスを交換する。
「「ずっと姉妹よ」」
まだ来ぬ禍を、共に乗り切ることを誓った。
※次話から本編に入ります。
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