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ことの終わりは始まりとなれ!(本編)
act.13 王子の暴走と愛・前
しおりを挟む『わたくしは貴方が好きですわ、殿下…いいえ、ロイド様』
ささやかな想いをきっかけに、二人の関係は少しずつ進展している。近いようでいて遠慮気味な、遠いようで互いを意識している──じれったい距離感で、じわじわと。
「嫌われたのだろうか。私はまた傷つけてしまったのかもしれない……」
がっくりと肩が落ち、心なしか瞳が絶望に潤んでいる様が悲しみを誘いはしても、恋路に巻き込まれたい奇特な者はあまりいない。
「巻き込まないでくださいよ……」
アンリが額に手を当てて唸る。
「悪い。でも、こういう話はアンリが適任だと思った」
このところどうにもラナエラの様子が気にかかる。視線を逸らされる、会話が途切れる、ため息もよくついている気がするのだ。昨日も意図せず指が触れてしまったら、躰を緊張させていた。
王族としての責務と恋する人への贖罪の為に全力を尽くす日々を、ただ愚直なまでにひたすら駆けてきたロイドである。言葉に表さない恋情の示し方も受け取り方も、そんな技など持ちあわせていない。ましてや想い人の身内が難攻不落な要塞のごとく守りを固めており、拗れに拗れた関係といえよう。
煮詰まった末に、婚約者も定めず浮名を流す「花を惑わす蝶」と揶揄されるアンリへの相談を思いついた。執務室に現れたアンリを無理やり座らせて現在に至る──。
「ラナエラ嬢には告白してるんですよね?」
「…………」
「まさか、告白遮られてから一年近く伝えてないなんてありませんよね」
「……伝えられるわけないだろ。聴きたくないと意志を示されたのに」
「───馬鹿ですか」
ちょっとした淑女の意趣返しをどこをどうすればそうなる? 今だって明らかに意識されてるし、押すところでしょう! と呆れ果てアンリの目が据わった。
「明日、ラナエラ嬢にここに来ていただくように伝えます。いいですか、玉砕覚悟で告白をしなさい! それから、意思の疎通をちゃんとやれ。経験不足な王太子様にできるのはそれだけだ」
やってられるか、とばかりの剣幕で執務室を靴音響かせアンリが去り、残されたロイドは明後日の方向に進んで行くのであった。
玉砕──!?
やはり嫌われているのか!
◇◇
どうしてこうなった……?
執務室で、固まるアンリをよそにロイドが暴走していた。
第二、第三王子の婚約者たちの教育係として登城しているラナエラに、明日必ず王太子執務室へ来て欲しいと伝えたのはアンリだ。あくまでもラナエラにだ。断じてマリオン公爵同伴ではない。
何故か同行してきた人物は、お邪魔でしょうからと窓辺に寄りかかり、腹の見えない微笑みで佇んでいるだけだ。
それをロイドは、二人になりたくないラナエラの願いをくんでの同席と捉えてしまった。
「ラナエラ嬢に嫌われてるのは承知した。これ以上はもう貴女に迷惑をかけるつもりはない。婚約破棄のお詫びと婚約者のふりをしてくれたお礼をどのようにすればいいのか教えて欲しい」
玉砕即ち嫌われている──その思考のまま云っていた。
「「───!?」」
ラナエラのみならずアンリまで息を飲む。そんな二人にまったく気がつけず、
「私を嫌ってるのは気がついてた。最近の貴女は私といても困った顔をしているから。ラナエラ……嬢には、笑っていて欲しい……だから、もう貴女を追うのはやめる」
完全に明後日の方向へ突っ走っていた。
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