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ことの終わりは始まりとなれ!(本編)
act.14 王子の暴走と愛・後
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※駆け足で申し訳ありません。
※こんな落としどころでお気に召さないかたはご容赦を。
くっ……くくっ……
噛み殺しきれない笑いが、執務室の謎な方向に傾いた空気に割って入った。
「これは失礼。こんなに未来の夫が幼子のようだと、閨で娘が苦労しそうなので笑えただけです」
「「閨──!?」」
「お父上様ッ!」
笑い混じりの言葉に驚くロイドたちと、閨という単語に怒るラナエラをものともせず、
「私は急遽、領地に戻らねばならないのですよ。ですから娘を王太子殿にお護りいただきたくお願いに参上したのですがね。くく…いや、楽しいものを拝見させていただきました」
マリオン公爵は相変わらず喰えない態度であった。不敬すぎるが敵う相手ではないし、そんなことよりも訊かねばならないことはロイドには山ほどあった。
「領地に!? ラナエラを私に? マリオン公爵いったい何があったのですか!?」
よもや不測の事態でもあったのか? と不安に駆られる。が、想像すらしていない答えが返された。
「ああ、妻が孕みました」
──孕んだ!?
衝撃発言で固まったロイドにマリオン公爵の笑みが深まる。悪戯が成功したとでも言いたげな双眸でロイドへ退室の礼を残し、
「これは回収していきましょう」
色男も台無しな驚愕の石像と化したアンリを引き摺って、嵐は立ち去っていった。
ラナエラが説明するところによれば、公爵夫人の妊娠で公爵の庇護の優先順位に変動が生じることになったのが、きっかけだとのことだった。
一番は不動で妻。二番目は産まれてくるだろうか弱い末っ子になり、ラナエラは三番目と代わる。息子も何かと私事で忙しく、庇護の手が行き届かなくなるならば、愛娘を護れる相手に託せばよい。ちょうどラナエラの近くには権力と地位を行使可能な王太子が未婚で転がっている。矜持と実益を天秤にかけて合理的に判断したとの話であった。
「でも、わたくしのことは諦められるのですわよね……ロイ様」
瞳を伏せ哀しげなラナエラは扇で顔を隠してしまった。
「好きと申しましたのよ。なのに一年間ロイ様は何のお言葉もくださいませんし。ため息だってつきますわ。まさか誤解されてるなんて…」
ロイドは未だに冷めない混乱の中でラナエラの肩が震えていることに動揺し、傷つけてばかりの自分に腹立たしさしかない。
ラナエラの前に跪く。
「ごめん、幾らでも謝る。だから、だから、私の妃になって欲しい!」
「──嫌ですわ」
「頼むから!」
「───駄目ですわ」
彼女の顔が見えない。表情がわからず、震える躰に焦りがます。
失ってしまうのかと恐怖する。
王太子としてならロイドはあるべき姿を保てるのに、今は子供みたいに狼狽えるだけだ。
「ラナエラを、君だけを、愛してるんだ!」
くすくすくす……
ロイドが叫んだ途端、ラナエラが吹き出した。
「ラナエラ?」
「ようやく云っていただけましたわね、ロイ様に」
扇をずらした瞳はとても嬉しそうで、哀しみに震えていたのではなく、悪戯に笑いを堪えていたのだとようやく気がついた。
「君が……大好きだ」
きらきらと煌めく瞳に魅入られて、ロイドの口からこぼれ落ちたのは子供じみたそんな言葉だった。
※こんな落としどころでお気に召さないかたはご容赦を。
くっ……くくっ……
噛み殺しきれない笑いが、執務室の謎な方向に傾いた空気に割って入った。
「これは失礼。こんなに未来の夫が幼子のようだと、閨で娘が苦労しそうなので笑えただけです」
「「閨──!?」」
「お父上様ッ!」
笑い混じりの言葉に驚くロイドたちと、閨という単語に怒るラナエラをものともせず、
「私は急遽、領地に戻らねばならないのですよ。ですから娘を王太子殿にお護りいただきたくお願いに参上したのですがね。くく…いや、楽しいものを拝見させていただきました」
マリオン公爵は相変わらず喰えない態度であった。不敬すぎるが敵う相手ではないし、そんなことよりも訊かねばならないことはロイドには山ほどあった。
「領地に!? ラナエラを私に? マリオン公爵いったい何があったのですか!?」
よもや不測の事態でもあったのか? と不安に駆られる。が、想像すらしていない答えが返された。
「ああ、妻が孕みました」
──孕んだ!?
衝撃発言で固まったロイドにマリオン公爵の笑みが深まる。悪戯が成功したとでも言いたげな双眸でロイドへ退室の礼を残し、
「これは回収していきましょう」
色男も台無しな驚愕の石像と化したアンリを引き摺って、嵐は立ち去っていった。
ラナエラが説明するところによれば、公爵夫人の妊娠で公爵の庇護の優先順位に変動が生じることになったのが、きっかけだとのことだった。
一番は不動で妻。二番目は産まれてくるだろうか弱い末っ子になり、ラナエラは三番目と代わる。息子も何かと私事で忙しく、庇護の手が行き届かなくなるならば、愛娘を護れる相手に託せばよい。ちょうどラナエラの近くには権力と地位を行使可能な王太子が未婚で転がっている。矜持と実益を天秤にかけて合理的に判断したとの話であった。
「でも、わたくしのことは諦められるのですわよね……ロイ様」
瞳を伏せ哀しげなラナエラは扇で顔を隠してしまった。
「好きと申しましたのよ。なのに一年間ロイ様は何のお言葉もくださいませんし。ため息だってつきますわ。まさか誤解されてるなんて…」
ロイドは未だに冷めない混乱の中でラナエラの肩が震えていることに動揺し、傷つけてばかりの自分に腹立たしさしかない。
ラナエラの前に跪く。
「ごめん、幾らでも謝る。だから、だから、私の妃になって欲しい!」
「──嫌ですわ」
「頼むから!」
「───駄目ですわ」
彼女の顔が見えない。表情がわからず、震える躰に焦りがます。
失ってしまうのかと恐怖する。
王太子としてならロイドはあるべき姿を保てるのに、今は子供みたいに狼狽えるだけだ。
「ラナエラを、君だけを、愛してるんだ!」
くすくすくす……
ロイドが叫んだ途端、ラナエラが吹き出した。
「ラナエラ?」
「ようやく云っていただけましたわね、ロイ様に」
扇をずらした瞳はとても嬉しそうで、哀しみに震えていたのではなく、悪戯に笑いを堪えていたのだとようやく気がついた。
「君が……大好きだ」
きらきらと煌めく瞳に魅入られて、ロイドの口からこぼれ落ちたのは子供じみたそんな言葉だった。
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