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ことの終わりは始まりとなれ!(本編)
act.15 王子の婚姻~ことの終わりは始まりとなれ~本編完
しおりを挟む「おめでとうございます、王太子様ぁ!!」
「王太子妃さま、万歳!」
ラスロンド大聖堂へ通ずる数多の沿道に溢れる人々の波。花々が歓声とともに撒き散らされ、ランスロット王国は国をあげての大騒ぎの最中にあった。
今日は王太子の婚儀の日だ。王太子となって五年目のこの日、長い間待ち焦がれた民たちが盛り上がるのは当然の成り行きだ。
祝いの声が扉を閉ざされた大聖堂の中まで轟く民の歓びに、諸国の参列者たちは目を丸くする。そしてこの国の治世が盤石であろうことに羨ましさを覚えるのだ。我が国の民はこれほどの熱気で王家の祝事を慶ぶだろうかと──。
ロイドは司祭の祝詞を聴きながらさり気なく王太子妃となる最愛の人へ眼差しを向ける。
ウエストを絞った腰回りが膨らんだ鐘の型というドレスは腰の華奢な細さを強調し、緻密で繊細なレースで形づくられた肩先まで出した襟から覗く鎖骨の線が艶めかしい。魅了されながら、この婚姻衣装を選んだ自分を恨めしく思ってしまう。大聖堂に現れたラナエラに惚けた視線を注いでいた男たち。奴らの脳裏にこのおそろしく麗しい姿が残るのかと腹立つ。
ギュッと拳に力が入ってしまうが、参列者席にいる愛妻家たちを思いだす。
(父上や義父上に撃退法を学ばねば!)
先達にはことかかないのだ、人妻にただならぬ熱を向ける者は積極的に追い払うのみだ。
コホン…と咳払いに、視線を音の方向に向ければどうにも居心地悪げな司祭と目があう。
穴が空くほどラナエラを凝視していたようだ。
「───誓いの御言葉を。王太子殿下」
司祭の促す声に身を焦がす嫉妬心を抑え込む。傍らのラナエラの手を取り、ロイドは誓いの言葉を発した。
「この命尽きるまで我が妃ラナエラとあらんことを誓う」
◇◇
二日間にわたる祝賀の宴は終わり、ようやく二人きりの時間が訪れた。
初夜である。
諦められなかった長い長い恋が実った今が信じられない。夢にいるのではないか、何かの手違いではないか。転がり込んだ幸運は、何かよからぬものの気紛れで奪い取られてしまうのではないだろうか。
うろうろと寝室で行ったり来たり、落ち着かない心持ちで待つ時間はとてつもなく長く感じた。
「……っ、ラナエラ」
夜着に身を包んだラナエラが寝室に足を踏み入れるや、胸に抱き寄せて首筋に顔を埋めた。
抱きしめれば伝わる温もりにこれが現実だと安堵の吐息がもれる。
「ロイ様?」
身動きせず抱きしめ続けるロイドの背にそっと回される細い腕。肌に覚えるさざ波のように広がるものに、胸が詰まる。
愛しくて。恋しくて。次から次へと止め処なく生まれ続ける恋情に、柔らかく背を撫でてくれる指の甘さに酔いしれる。
「──愛してるよ」
これからも惑い苦悩するのだろう。国を思い、無力さに嘆き、肩にかかる重みに苦悩するのだ。それでも今夜からは一人ではない。これからは二人で支えあって生きていく。
いつの間にか寄せあった頬が離れ、唇が距離を埋めていく。
先に触れたのはどちらからだろうか。初めての口づけが、少しずつ角度を変え、深さを増す。
「…んっ…ふぅ…んんっ……」
時々溢れる甘やかな吐息に、鼓動が烈しくなる。夜着の薄い布越しに感じる肌が、ロイドの躰に制御困難な熱を溜めていく。
昂ぶる欲望のままに貪りつきたいと本能が理性の鎖をガチャガチャと揺さぶる。
──そんな顔を見せないで!
溶け潤んだ表情を浮かべたラナエラは、紳士的に紳士的にと心中で獣を戒める苦労をよそに、くったりと力の抜けた躰をロイドの胸に預けてきた。
既に限界だった。
紳士など識ったことか。
「………抱いてもいい?」
「……はい」
「獣になったらとめてね?」
たぶん理性飛ぶからと耳もとで囁き赤面をさせて、そっとラナエラを抱き上げる。
「君だけを愛してるよ、私の奥方」
ロイドは晴れやかに微笑んで寝台へと向かうのだった。夜の帷の中で互いを慈しみ抱きあうために。
愚かさから始まった恋が時を重ね、ことの終わりは始まりとなれ──、そう願い続けた恋情は、今夜形を変えて、ようやく新たな形を作っていく。
fin.~
作者より:
※閨のあれこれはanother sideで!
※本編は控え目をモットーにしております、ご容赦を。
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