30 / 38
ことの裏側(another side)
ロイド&ラナエラ:守りたい未来
しおりを挟む
※ありがとうございます。これでanother sideは終わります。今後は番外編を投稿します。
春風が暖かい。
王妃のお気に入りの薔薇園は子供たちの笑い声に溢れている。
「母上さま、お花です!」
「わたくしもお花です!」
五歳の王子と三歳の王女が母親である王妃に摘んだばかりの花を差し出す。
「ありがとう。綺麗なお花ね」
腕に生まれたばかりの末っ子王子を抱きながら微笑む王妃は、ラナエラという。
結婚して六年の間に、二男一女の母となった彼女は、民からも賢妃と愛されている。
「姉さま、ご機嫌よう!」
息子とさして変わらない弟が走ってくる。その後ろを、
「「おばさま、ごきげんよう!」」
双子の、同じく幼い甥と姪が追ってきた。
「遊ぼうよ!」
大好きな親戚の到着に、待ちわびていた王子と王女が突撃していく。まるで仔いぬが仲良く遊ぶように微笑ましい。
「ラナエラ、風邪をひくよ?」
華奢な肩に上着がかけられる。
「あなた、もう今日の執務は終わられましたの?」
眩しげに見つめられ、
「明日から少し留守にするからね、今日は英気を養えと云ってくれたから」
おっかない側近筆頭の気が変わらないうちに逃げて来たよ、と笑う。
ロイド・レイ・ランスロット。先日代替わりをしたばかりの若き国王だ。
「君を補充しておかないと私はすぐに駄目になってしまうから」
「あら、わたくしも同じですわ」
「父上たちの様子を見に行くだけだし、早く戻るよ」
ロイドは疲れを滲ませて、激務の原因を思う。
隣接した小国があった。
悪政と飢饉で激減した資源を安易に他国から調達しようと目論んだ彼の国は、事もあろうか大国であるランスロットの国境を侵した。
結果、報復のため攻め込んだランスロットの圧勝となり、悪政に疲弊しきっていたその国はろくな抵抗もせず、新たに王国の領土になった。愚王と無能な貴族に愛想をつかした民はランスロットに組み込まれることを心から歓迎したという。
戦に加わったロイドは父のもとで再建案を練るつもりだったのだが……。
まだまだやる気も体力もある前国王と五公爵がほぼ同時に隠居宣言をしたために、ロイドは家族団欒をする間もあまりとれないで、政務に取り組む日々を送っている。
「五公爵の代替わりが完了するまでは大変だけど、その後は時間がつくようになる」
「……吸収したばかりの領土に、何も皆様が行かずともよいのに。困った方々ですわね」
「子供だよね、本当にあの人たちは…」
くすり、と微笑みを交わし合う。
いつまでも精力的なのは羨ましい限りだが、少しは若者にも安らぎに浸る暇を与えて欲しいものだと心底思うロイドである。
「帰ったら甘やかしてくれる、ラナ?」
甘えたくなって囁くロイドに、
「わたくしはあなたに甘いの。ご存じでしょう?」
愛しい最愛の妻は頬への口づけをくれた。
うん。私はいつだって君が大好きだ。
山あり谷ありな日々だけれど、この幸せがずっと続きますように……
はしゃぐ子供たちの歓声に、ふたりは慈しむ眼差しで未来を見つめるのだった。
春風が暖かい。
王妃のお気に入りの薔薇園は子供たちの笑い声に溢れている。
「母上さま、お花です!」
「わたくしもお花です!」
五歳の王子と三歳の王女が母親である王妃に摘んだばかりの花を差し出す。
「ありがとう。綺麗なお花ね」
腕に生まれたばかりの末っ子王子を抱きながら微笑む王妃は、ラナエラという。
結婚して六年の間に、二男一女の母となった彼女は、民からも賢妃と愛されている。
「姉さま、ご機嫌よう!」
息子とさして変わらない弟が走ってくる。その後ろを、
「「おばさま、ごきげんよう!」」
双子の、同じく幼い甥と姪が追ってきた。
「遊ぼうよ!」
大好きな親戚の到着に、待ちわびていた王子と王女が突撃していく。まるで仔いぬが仲良く遊ぶように微笑ましい。
「ラナエラ、風邪をひくよ?」
華奢な肩に上着がかけられる。
「あなた、もう今日の執務は終わられましたの?」
眩しげに見つめられ、
「明日から少し留守にするからね、今日は英気を養えと云ってくれたから」
おっかない側近筆頭の気が変わらないうちに逃げて来たよ、と笑う。
ロイド・レイ・ランスロット。先日代替わりをしたばかりの若き国王だ。
「君を補充しておかないと私はすぐに駄目になってしまうから」
「あら、わたくしも同じですわ」
「父上たちの様子を見に行くだけだし、早く戻るよ」
ロイドは疲れを滲ませて、激務の原因を思う。
隣接した小国があった。
悪政と飢饉で激減した資源を安易に他国から調達しようと目論んだ彼の国は、事もあろうか大国であるランスロットの国境を侵した。
結果、報復のため攻め込んだランスロットの圧勝となり、悪政に疲弊しきっていたその国はろくな抵抗もせず、新たに王国の領土になった。愚王と無能な貴族に愛想をつかした民はランスロットに組み込まれることを心から歓迎したという。
戦に加わったロイドは父のもとで再建案を練るつもりだったのだが……。
まだまだやる気も体力もある前国王と五公爵がほぼ同時に隠居宣言をしたために、ロイドは家族団欒をする間もあまりとれないで、政務に取り組む日々を送っている。
「五公爵の代替わりが完了するまでは大変だけど、その後は時間がつくようになる」
「……吸収したばかりの領土に、何も皆様が行かずともよいのに。困った方々ですわね」
「子供だよね、本当にあの人たちは…」
くすり、と微笑みを交わし合う。
いつまでも精力的なのは羨ましい限りだが、少しは若者にも安らぎに浸る暇を与えて欲しいものだと心底思うロイドである。
「帰ったら甘やかしてくれる、ラナ?」
甘えたくなって囁くロイドに、
「わたくしはあなたに甘いの。ご存じでしょう?」
愛しい最愛の妻は頬への口づけをくれた。
うん。私はいつだって君が大好きだ。
山あり谷ありな日々だけれど、この幸せがずっと続きますように……
はしゃぐ子供たちの歓声に、ふたりは慈しむ眼差しで未来を見つめるのだった。
35
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
《完結》氷の侯爵令息 あなたが子供はいらないと言ったから
ヴァンドール
恋愛
氷の侯爵令息と言われたアラン。彼は結婚相手の伯爵令嬢にとにかく冷たい態度で接する。
彼女は義姉イライザから夫が子供はいらないと言ったと聞き、衝撃を受けるが気持ちを切り替え生きていく。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
公爵令嬢のひとりごと
鬼ヶ咲あちたん
ファンタジー
城下町へ視察にいった王太子シメオンは、食堂の看板娘コレットがひたむきに働く姿に目を奪われる。それ以来、事あるごとに婚約者である公爵令嬢ロザリーを貶すようになった。「君はもっとコレットを見習ったほうがいい」そんな日々にうんざりしたロザリーのひとりごと。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
婚約破棄から50年後
あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。
そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる