愛してるとか言わないで

宇流

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ただ俺の八つ当たり

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『おはよ~亮』
『ん、おはよ』
『今日幸君休みだってさ~』
『…そうか』
俺は正直内心ほっとした。
『理由聞かないの?』
『ん?』
『幸君が休む理由』
『だって俺に関係無いし』
『そーだけど心配じゃねーの?』
『…』
『命日なんだってさ』
『え?』
『幸君のお兄さんの』
『あぁ、そうか』
『、そうかってそれだけ?他に何か』
蓮が言い切る前に
『なんだよ!?俺に何を求めてんだよ?』
俺は思わず声を荒げてしまった。
『ご、ごめん』
『うん、』
少しの沈黙の後蓮が話し始めた
『幸君今日〇〇駅5時に帰ってくるって
言ってたから暇だったら迎えに行ってあげて』
『?』
『亮バイクの免許持ってるでしょ
〇〇駅から幸君家遠いから亮に迎えにいかすよって行っちゃったから』
『…』
『ごめん、用事あるなら俺チャリで行くからい』
『いや、今日は何も無いから俺が行くよ』
『そっか、ありがとう』
『…その、さっきは怒鳴って悪かったな』
『ううん。俺が無神経だったから』
少し気まずそうな雰囲気で2人は学校へ向かう
『じゃあ俺朝一から体育だから直で更衣室いくわ~』
『わかった!怪我するなよ!』
『はいは~い』
そう言って俺はこの気まずい空気から逃げ出した。
人間都合の悪い事からは逃げ出したくなる。
そして俺は都合の悪い事が多すぎる。


その日の夕方蓮との約束通り
仕方なく俺は幸を駅まで迎えに行った。
時間より少し早くついてしまって
待っている間このまま来なければいいのに
そんな事を考えていた。すると
『亮君!』
そう言って駅の改札口から幸の声が聞こえた
『ごめん、待たせた?』
少し申し訳なさそうに言う幸
『いや、今着いたし大丈夫』
『なら良かった!!ごめんね迎えなんてさせて』
『別にいいよ、俺バイクだし』
『うん!ありがとう!!』
そう言って幸は俺の後ろに跨る。
背中が熱い。心臓がうるさい。静まれ。
俺はずっとそれだけを思って運転していた。
『ほら、着いたぞ』
『うん!ありがとう!!』
『おう』
そう言って帰ろうとする俺に
『亮君良かったら上がってかない??』
と声をかける幸に
『いや、いいわ』
とだけ返した。
『そっか』
そう言って少し残念そうな顔をする幸に対して俺は
『お前この前俺と付き合いたいって言ってたよな
付き合ってずっと一緒にいたいって』
『え?』
と少し戸惑う幸
『やっぱそれ無理だわ。』
『なんで今いきなり…』
『お前は自分は和樹の代わりでもいいって言ったな
でも無理なんだよ、お前に和樹の代わりなんて
そんで俺もお前の兄貴にはなれないし
お前の兄貴の代わりにもなれねぇーんだよ!!』
俺は声を荒げて幸に言う。
わかってる。こんなのただの八つ当たりだ。
ただどうしようもなく口が止まらないんだ。
そしてそんな俺に対して幸は
『なんで兄さんが出てくるの』
と悲しそうな目で俺を見る。そして
『僕は亮君を通して兄さんを見たことはないよ』
ただ一言そう言った。
『迷惑なんだよ。好きだとかなんだとかで
俺に毎日毎日付き纏ってくんのが!』
そう言い放った時幸は今にも泣きそうな顔で
『…そっか。ごめんね。最近僕甘えすぎだったよね。
もう付き纏ったりするのやめるから。本当ごめん』
そう言う幸の声は少し震えていた。
その声を聞いた時俺は初めて我に帰った。
謝ろうと思ったが何故か声が出なかった。
そんな俺に幸は
『今日ありがとう。じゃあ』
と言ってアパートの中に消えていった。

そしてその日から幸は俺に関わらなくなった。
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