転移先では望みのままに〜神族を助け異世界へ 従魔と歩む異世界生活〜 

荘助

文字の大きさ
35 / 58

第35話 豊穣神

しおりを挟む
「あら~ あらあら~。私も何かプレゼントする必要あるかしら~?」

 のびのびな感じのおっとり美人。
 豊穣神デメティール様が顔を斜めに向け、頬に手を当てるお決まりポーズで思案している。

「アリーネ様!加護をありがとうございます。頂いたからには、しっかりとご期待に応えれるよう頑張ります」

「デメティール様!私はまだデメティール様のご期待に添えられるような事は”何一つ”しておりません。それに貰いすぎです」
 
 必死にチート化を遠慮する。

 加護の力は、下手をすれば将来性を決定付けてしまう。
 自由度がなくなる可能性があるのだ。

「そ~お。そう言えばタカヤさんの近くに、私の加護を持っている人がいるんじゃないですか?タカヤさんから習熟した私の加護の香りが強くするのよ~」

 習熟した香りとは、どういう香りだろうか……。
 でも間違いなく、僕の良く知っている人の事を言っているのだろう。

 はっきりと顔が浮かぶ。

「はい。豊穣神の好意という加護を持っている料理人がいます。名前はコックスさん。宿の厨房で腕をふるっています」

「あらあらあら。コックスと言ったら30年以上前に加護を与えた子よ~。料理をとにかく愛していてね。素材を組み合わせるのが上手だったのよ~。でもね毎日お祈りしててくれたんだけど。何があったかは分からないけどあの子の負の感情が高まった時期があってね~。それから来なくなっちゃったのよ~。でも私の加護がついたままって事は料理は続けていたのね。よかったわ~」

 コックスさんに何があったのだろう。

 おそらくその負の感情が高まったとき、一時料理は作ってなかったんじゃないだろうか。

「デメティール様。よろしければコックスさんを、教会に連れて来たいと思うのですが」

「そうね~。是非お願いするわ。きっとあなたのためになるはずよ~」

「うむ。各々やる事は終わったかの。あまりこちらに留まるのも良くないじゃろ。タカヤよ改めて望みのままに生きるのじゃよ」

「それではなタカヤ」

「またねぇタカヤさん」

 一瞬強烈な光が辺りを包み、気がつけば片膝をついた状態で、座っていた。

「ふ~まさか神様達が現れるとはね。メルクス様は今、別のところにいるのだろうか。いつかお会いしてきちんと挨拶したいな」

 さて善は急げか。
 でもコックスさんをなんて言って、教会に連れてこようか。
 まぁ普通に頼めば来てくれるかな。

 改めて全ての神様を一拝し、教会を後にする。
 時間はまだ14鐘。
 恐らくは宿もそこまで忙しくはないだろう。

 15分ほど歩き、《幸腹亭》の前に辿り着く。

「ただいま帰りましたー」
 予定が終わったわけではないが、何となく帰って来たらこの挨拶をしないと落ち着かない。

「あら。早かったね。今日の予定はもういいのかい?」

「いえ。予定が出来たので一回帰って来ました。コックスさんは厨房ですか?」

「あらあの人に用事があるのかい?ちょっと待ってな」

「あんたー!タカヤ坊があんたに用事があるみたいだよ!」

 ラーダさんは大声を出し、コックスさんを呼ぶ。
 よく通るその声は宿のどこにいても聞こえるだろう……。もちろん外にも聞こえてるはず…

「あいよー。ちょっと待ってくれ」
 コックスさんは軽く手を拭きながら厨房から顔をだす。

「すみませんコックスさん。今から1鐘弱程お時間いただけませんか?」

 往復でも30分くらいだろう。
 教会での時間も含めても、このタイミングを逃すといつになるか分からない。

「おう。突然だな。何だ市場にでも行くつもりか?」

「いえ目的地は違います。とにかく何も聞かずについて来てもらえませんか?」

 コックスさんは一瞬考え、すぐにバンバンと僕の背中を2度叩く。

「何だかよくわからんが、タカヤがこれだけ真剣なんだ。俺が必要なんだろ?」

「はい。ありがとうございます。ラーダさんすみません。コックスさんを少しの間お借りします!」

 コックスさんと宿を出て、大通りを北へ向かう。
 道中、新作のメニューについて話を聞いたが、まさかカレーに近い食べ物の話を聞くとは思わなかった。

 ちなみにこの大陸にはカレーはまだないらしく、今回のメニューも様々な香辛料と野菜、肉を炒めてだし汁で煮込むというものだった。
 願わくは客として一番に食べたいと、大興奮でコックスさんに詰め寄ってしまった。

 そんな話しをしながら先程同様、15分程で教会前に到着する。

「ここは……タカヤ、ここが目的地かい?」
 コックスさんは、少しの暗い顔をする。

「はい。そうです教会が今回付き合って頂きたいところです」
 目的地が教会だときいたコックスさんの表情は、相変わらず冴えず、教会が嫌というわけではなく、どこか気マズい雰囲気を出していた。

「タカヤ。実は俺はもう15年以上教会に行っていないんだ。タカヤは知らんと思うが、訳あってな。当時は毎日通ってたんだけどな……」

 バツの悪そな顔をし、門に近づくのをためらうコックスさんの背中をグイグイと押しながら、教会内の大聖堂に辿り着く。

「ここの教会は初めて入ったが、何とも美しいな。俺がいた王都は、確かに立派な教会だったが装飾に力を入れすぎて成金主義の宮殿のようだった。ここは素晴らしいな」

 4柱の神様を一通り眺め、ステンドガラスをみて呟く。

「そうですね。僕はここが初めてですが、本当に素晴らしいと思います」

 そのままコックスさんの袖を掴み、創造神ラノスの前に行き祈りを捧げる。そして。

「コックスさんこっちです」

 3番目の像。デメティール様の前に行くと、コックスさんは自然と片膝を付き祈りを捧げ始めた。

 僕はその傍で像に一礼し、コックスさんを見守っていた。

しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...