至近の光

ゆうさん

文字の大きさ
5 / 7

第4話 自由までの準備

しおりを挟む
結婚を伝えられた日の夜。私は眠ることができず泣き続けていた。夜の11時くらいになると、輝の部屋の明かりがついた。

 天乃:
 「輝、帰ってきたのかな?」

輝と話すのが最後になるかもしれないと考えた私は小さい頃よくしていた手を伸ばして輝の部屋の窓をノックした。

 輝明:
 「どうしたの?ずいぶんと懐かしいことして。」

私はどこから話したらいいかわからず、言葉を発せないでいた。すると、輝は何かを察してくれたのかカバンからスマホとイヤホンを私に渡して、イヤホンを耳に入れるようにジェスチャーした。

 輝明:
 「聞こえる?」

イヤホンを耳に入れるとイヤホンから輝の声が聞こえた。

 輝明:
 「俺のパソコンと繋いで通話できるようにしたよ。これなら小声で話せておばさんたちにも聞こえないでしょ。何があったかは知らないけど話したいことがあったんだろ。ゆっくり時間をかけていいから話してみな、すっきりするぞ。」

輝のやさしさが身に染みた。先ほどまでいろんな感情がこみ上げ、重く感じていた体も輝の声を聴いて落ち着いて軽くなった気がした。

 天乃:
 「あのね、聞いて。」

私は家に帰ってからのことを事細かに輝に伝えた。輝は私の話を頷きながら真摯に聞いてくれた。

 天乃:
 「輝、やっぱり2人で遠い場所に逃げない?結婚なんてしたくないよ。私は輝とがいい。」

その輝の姿にやっぱり離れるのが嫌と感じた私は思わず告白じみた言葉を言ってしまった。でも、なりふり構ってられなかった。一日でも早くこの家からあの両親から離れたかった。

 輝明:
 「天乃落ち着いて。天乃ならわかるはずだよ。自分で責任をとれない俺たち子供がそんなことをしても意味がないことに。」

輝の言葉に我に返った。

 天乃:
 「ごめん。気が動転してた。」

 輝明:
 「大丈夫。あんなことがあったんだ、しょうがないよ。流石にほおってはおけないけど、今すぐどうこうできることでもない。だから、卒業まで待ってほしい。」

 天乃:
 「え?」

 輝明:
 「今どうにもできないから時間をかけて準備をする。だから、卒業まで1年ちょっと耐えてほしい。必ず迎えに行くから。」

輝の真剣な言葉に私は再び涙を流しながら頷いた。

 天乃:
 「うん、待ってる。」

 輝明:
 「ありがとう。でも、あの両親がいつ強硬手段に出るかわからない。だから、天乃にも協力してほしいことがある。」

 天乃:
 「うん。私にできることならするよ。何をしたらいい?」

 輝明:
 「まずはその男の人との結婚、籍を入れるのを卒業まで待ってほしい旨を親に伝える。このまま何もしなかったら最悪天乃の知らないところで籍を入れられる。それは避けたいからこれは必須だ。そして、その男の人と二人きりにならない。これも徹底してほしい。相手は未成年とわかって結婚する人だ。何をしてくるかわからない。だから、絶対に二人きりにならないこと。」

 天乃:
 「わかった。」

 輝明:
 「俺も天乃と話せないのはつらいけど、最悪の結果にならないためだ。頑張ろうな。」

 天乃:
 「うん。頑張る。」

 輝明:
 「それじゃあ切るな。おやすみ。」

 天乃:
 「おやすみ。」

私は輝の声を聴いて安心して眠りについた。


翌朝・・・
私は両親と話すために少し早めに起きた。

 母:
 「あら、おはよう。今日は早いのね。」

 天乃:
 「まぁね。お父さんはいる?」

 母:
 「お父さんは今、身支度してるわよ。もうすぐで戻ってくるわ。」

 父:
 「今日は早いな。天乃。」

 天乃:
 「うん。ちょっと話したいことがあってね。」

私は朝食を食べ終え、昨日輝と話したことを切り出した。

 天乃:
 「まずは、昨日取り乱してごめんなさい。急なことでびっくりしちゃって。」

 母:
 「本当よ。急でびっくりしたんだから。」

 天乃:
 「ごめん。実はお願いがあって。」

 父:
 「お願い?」

 天乃:
 「うん。日影さんとの結婚、籍を入れるのを卒業まで待ってほしいの。私はまだ高校生だし、お相手は社会人でしょ。高校生と結婚は世間の目的に危ないと思うの。卒業したら私も高校生じゃなくなるし大丈夫になると思うの。もう輝ともはなさないからお願いします。」

私は深く頭を下げた。こうすることで私のお願いを通しやすくなると考えたからだ。
 
 母:
 「いいわよ。」

両親は少しの間、互いを見つめあった後にあっさりと許してくれた。

 天乃:
 「いいの?」

 母:
 「えぇ。そこまで修さんのことを考えてるならいいわよ。ねぇお父さん。」

 父:
 「あぁ、修には俺から言っておこう。」

とりあえず第1関門を突破し安心した私は、そっと胸をなでおろした。ここから私は、できる限り日影さんに会わず二人きりにならないように立ち回った。卒業後の進路を近場の今の学力では無茶だと思えるほどのレベルが高い大学に設定して、勉強に明け暮れた。こうすることで何とか二人きりになることを避けていた。

月日は流れ、高校3年生の春。大学受験の勉強も順調に進んでいき、合格のめどが立つまで学力が向上してきた。輝と話せない寂しさはずっとあったが、もうすぐこの生活と離れられることに喜びと感じていた。
ある日の夕方、この日も学校が終わるとすぐに帰宅し、自室で勉強をしていた。すると、いつもはするはずのない扉をノックする音が聞こえた。だが、今のこの家には私以外誰もいないはずだ。扉の向こうから聞こえたのは今一番聞きたくないあの人の声だった。

 日影:
 「こんにちは、天乃ちゃん。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

俺の可愛い幼馴染

SHIN
恋愛
俺に微笑みかける少女の後ろで、泣きそうな顔でこちらを見ているのは、可愛い可愛い幼馴染。 ある日二人だけの秘密の場所で彼女に告げられたのは……。 連載の気分転換に執筆しているので鈍いです。おおらかな気分で読んでくれると嬉しいです。 感想もご自由にどうぞ。 ただし、作者は木綿豆腐メンタルです。

冷徹社長は幼馴染の私にだけ甘い

森本イチカ
恋愛
妹じゃなくて、女として見て欲しい。 14歳年下の凛子は幼馴染の優にずっと片想いしていた。 やっと社会人になり、社長である優と少しでも近づけたと思っていた矢先、優がお見合いをしている事を知る凛子。 女としてみて欲しくて迫るが拒まれてーー ★短編ですが長編に変更可能です。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛

ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。 そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う これが桂木廉也との出会いである。 廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。 みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。 以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。 二人の恋の行方は……

つかまえた 〜ヤンデレからは逃げられない〜

りん
恋愛
狩谷和兎には、三年前に別れた恋人がいる。

処理中です...