22 / 31
日引邸
しおりを挟む
「佐一郎の父親は何に気がついたんですか?」
水島は、テーブル越しに話す日引に攻めよった。
「子供が違う事に気がついたんだよ」
「え!子供が違う?でもそれは当然でしょう。梅二が産まれたばかりのおいちの赤子とゆきの赤子を取り替えましたよね。それに気がついたって事ですか?」
「いいや違う。子供はもう一度すり替えられていたのさ」
「もう一度・・・それはいつですか?いつの時点ですり替えられたんです?」
「ゆきが白無垢の女と対峙している時だよ。その時にすり替えられたんだ」
「誰が・・・梅二・・梅二ですか?」
「そう。梅二は本当に頭のいい子だったんだね。梅二は、大切な姉の命を奪った佐一郎とゆきに復讐を決めた。その復讐方法は色々と考えたんだろうけど、しっかりとおいちの意思を継いでるんだよ」
日引はゆっくりとお茶を飲む。
「交換・・おいちは「交換してね」と死ぬ間際に言ってますね」
「そう。「交換」梅二は二度子供を交換することで倍の復讐を果たしたことになる」
「・・でもちょっと待ってください。梅二の家にいたゆきの子供は、梅二の母親が面倒見ていたと言いましたね。どのタイミングで梅二は自分の家から子供を連れ出したんでしょうか。確か歳は一歳と言いましたね。一歳と言えば産まれたばかりの赤ん坊よりも大きい。そんな子を連れ出そうとすれば必ず家族に見つかるはず」
「父親だよ。梅二が家を出た後秘密の場所に行っているね。その後、父親が荷物を渡している。その荷物こそ、父親が家から連れてきたゆきの子供なのさ」
「・・生もの・・人間・・でも・・でも日引さん。子供がずっと大人しくしてますか?武井家の方へ行き、復讐の準備をしている間に騒ぎ出すと思うんですけど」
「騒ぐはずないさね。もうとっくに死んでるんだから」
「えっ‼死んでる?どうして?」
「・・・・父親としては辛かったろうね。自分の娘を侮辱し妊娠まで・・自ら命を断ったとは言えそのきっかけを作った男の子供を自分の女房がかいがいしく世話を焼くのを見る毎日。私にゃ想像つかないよ」
この日引の言葉だけで十分な答えだった。
「・・・・・そうですか」
結婚をしていない水島。勿論子供はいない。しかし、そんな水島でも父親の気持ちを考えることは出来る。憎かったろうし苦しかったと思う。しかしどんな相手だとしても殺してはいけない。これはどの時代でも共通して言える事だろう。
考え込んでしまった水島を見て、日引は
「ヒヒヒ。みずっち。法の下に人は裁かれる。しかし人間も鬼じゃない。ちゃんと情状酌量と言うものがあるさね。知ってるかい?かつて日本で、殺人犯を村人達が守った話」
「村人が?」
「ああ。その殺人犯は働き者で優しい男だったそうだ。年寄りや子供、生活が大変な人たちに対してとても優しかったそうだ。しかし、そんな男が人を殺してしまうんだ。痴情のもつれとでも言おうかねぇ。逃げたその男を村人達はかくまったそうだよ。かくまった村人達はかつて、この男に世話になった人達だったそうだ」
日引はお茶を一口飲むと
「みずっち。人を表面だけで判断しちゃいけないよ。その人が世間から悪く言われていたとしても、裏には必ず事情がある。最初から鬼で産まれてくる者なんていないんだから。その事情をくんだうえで自分で判断しなくてはいけない」
「はい」
水島は、夕焼け色に染まり始めている庭の方を見た。
「日引さん。これで梅二の復讐は終わったんですか?復讐を果たせた日だからおいちの日なんですか?」
水島の問いに、日引はゆっくりと首を振る。
「いいや違う。もう夕方だ。答えを教えてあげようかね。今日がなぜ、おいちの日と呼ぶようになったのか」
水島はゴクリと生唾を飲んだ。
「今日は、富木村。武井村。狭山村の三つの村が滅んだ日なのさ」
「滅んだ・・・三つ全てですか?」
「そう。一晩にして三つの村が滅んだのさ」
水島は驚きの余り目を丸くして口をあんぐりと開けたままになっている。
「ちょ、ちょっと待ってください。そんな・・三つの村が同時に・・それも一晩で滅ぶなんてことがあり得るんですか?」
「知りたいかい?」
「はい」
「みずっち。会社の方はいいのかい?」
「大丈夫です。逆に話を最後まで聞かなくちゃ、仕事にならないですよ」
「そうかい。じゃあ教えてあげようかね」
水島は、日引の湯飲みに新しいお茶を入れると話し出すのを待った。
「あの夜はね・・・」
水島は、テーブル越しに話す日引に攻めよった。
「子供が違う事に気がついたんだよ」
「え!子供が違う?でもそれは当然でしょう。梅二が産まれたばかりのおいちの赤子とゆきの赤子を取り替えましたよね。それに気がついたって事ですか?」
「いいや違う。子供はもう一度すり替えられていたのさ」
「もう一度・・・それはいつですか?いつの時点ですり替えられたんです?」
「ゆきが白無垢の女と対峙している時だよ。その時にすり替えられたんだ」
「誰が・・・梅二・・梅二ですか?」
「そう。梅二は本当に頭のいい子だったんだね。梅二は、大切な姉の命を奪った佐一郎とゆきに復讐を決めた。その復讐方法は色々と考えたんだろうけど、しっかりとおいちの意思を継いでるんだよ」
日引はゆっくりとお茶を飲む。
「交換・・おいちは「交換してね」と死ぬ間際に言ってますね」
「そう。「交換」梅二は二度子供を交換することで倍の復讐を果たしたことになる」
「・・でもちょっと待ってください。梅二の家にいたゆきの子供は、梅二の母親が面倒見ていたと言いましたね。どのタイミングで梅二は自分の家から子供を連れ出したんでしょうか。確か歳は一歳と言いましたね。一歳と言えば産まれたばかりの赤ん坊よりも大きい。そんな子を連れ出そうとすれば必ず家族に見つかるはず」
「父親だよ。梅二が家を出た後秘密の場所に行っているね。その後、父親が荷物を渡している。その荷物こそ、父親が家から連れてきたゆきの子供なのさ」
「・・生もの・・人間・・でも・・でも日引さん。子供がずっと大人しくしてますか?武井家の方へ行き、復讐の準備をしている間に騒ぎ出すと思うんですけど」
「騒ぐはずないさね。もうとっくに死んでるんだから」
「えっ‼死んでる?どうして?」
「・・・・父親としては辛かったろうね。自分の娘を侮辱し妊娠まで・・自ら命を断ったとは言えそのきっかけを作った男の子供を自分の女房がかいがいしく世話を焼くのを見る毎日。私にゃ想像つかないよ」
この日引の言葉だけで十分な答えだった。
「・・・・・そうですか」
結婚をしていない水島。勿論子供はいない。しかし、そんな水島でも父親の気持ちを考えることは出来る。憎かったろうし苦しかったと思う。しかしどんな相手だとしても殺してはいけない。これはどの時代でも共通して言える事だろう。
考え込んでしまった水島を見て、日引は
「ヒヒヒ。みずっち。法の下に人は裁かれる。しかし人間も鬼じゃない。ちゃんと情状酌量と言うものがあるさね。知ってるかい?かつて日本で、殺人犯を村人達が守った話」
「村人が?」
「ああ。その殺人犯は働き者で優しい男だったそうだ。年寄りや子供、生活が大変な人たちに対してとても優しかったそうだ。しかし、そんな男が人を殺してしまうんだ。痴情のもつれとでも言おうかねぇ。逃げたその男を村人達はかくまったそうだよ。かくまった村人達はかつて、この男に世話になった人達だったそうだ」
日引はお茶を一口飲むと
「みずっち。人を表面だけで判断しちゃいけないよ。その人が世間から悪く言われていたとしても、裏には必ず事情がある。最初から鬼で産まれてくる者なんていないんだから。その事情をくんだうえで自分で判断しなくてはいけない」
「はい」
水島は、夕焼け色に染まり始めている庭の方を見た。
「日引さん。これで梅二の復讐は終わったんですか?復讐を果たせた日だからおいちの日なんですか?」
水島の問いに、日引はゆっくりと首を振る。
「いいや違う。もう夕方だ。答えを教えてあげようかね。今日がなぜ、おいちの日と呼ぶようになったのか」
水島はゴクリと生唾を飲んだ。
「今日は、富木村。武井村。狭山村の三つの村が滅んだ日なのさ」
「滅んだ・・・三つ全てですか?」
「そう。一晩にして三つの村が滅んだのさ」
水島は驚きの余り目を丸くして口をあんぐりと開けたままになっている。
「ちょ、ちょっと待ってください。そんな・・三つの村が同時に・・それも一晩で滅ぶなんてことがあり得るんですか?」
「知りたいかい?」
「はい」
「みずっち。会社の方はいいのかい?」
「大丈夫です。逆に話を最後まで聞かなくちゃ、仕事にならないですよ」
「そうかい。じゃあ教えてあげようかね」
水島は、日引の湯飲みに新しいお茶を入れると話し出すのを待った。
「あの夜はね・・・」
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる