24 / 31
滅
しおりを挟む
山岸家がある武井村は十五世帯ほどある。
佐一郎は、その十五世帯の家全てを周り寝ていた家人達を次々と懐刀で刺していった。寝込みを襲われた村人達は、抵抗することなく全員が佐一郎により殺されてしまった。
次に、武井村を全滅状態にした佐一郎は疲れを見せず風のように山を抜けると、自分の生家がある狭山村へと向かった。
この狭山村は五世帯しかない。ここの村人達も、自分を育ててくれた親も例外なく全て佐一郎の手で殺されてしまった。
次に向かったのが富木村。
ここは七世帯ほどの村。
二つの村を壊滅状態へと葬ってきた佐一郎は、今や自分が天下を取ったような気分だった。
そんな常軌を逸した佐一郎はこの時すでに狂っていたのかもしれない。
次々と、家に入り手にした一本の懐剣で村人を刺し殺していく。夜も遅く皆寝込みを襲われたせいか。佐一郎が入った家からは悲鳴一つ聞こえてこない。
そしてついに、おいちの家の前に来た。
肩で息をしながら家に近づき、勢いよく戸を開ける。
「うぉ~!」
と獣のような叫び声をあげながら家の者を探すが、不思議な事にこの家はもぬけの殻だった。
「ちっ」
と舌打ちをした佐一郎は、家から飛び出るとそのまま武井村の山岸家へと走り戻って行った。
その様子を暗闇の中から見ていたのは、おいちの家族だった。
その日いつものように過ごしていた家族が、夜も更け皆が床について暫くしてからだった。突然あめが
「大変!みんな起きて!」
と騒ぎ出したのだ。
驚いた家族は、何事かとあめに聞くが
「この家から出て!早く」
と騒ぐだけのあめ。仕方なく家族はあめの言う通りに家から出ると、農作業で使っている筵を被り庭の棲みに隠れたのだ。
訳も分からず筵の下に隠れた家族は、あめに
「あめ。いったいどうしたの言うの?」
「本当だよ。突然家にいちゃ駄目なんて何かが来るのかい?」
母親と利一が小声であめに聞く。父親は、白い布に包まれた何かを持ちながら黙っている。恐らく、子供と見立てた物を持っていたのだろう。おいちの子供を梅二に渡した後、母親には「これまで面倒みてこなかったから自分がみる」と苦し紛れの説明をして誤魔化してきた。いずれは本当の事を言わなくてはいけないのだが、甲斐甲斐しく世話をしている母親にすぐは言えなかったのだ。
「大変な事になる」
あめはそう言うだけで具体的な事は言わず後は黙っていた。
その時だ。暗闇の中誰かが自分の家の方に走ってくる足音が聞こえてきた。隠れている家族は息をひそめ、その何者かの動きを筵の下からジッと見ていた。
僅かな月明かりで見えたその男は、躊躇なく家の戸を開け中に入り物凄い叫び声をあげている。
「何だ?今の奴」
利一の声が震えている。
「シッ!喋るな」
父親が緊張した声で利一をたしなめる。もう、夏も終わりを迎えようとしていたが筵を頭まで被った状態は流石に暑い。家族は、何が起きているのか分からない状況での冷や汗と、筵の暑さから流れ出る汗を拭くこともなくじっと耐えていた。
その後、家の中に入った男は外に飛び出して来るとどこかへ行ってしまった。
家族は暫く様子を見ていたが
「ふぅ~」
という利一のため息が合図となり筵から這い出た。
「今のは誰だ?何でうちに来たんだろう?」
「分からないわ。でもあの人の姿・・真っ黒だったわよね」
利一と母親は喋り出す。
「・・・あめ。何でお前はアイツが来ることが分かったんだ?」
父親はあめに聞いた。
あめは、男が行ってしまった方を見ながら
「匂いがしたの。血の匂いが」
「血の匂い?」
家族はさっぱりわからなかったが、あめのお陰で佐一郎の難から逃れた結果となった。
佐一郎は、その十五世帯の家全てを周り寝ていた家人達を次々と懐刀で刺していった。寝込みを襲われた村人達は、抵抗することなく全員が佐一郎により殺されてしまった。
次に、武井村を全滅状態にした佐一郎は疲れを見せず風のように山を抜けると、自分の生家がある狭山村へと向かった。
この狭山村は五世帯しかない。ここの村人達も、自分を育ててくれた親も例外なく全て佐一郎の手で殺されてしまった。
次に向かったのが富木村。
ここは七世帯ほどの村。
二つの村を壊滅状態へと葬ってきた佐一郎は、今や自分が天下を取ったような気分だった。
そんな常軌を逸した佐一郎はこの時すでに狂っていたのかもしれない。
次々と、家に入り手にした一本の懐剣で村人を刺し殺していく。夜も遅く皆寝込みを襲われたせいか。佐一郎が入った家からは悲鳴一つ聞こえてこない。
そしてついに、おいちの家の前に来た。
肩で息をしながら家に近づき、勢いよく戸を開ける。
「うぉ~!」
と獣のような叫び声をあげながら家の者を探すが、不思議な事にこの家はもぬけの殻だった。
「ちっ」
と舌打ちをした佐一郎は、家から飛び出るとそのまま武井村の山岸家へと走り戻って行った。
その様子を暗闇の中から見ていたのは、おいちの家族だった。
その日いつものように過ごしていた家族が、夜も更け皆が床について暫くしてからだった。突然あめが
「大変!みんな起きて!」
と騒ぎ出したのだ。
驚いた家族は、何事かとあめに聞くが
「この家から出て!早く」
と騒ぐだけのあめ。仕方なく家族はあめの言う通りに家から出ると、農作業で使っている筵を被り庭の棲みに隠れたのだ。
訳も分からず筵の下に隠れた家族は、あめに
「あめ。いったいどうしたの言うの?」
「本当だよ。突然家にいちゃ駄目なんて何かが来るのかい?」
母親と利一が小声であめに聞く。父親は、白い布に包まれた何かを持ちながら黙っている。恐らく、子供と見立てた物を持っていたのだろう。おいちの子供を梅二に渡した後、母親には「これまで面倒みてこなかったから自分がみる」と苦し紛れの説明をして誤魔化してきた。いずれは本当の事を言わなくてはいけないのだが、甲斐甲斐しく世話をしている母親にすぐは言えなかったのだ。
「大変な事になる」
あめはそう言うだけで具体的な事は言わず後は黙っていた。
その時だ。暗闇の中誰かが自分の家の方に走ってくる足音が聞こえてきた。隠れている家族は息をひそめ、その何者かの動きを筵の下からジッと見ていた。
僅かな月明かりで見えたその男は、躊躇なく家の戸を開け中に入り物凄い叫び声をあげている。
「何だ?今の奴」
利一の声が震えている。
「シッ!喋るな」
父親が緊張した声で利一をたしなめる。もう、夏も終わりを迎えようとしていたが筵を頭まで被った状態は流石に暑い。家族は、何が起きているのか分からない状況での冷や汗と、筵の暑さから流れ出る汗を拭くこともなくじっと耐えていた。
その後、家の中に入った男は外に飛び出して来るとどこかへ行ってしまった。
家族は暫く様子を見ていたが
「ふぅ~」
という利一のため息が合図となり筵から這い出た。
「今のは誰だ?何でうちに来たんだろう?」
「分からないわ。でもあの人の姿・・真っ黒だったわよね」
利一と母親は喋り出す。
「・・・あめ。何でお前はアイツが来ることが分かったんだ?」
父親はあめに聞いた。
あめは、男が行ってしまった方を見ながら
「匂いがしたの。血の匂いが」
「血の匂い?」
家族はさっぱりわからなかったが、あめのお陰で佐一郎の難から逃れた結果となった。
0
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる