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合流
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「ね、そう言えば、さっき「わぁ」って声がしたよね」
「うん。男の声に聞こえたんだけど、ユウじゃないような気がする」
「じゃあ・・誰の声?」
「分からない」
私達は、しんちゃんに見つからないように懐中電灯を消して歩き始めた。今日は満月だ。自分達の歩く道以外も、比較的明るく照らしてくれている。
私達が肝試しで予定していた道は、村の中でも広い道である。その道から枝分かれするように細い道が繋がり民家へと続く。もう誰も住まなくなった家。
しんちゃんが息を殺しながら私達を見ているのではないかという薄気味悪さを感じながら、進まない重い足を何とか前に運んでいく。
「あ、あれ見ろ!」
司が指を指しながら小声で私に言う。
見ると、一台の車がこちらに車体の横を見せるような形で停まっているのが分かるが、人が乗っているかどうかは、ここからじゃ遠くて分からない。
「何で車が?人・・・乗ってる?」
「ここからじゃ分からないな。もうちょっと近くに行こう」
司が私の手を取り進む。
(あの車誰の車だろう。この村にはもう誰も住んでないと思ってたけど、もしかしたら誰かいるのかしら。でも・・・いたとしたら、あんな道に停めないで自分の庭にでも停めるはず・・・)
その時だ。
私達が歩いている右側にある山の方から、誰かの叫び声が聞こえた。
「今の聞いた⁉わぁ~とか聞こえた」
「ああ・・・あっちからだな」
司も、声がした方と同じ方向を向いたので間違いない。私が聞いた同じ声を聞いている。
「まさか・・・由美子達じゃ・・・・」
「・・・・・・」
叫び声が聞こえた方向には山があるのだが、その山の前に民家がある。こういう過疎化した村は隣家に行くのでも結構歩くのだが、その家は祖母の家の隣の家にあたる。祖母が亡くなった時にはもう空き家になっていたので誰も住んでいない。もしかしたらさっきの声は、その民家から聞こえたのかも・・・
「行って見よう」
「え?行くって・・・あそこに?」
司は黙ってうなずく。
気でも触れたのかと思った。由美子達がいるかわからないのに、そんな妖しい所にわざわざ行く意味が分からない。
「え?だって、ユウ君達か分からないじゃない?行く必要ないじゃん!きっと別の所に隠れてるんだよ。電話してみようよ」
私はすがるように懇願すると、震える手で携帯を取り出しかけようとした。
「待て!ちょっと待て。分かってる。でも・・・確認したほうがいい」
「確認って・・・・電話してみればいいじゃん!」
「だから‼電話は無理なんだ。もしあの声の主がユウ達じゃないとしても、電話の音であの黒い奴にばれる。逆にあの叫び声がユウ達だとしたら、アイツに襲われてるって事になる。ほっとけない」
私は頭の中で、何とか司の言っている事を理解しようとするのだがやはりおかしい。
大きく深呼吸をし、司の前に立ち顔を真っ直ぐに見ながら言った。
「分かった。確かに電話しても無理ね。今、この現実離れした状況の中私達は神経が過敏になっている。落ち着いて行動しよう」
私は自分にも言い聞かせるように司に言った。司は黙って私の話を聞いている。
その間も、空き家の方から途切れ途切れに声が聞こえている。
「由美子達は他の場所にいる。探そう」
今度は、私が司の手を取り道を進んで行く。
進みながら、私は凄くホッとしていた。行かなくて良くなったからだ。もしかしたら私も、訳の分からない事を言っているのかもしれないが、構うものか。
震える足に力を入れながら、肝試しで予定していた道を歩いて行き、ようやく、停まっている車の近くまで来た。二人で運転席側から車の中を覗き込む。月明かりが差し込む車内には特に目に留まる物がない・・・・な・・・い・・・?
突然、司が後部座席の窓に両手を付けもっと中を見ようとする。私も急いで中を見る。
「あっ‼ちょ!ちょっと!」
興奮した私も司の隣で窓に手をはりつけ中を見る。
そこには、後部座席の足元辺りで、自分の体を何とか小さくして必死に隠れている由美子とユウがお互いの頭を向き合うようにうずくまっていた。
「おい!ユウ!」
司はドアノブをガチャガチャさせるが、鍵がかかっているらしく開かない。
「由美子!私よ!由美子!開けて!」
その声が届いたのか、助手席側の後ろでうずくまっていた人が顔をあげた。
やはり由美子だった。大きな目をより大きくして私を見る。私だと分かってくれたのか、次第に溶けるように固かった表情が崩れ、泣き顔に変わる。それに気が付いた、運転席の後ろでうずくまる人も顔を上げ私達を見る。ユウだ。月明かりのせいなのかわからないが、顔色が真っ白である。窓の外から見ても、唇が震えているのが分かった。
「早く開けろ!」
あの黒い奴に見つからないように、司は静かに怒鳴りながら言う。少し表情がついて来たユウは、何度も頷き車のロックを外そうとするが震えて上手くいかないのだろう。もどかしいくらいの時間をかけてようやく鍵が開く。司は鍵の開いたドアを勢いよく開けると
「大丈夫か!怪我は!」
車から這い出た二人は、まるで無酸素の場所から脱出したかのように大きく口を開け荒い呼吸をする。見る限り、大きな怪我はないようだ。
私は由美子を強く抱きしめ
「良かった。会えて良かった」
「・・・・」
由美子は、何も言わなかったが大粒の涙を流しながら私に強く抱きついてくる。司も、ユウの背中を何度もさすりながら声を掛けていた。
しかし、いつまでもここでこうしてるわけにもいかない。
「由美子歩ける?」
「・・・うん」
泣きじゃくり、化粧の取れた由美子は多少でも落ち着きを取り戻したのか、ようやく話してくれた。
「司、行こう」
司の前でへたり込んでいるユウも落ち着いて来たのか、先程と顔つきが違う。
「マジ死ぬかと思った・・・あそこだよ。あそこのカーブを曲がった瞬間いきなり俺の前に黒い奴が来てさ。・・・・もうその後は、由美子と逃げる事しか頭になかったから・・・丁度、あの車があって鍵がついてれば逃げられると思ったけどなくて・・・必死で隠れて・・・余りの事で、ハッキリ覚えてねぇ」
ユウは、私達と歩きながらその時の出来事をポツリポツリと話し始める。
「そう・・・・あれヤバいよ・・・・真っ黒なの・・・ユウの前に来た時、私聞いたんだ」
「何を?」
私は、由美子を支えるように歩きながら聞いた。
「笑ったの・・・・ぐぐぐぐって」
「ぐぐぐ?」
笑うという表現にしてはおかしい。
「何それ。ぐぐぐぐって笑ったの?」
「・・・・そう。何か・・・うまく言えないけど、くぐもったようなって言うか・・・空から聞こえたって言うか・・・」
「・・・そうなんだ」
私はそれ以上は聞かないことにした。今の精神状態じゃ、まともに考えられないのだろうと思ったからだ。それに・・・もし仮にそれが本当だとしたら、怖すぎる。
私と司は、元来た道は引き返さずに進むことにした。ユウ達には言わなかったが、あの叫び声が聞こえた方になんか戻りたくなかったからだ。
「ふ~~。マジ、これからどうするんだ?」
ユウは、大分落ち着いてきたらしく大きなため息を吐きながら言った。司は、私が母親から聞いた話を由美子にも聞こえるように話す。
「冗談じゃないわ!絶対この村から出る!今すぐに!」
無理もない、例えあの黒い奴から逃げられたと言っても恐ろしい目にあったのだ。由美子が真っ先にそう言うのは仕方ないだろう。
私は何も言わず黙っていた。
「出来ればそうしたいな。泊る所が他になければこのまま帰ってもいいんじゃないか?」
司も由美子の意見に賛成した。
周りから虫の声がする。
今まで、虫の声なんか私には聞こえなかった。それ程まともじゃなかったんだろう。月明かりの中、四人の足音と息遣い、虫の声が重なり雑音に似た音楽を聴いているような感覚に陥る。ずっと聞いていると次第に四人以外の足音も聞こえるような気もしてくる。
私は何度も後ろを振り返りながら歩き、ようやく祖母の家に着いた。
みんなも私と同じだったらしく、玄関を開けるとなだれ込むようにして家の中に入る。
「はぁ~」
「良かったぁ~」
「マジきつい」
思い思いの事を吐きつつ、玄関の上がり框に倒れこんだ。
「早くここからでなくちゃ」
ユウは、居間に入ると自分の荷物をまとめ始める。それを見た由美子も転がるように部屋へ入り、その辺りに散らばった自分の持ち物を乱暴に鞄に入れ始めた。
「俺達も」
「うん」
手早く自分達の荷物を玄関に集め、私が最後に部屋を出て電気を消した。
「え?真っ暗じゃない!怖いから玄関だけでもつけてよ!」
玄関のたたきで私達を待つ由美子が悲鳴に近い声をあげるので、私は玄関の電気だけつけた。
「行こう!」
由美子が玄関を開けた時だった。
「うん。男の声に聞こえたんだけど、ユウじゃないような気がする」
「じゃあ・・誰の声?」
「分からない」
私達は、しんちゃんに見つからないように懐中電灯を消して歩き始めた。今日は満月だ。自分達の歩く道以外も、比較的明るく照らしてくれている。
私達が肝試しで予定していた道は、村の中でも広い道である。その道から枝分かれするように細い道が繋がり民家へと続く。もう誰も住まなくなった家。
しんちゃんが息を殺しながら私達を見ているのではないかという薄気味悪さを感じながら、進まない重い足を何とか前に運んでいく。
「あ、あれ見ろ!」
司が指を指しながら小声で私に言う。
見ると、一台の車がこちらに車体の横を見せるような形で停まっているのが分かるが、人が乗っているかどうかは、ここからじゃ遠くて分からない。
「何で車が?人・・・乗ってる?」
「ここからじゃ分からないな。もうちょっと近くに行こう」
司が私の手を取り進む。
(あの車誰の車だろう。この村にはもう誰も住んでないと思ってたけど、もしかしたら誰かいるのかしら。でも・・・いたとしたら、あんな道に停めないで自分の庭にでも停めるはず・・・)
その時だ。
私達が歩いている右側にある山の方から、誰かの叫び声が聞こえた。
「今の聞いた⁉わぁ~とか聞こえた」
「ああ・・・あっちからだな」
司も、声がした方と同じ方向を向いたので間違いない。私が聞いた同じ声を聞いている。
「まさか・・・由美子達じゃ・・・・」
「・・・・・・」
叫び声が聞こえた方向には山があるのだが、その山の前に民家がある。こういう過疎化した村は隣家に行くのでも結構歩くのだが、その家は祖母の家の隣の家にあたる。祖母が亡くなった時にはもう空き家になっていたので誰も住んでいない。もしかしたらさっきの声は、その民家から聞こえたのかも・・・
「行って見よう」
「え?行くって・・・あそこに?」
司は黙ってうなずく。
気でも触れたのかと思った。由美子達がいるかわからないのに、そんな妖しい所にわざわざ行く意味が分からない。
「え?だって、ユウ君達か分からないじゃない?行く必要ないじゃん!きっと別の所に隠れてるんだよ。電話してみようよ」
私はすがるように懇願すると、震える手で携帯を取り出しかけようとした。
「待て!ちょっと待て。分かってる。でも・・・確認したほうがいい」
「確認って・・・・電話してみればいいじゃん!」
「だから‼電話は無理なんだ。もしあの声の主がユウ達じゃないとしても、電話の音であの黒い奴にばれる。逆にあの叫び声がユウ達だとしたら、アイツに襲われてるって事になる。ほっとけない」
私は頭の中で、何とか司の言っている事を理解しようとするのだがやはりおかしい。
大きく深呼吸をし、司の前に立ち顔を真っ直ぐに見ながら言った。
「分かった。確かに電話しても無理ね。今、この現実離れした状況の中私達は神経が過敏になっている。落ち着いて行動しよう」
私は自分にも言い聞かせるように司に言った。司は黙って私の話を聞いている。
その間も、空き家の方から途切れ途切れに声が聞こえている。
「由美子達は他の場所にいる。探そう」
今度は、私が司の手を取り道を進んで行く。
進みながら、私は凄くホッとしていた。行かなくて良くなったからだ。もしかしたら私も、訳の分からない事を言っているのかもしれないが、構うものか。
震える足に力を入れながら、肝試しで予定していた道を歩いて行き、ようやく、停まっている車の近くまで来た。二人で運転席側から車の中を覗き込む。月明かりが差し込む車内には特に目に留まる物がない・・・・な・・・い・・・?
突然、司が後部座席の窓に両手を付けもっと中を見ようとする。私も急いで中を見る。
「あっ‼ちょ!ちょっと!」
興奮した私も司の隣で窓に手をはりつけ中を見る。
そこには、後部座席の足元辺りで、自分の体を何とか小さくして必死に隠れている由美子とユウがお互いの頭を向き合うようにうずくまっていた。
「おい!ユウ!」
司はドアノブをガチャガチャさせるが、鍵がかかっているらしく開かない。
「由美子!私よ!由美子!開けて!」
その声が届いたのか、助手席側の後ろでうずくまっていた人が顔をあげた。
やはり由美子だった。大きな目をより大きくして私を見る。私だと分かってくれたのか、次第に溶けるように固かった表情が崩れ、泣き顔に変わる。それに気が付いた、運転席の後ろでうずくまる人も顔を上げ私達を見る。ユウだ。月明かりのせいなのかわからないが、顔色が真っ白である。窓の外から見ても、唇が震えているのが分かった。
「早く開けろ!」
あの黒い奴に見つからないように、司は静かに怒鳴りながら言う。少し表情がついて来たユウは、何度も頷き車のロックを外そうとするが震えて上手くいかないのだろう。もどかしいくらいの時間をかけてようやく鍵が開く。司は鍵の開いたドアを勢いよく開けると
「大丈夫か!怪我は!」
車から這い出た二人は、まるで無酸素の場所から脱出したかのように大きく口を開け荒い呼吸をする。見る限り、大きな怪我はないようだ。
私は由美子を強く抱きしめ
「良かった。会えて良かった」
「・・・・」
由美子は、何も言わなかったが大粒の涙を流しながら私に強く抱きついてくる。司も、ユウの背中を何度もさすりながら声を掛けていた。
しかし、いつまでもここでこうしてるわけにもいかない。
「由美子歩ける?」
「・・・うん」
泣きじゃくり、化粧の取れた由美子は多少でも落ち着きを取り戻したのか、ようやく話してくれた。
「司、行こう」
司の前でへたり込んでいるユウも落ち着いて来たのか、先程と顔つきが違う。
「マジ死ぬかと思った・・・あそこだよ。あそこのカーブを曲がった瞬間いきなり俺の前に黒い奴が来てさ。・・・・もうその後は、由美子と逃げる事しか頭になかったから・・・丁度、あの車があって鍵がついてれば逃げられると思ったけどなくて・・・必死で隠れて・・・余りの事で、ハッキリ覚えてねぇ」
ユウは、私達と歩きながらその時の出来事をポツリポツリと話し始める。
「そう・・・・あれヤバいよ・・・・真っ黒なの・・・ユウの前に来た時、私聞いたんだ」
「何を?」
私は、由美子を支えるように歩きながら聞いた。
「笑ったの・・・・ぐぐぐぐって」
「ぐぐぐ?」
笑うという表現にしてはおかしい。
「何それ。ぐぐぐぐって笑ったの?」
「・・・・そう。何か・・・うまく言えないけど、くぐもったようなって言うか・・・空から聞こえたって言うか・・・」
「・・・そうなんだ」
私はそれ以上は聞かないことにした。今の精神状態じゃ、まともに考えられないのだろうと思ったからだ。それに・・・もし仮にそれが本当だとしたら、怖すぎる。
私と司は、元来た道は引き返さずに進むことにした。ユウ達には言わなかったが、あの叫び声が聞こえた方になんか戻りたくなかったからだ。
「ふ~~。マジ、これからどうするんだ?」
ユウは、大分落ち着いてきたらしく大きなため息を吐きながら言った。司は、私が母親から聞いた話を由美子にも聞こえるように話す。
「冗談じゃないわ!絶対この村から出る!今すぐに!」
無理もない、例えあの黒い奴から逃げられたと言っても恐ろしい目にあったのだ。由美子が真っ先にそう言うのは仕方ないだろう。
私は何も言わず黙っていた。
「出来ればそうしたいな。泊る所が他になければこのまま帰ってもいいんじゃないか?」
司も由美子の意見に賛成した。
周りから虫の声がする。
今まで、虫の声なんか私には聞こえなかった。それ程まともじゃなかったんだろう。月明かりの中、四人の足音と息遣い、虫の声が重なり雑音に似た音楽を聴いているような感覚に陥る。ずっと聞いていると次第に四人以外の足音も聞こえるような気もしてくる。
私は何度も後ろを振り返りながら歩き、ようやく祖母の家に着いた。
みんなも私と同じだったらしく、玄関を開けるとなだれ込むようにして家の中に入る。
「はぁ~」
「良かったぁ~」
「マジきつい」
思い思いの事を吐きつつ、玄関の上がり框に倒れこんだ。
「早くここからでなくちゃ」
ユウは、居間に入ると自分の荷物をまとめ始める。それを見た由美子も転がるように部屋へ入り、その辺りに散らばった自分の持ち物を乱暴に鞄に入れ始めた。
「俺達も」
「うん」
手早く自分達の荷物を玄関に集め、私が最後に部屋を出て電気を消した。
「え?真っ暗じゃない!怖いから玄関だけでもつけてよ!」
玄関のたたきで私達を待つ由美子が悲鳴に近い声をあげるので、私は玄関の電気だけつけた。
「行こう!」
由美子が玄関を開けた時だった。
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