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4. 私の人生の続き
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「きゃあ!」
そこでサリーシェが上げる悲鳴に私の意識が戻ります。
「クロ!」
そこでは黒猫のクロがサリーシェに飛び掛かり威嚇しておりました。私は急いでクロを抱き上げサリーシェから距離を取ります。
サリーシェは以前クロを抱き上げようと手を出して思い切り引っ掻かれ傷が残り、それ以来クロが大嫌いなのです。使用人に命じて見つけ次第追い払おうとしていましたが、クロの黒い容姿に縁起の悪さを覚える使用人たちは嫌がって近寄りません。
クロはこの邸で容認されておりませんが、見逃されている存在。そして私の唯一の友達なのです。
フワフワした身体を抱きしめてホッと息を吐いていると、それを見てサリーシェは忌々しげに舌打ちをしてから侍女たちを引き連れ出ていきました。
「ああ! 嫌だわ動物臭い! もう! こんな事をしてても疲れるだけだわ! 戻るわよ!」
バタバタと立ち去る足音に耳を澄ませてから、クロに小さくお礼を言えば、にゃあと返されます。ほっこりと温まる胸にクロを抱え直し、改めて部屋の中を見渡せば、サリーシェやレアンドロ様が荒らしたこの部屋には一つだけ手付かずのものがあります。
それは三日後の夜会に来て行く私のドレス。
レアンドロ様が、サリーシェが着たら似合うだろう物をわざわざ選び、贈って下さったのです。
それを傷つける事は出来ません。
何故なら私は他に夜会用のドレスを持っていませんから。
ドレスが無いから夜会に出られない、では済まないのです。舞台は我がサザー王国の王家主催の夜会であり、そこはルェイン国の王が親族を匿ってくれた我が国へ表敬訪問をする場でもあるのです。
そこに私が出席をしないなどありえません。
そんな事になればリーバ子爵家も事情説明を求められるでしょう。
ドレスが無いから、などと話せばリーバ子爵家だけでなく、婚約者であるレアンドロ様も、何故婚約者にドレスを贈らないのか、と叱責されるでしょうね。
それでも────ルェイン国王はまだ地盤固めの時期。いつ政権が揺らぐか分かりません。
お祖父様が罰を受けたのも、表向きは血脈を偽り、自国の子爵家に他国の高貴な血を勝手に混ぜた事。
ですが、ルェインの現政権が上手く起動に乗るかもしれなあという考えもあり、我が国は恩を売っておきたいのでしょう。
これが吉と出るか凶と出るかはまだ分かりません。今後ルェインが飛躍していくか衰退していくかまだ見極めが難しいこの時期に、私の扱いも同じように難しい。
(皆きっとそう思っているのでしょうね)
ルェイン国とて私の事など自国の整備で忙しい時期に現れた、邪魔な存在なのかもしれません。
けれどそんな事を考えて向かった王城に辿り着ける事もなく、私は殺されてしまったのです。
確かに私の顔なんて国王陛下や他の王都の方々は知らないでしょう。
邸の人間たちも私が王族である事は知りません。
よく言い聞かせれば、使用人たちは迂闊に家に不利益になりそうな事は喋らないでしょうし、元々私の味方などあの家にはいないのです。
そうして私はウォッズ侯爵家の別邸で殺され魂だけの存在となりました。誰にも見える事も触れられる事も無く、私の魂は引き寄せられるようにサリーシェとレアンドロ様の後に続き、王城へと向かいます。
アレンさんは言いました。
『君の死を悼む人が三人いたら』
……そんな人いるのでしょうか。
ですがアレンさんの話を思い出せば、それは私の死後から三日の話。それまで私は恐らくこのままなのでしょう。
それなら見てみようかと思いました。
私が生きていたら歩んでいたであろう人生の続きを────
そこでサリーシェが上げる悲鳴に私の意識が戻ります。
「クロ!」
そこでは黒猫のクロがサリーシェに飛び掛かり威嚇しておりました。私は急いでクロを抱き上げサリーシェから距離を取ります。
サリーシェは以前クロを抱き上げようと手を出して思い切り引っ掻かれ傷が残り、それ以来クロが大嫌いなのです。使用人に命じて見つけ次第追い払おうとしていましたが、クロの黒い容姿に縁起の悪さを覚える使用人たちは嫌がって近寄りません。
クロはこの邸で容認されておりませんが、見逃されている存在。そして私の唯一の友達なのです。
フワフワした身体を抱きしめてホッと息を吐いていると、それを見てサリーシェは忌々しげに舌打ちをしてから侍女たちを引き連れ出ていきました。
「ああ! 嫌だわ動物臭い! もう! こんな事をしてても疲れるだけだわ! 戻るわよ!」
バタバタと立ち去る足音に耳を澄ませてから、クロに小さくお礼を言えば、にゃあと返されます。ほっこりと温まる胸にクロを抱え直し、改めて部屋の中を見渡せば、サリーシェやレアンドロ様が荒らしたこの部屋には一つだけ手付かずのものがあります。
それは三日後の夜会に来て行く私のドレス。
レアンドロ様が、サリーシェが着たら似合うだろう物をわざわざ選び、贈って下さったのです。
それを傷つける事は出来ません。
何故なら私は他に夜会用のドレスを持っていませんから。
ドレスが無いから夜会に出られない、では済まないのです。舞台は我がサザー王国の王家主催の夜会であり、そこはルェイン国の王が親族を匿ってくれた我が国へ表敬訪問をする場でもあるのです。
そこに私が出席をしないなどありえません。
そんな事になればリーバ子爵家も事情説明を求められるでしょう。
ドレスが無いから、などと話せばリーバ子爵家だけでなく、婚約者であるレアンドロ様も、何故婚約者にドレスを贈らないのか、と叱責されるでしょうね。
それでも────ルェイン国王はまだ地盤固めの時期。いつ政権が揺らぐか分かりません。
お祖父様が罰を受けたのも、表向きは血脈を偽り、自国の子爵家に他国の高貴な血を勝手に混ぜた事。
ですが、ルェインの現政権が上手く起動に乗るかもしれなあという考えもあり、我が国は恩を売っておきたいのでしょう。
これが吉と出るか凶と出るかはまだ分かりません。今後ルェインが飛躍していくか衰退していくかまだ見極めが難しいこの時期に、私の扱いも同じように難しい。
(皆きっとそう思っているのでしょうね)
ルェイン国とて私の事など自国の整備で忙しい時期に現れた、邪魔な存在なのかもしれません。
けれどそんな事を考えて向かった王城に辿り着ける事もなく、私は殺されてしまったのです。
確かに私の顔なんて国王陛下や他の王都の方々は知らないでしょう。
邸の人間たちも私が王族である事は知りません。
よく言い聞かせれば、使用人たちは迂闊に家に不利益になりそうな事は喋らないでしょうし、元々私の味方などあの家にはいないのです。
そうして私はウォッズ侯爵家の別邸で殺され魂だけの存在となりました。誰にも見える事も触れられる事も無く、私の魂は引き寄せられるようにサリーシェとレアンドロ様の後に続き、王城へと向かいます。
アレンさんは言いました。
『君の死を悼む人が三人いたら』
……そんな人いるのでしょうか。
ですがアレンさんの話を思い出せば、それは私の死後から三日の話。それまで私は恐らくこのままなのでしょう。
それなら見てみようかと思いました。
私が生きていたら歩んでいたであろう人生の続きを────
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