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しおりを挟む自分は回帰してきたのだとセシリアに言われ、当然鵜呑みには出来なかったが、一笑に伏す事が出来なかったのもまた事実だった。
それはある伝承……昔話に基づく。
隣国フォート王国の神樹の葉は過去への回帰を導き。
ここ、アドル国の聖樹の枝は未来を視せる。
二国の民は皆、子供の頃そんなお伽噺を聞き育ってきたからだ。
更にセシリアは公女、隣国の王家の血を継いでいる。そして、
『ほら! これを見て! 青と緑でしょ!?』
『……そうですね』
セシリアが両手で掲げる瓶の中には、青と緑が半々の不思議な葉が一枚、水に浸ってた。聖水だと本人は言っていたが。
この葉が全て青に染まれば、回帰したセシリアの意識は現実に引き戻され、元の時間の彼女へと戻るのだそうだ。
確かに眉唾だと言い切るには見た事も無いような色彩で。今この時もじわじわと緑から青へと色を変えていくのが見てとれた。
「これ、思っていたより変色が早いの……私がここにいられるの、あと一ヵ月くらいしかないと思う……」
「セシリア様……」
じっと瓶の中の葉を見た後、セシリアは明るく笑ってみせた。
「いいの! 本当は時間を掛けてフィリップ様と仲良くなるつもりで来たんだけど、思ったより短かそうだし……それに……フィリップ様のあんな顔を見せられたら……」
ふっと寂しげに揺れる八歳児の瞳に胸が詰まる。
「──だから、フィリップ様はあなたに譲るわ! でも折角ここに来たのに何もせず帰るなんて……! フィリップ様は私のは、初恋だから……助けたい……」
ミランダは咄嗟にセシリアの身体を抱きしめた。
「セシリア様……あなたには感謝しかありません」
「……何よ、まだ何もしてないじゃない」
「いいえ、私たちを助けて下さった。大事な情報を下さった」
「じ、自分の為だもん」
「それでも、……ありがとうございます」
うるっと目に涙を溢れさせ、セシリアはミランダをぎゅっと抱き返した。
「私がこれから行う事。上手くいくように、祈っていてよね」
「いえ、セシリア様一人にお任せする訳にはいきません。私も──」
「セシリア嬢、詳しく話を聞かせてほしい。ミランダ、君は関わらないようにしておいて」
「フィリップどうして? 私も手伝うわ」
セシリアからミランダを引き離しつつ、フィリップは駄目だと首を横に振った。
「……知ってはいけない事に首を突っ込もうとしている。こんなものはお伽噺の中のままでいいんだ。過去や未来への干渉なんて、よからぬ事を考える者はいつでもいるからね。……でも僕ならガルシア家の名前に守られてギリギリ許されるかもしれない。だけどこれ以上は万が一を考えて、君は関わらないで欲しい」
「でも……」
「待ってて欲しいんだ……今度は絶対に会いに行くから……」
ミランダは、はっと顔を上げた。
……セシリアが語った過去を、自分たちはまだ経験してはいないけれど。
でもこれがもし、自分と彼のやり直しなら……
「分かりました……今度こそ、一緒になりましょう」
フィリップの手を取り、ミランダはこっくりと頷いた。
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