快晴歓声

古河のぎく

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第一章

12.最初に光が、

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「ここははみ出し者、お尋ね者の村さ。」

 ゲラゲラと笑うツァイホンにカンは頭を抱えていた。誰が作ったのか分からない酒を飲み、ラヨチと肩を組む光景は本当に現実なのか理解できなかった。

「黄色!黄色!これが俺の青だ!カンだ!美しいだろう!」

 ツァイホンの胸ぐらを掴み、そう語るラヨチにカンは焦る。

「ラヨチだめだやめろ!その方を誰だと思っている!?」
「はは、気にするな。ここにいる間はただの一般人なんだ。」
「し、しかし!」
「はは、それにしても驚いた。あの洞窟に入った君が生き残って彼に気にいられるとは。」
「ラヨチ!俺はラヨチだよ!」
「ラヨチ。いい名前だ。君に合った名前だね。」

 名前を自慢したがるラヨチにカンは恥ずかしいのうな頭が痛くなるようなそんな疲れた感じて心臓を押さえる。どう足掻いても不敬罪。良くて牢獄、悪くて死刑。イマジナリーニゲラが「まあ本人がいいって言ってるから大丈夫だ!」なんて豪快に笑っている。
 なんとなくつけた名前の意味をラヨチに説明しているツァイホンはご自慢の知識を話し続けたいという研究者独特の欲求を満たしていた。ラヨチはその文章の羅列をコツコツ頷き、聞いている。このままこの店を出ても気付かれないのでは?なんて思ってしまうカンに気づかないラヨチはカンの瞳を指さし、ツァイホンに語りかける。

「見ろこの美しい青を!」
「ああ、美しいね。こんなに深い青は見慣れない。光に当たると空のように澄んでいて、影に入ると深海のように艶やかだ。」
「黄色ももちろん美しい。しかし青とは比べ物にならないよ。こんなにも美しい色は見たことがない。」

 ラヨチはとろけるような瞳でカンを見つめる。その視線に耐えられなかったカンは逃げるように顔を俯かせる。青い瞳が見れなくなったラヨチは不機嫌そうにカンの髪の毛を掴み、無理矢理顔を上げさせた。ぶちぶち、と毛が抜ける音を聞きながら、痛みに顔を顰める。そんな姿にツァイホンはラヨチの手首を掴む。

「だめだよ、痛いことはしてはいけない。」
「これは痛くないことだ。」
「君が痛くないとしても、彼にとっては痛いことだよ。」

 ツァイホンの言葉にラヨチはゆっくりと手を離す。パラパラと落ちていく何本かの青色の毛。料理を乗せる机に不衛生なもの。カンはそれを手で払い、床に落とす。ラヨチは手に残ったカンの髪の毛を食べようとするが、それをツァイホンは止め、なぜか大切そうにしまった。
 コホン、とわざとらしい咳をして、ツァイホンは語り始めた。それははっきり言うとわざとらしく、濁して言うと役者じみていた。

「まずはこの村について、話そうかな。」
「名無しの村は魔物を食う村だ!」
「ラヨチ…。」

 いいところを取られたツァイホンはガクッ、と力が抜けた。
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