3 / 8
一章 一節 「行方不明」
1-1-3「モノクロの虹」
しおりを挟む「誰か、いませんか」
――誰もいないほうがいいのだが。
引き抜いた栓を右手に、武器のように構えて扉の位置から部屋を見渡す。
突然の訪問者に驚いたように、正確には空気を揺らす扉に驚いたのだろう空気中に塵が舞っていた。
線状の黒色痕は部屋の内部、ちょうど中心まで続いているようだ。
その部屋は物が少ない。
しかし、どの部屋よりも物の扱いが雑。
扉の近くに栓を立てかけると、ゆっくりと物色し始めた。
脚の折れた椅子が辺りに散乱している。
テーブルらしきそれも重量のあるものに外傷を加えられたように木のくずに変わっていた。
床には先ほどの模造品と同じような物質が転がっている。
異様だ。
真実を過去を知ろうとすればするほど、ここには何かがいることに考えが辿り着いてしまう。
黒色痕をたどった先にあったのは、小さな床扉。
床に備え付けられたもので、普段は備蓄品を保管していたり下層へ降りるために作られる。
要するに、この状況ではすごく怖いもの、となる。
それの何かが「ここを開けろ」と指示をする。
導かれるように床扉の縁に触れる。指を見ると、模造品と同様そこまで埃が溜まっていない。
隠れた取っ手を引っ張り出すと、意を決して床扉を開けた。
その下は広い空間になっていた。
模造品と同じ物質が数えきれないほど積みあがっている。
手足、胴体、頭部。
それらが、ここに捨てられている。
どれも切断面が綺麗で、詳しく見れないがそれがかなり高い技術を要することに気づいてしまう。
しかし彼らはどういう訳か、そこがゴミ捨て場のように思えるほど雑な捨てられ方をしているのだ。
上からのぞくだけでは底がどれほど深いのかは分からないが、横幅や縦幅はそこそこの大きさがある。
手がかり欲しさにより注意深く下を見回していると、白髪と黒髪の頭部のいくつかと目が合った。
懇願するような、警告するような、苦悶の表情を変わることなく浮かべ続けている。
沸々と疑問が溢れてくる。
到底理解できないことを目にし、それは完全に思考力を失ってしまった。
あの足の持ち主はこの中にいる。
そう気づくのにそう時間はかからないだろう。
助け出すことは、恐らく出来ない。
何故ナビゲーションはここに向かうよう、そして開けるよう指示したのか。
何も出来ることはないのに。来るのが遅かったということなのか。
それはただ茫然と、モノクロの虹を眺めていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる