4 / 13
花屋の男
龍之介の過去
しおりを挟む
さっきの中年女性を見つけるのは大変かと思っていたが、意外にもすぐに見つかった。
あとは話しかけるだけだったのだが、中々声をかけることができずにストーカーのように見失わないように後を追いかけていた。
レジに向かったタイミングで入り口で待ち伏せをすることにした。スーパーから出るタイミングを狙う作戦だ。
サービスカウンターに目をやるが、麻美の姿は無かった。
少し待つとエコバッグを腕に下げたさっきの中年女性が来た。
勇気を出して声をかける。
「すいません、さっき龍之介さんと話していた方ですよね?」
「あら、さっきの花御新報社の記者の人じゃない」
「えと、ちょっと龍之介さんのことで色々と聞きたいことがありまして、少し取材をしてもいいですか?今お時間大丈夫ですか?」
「なに、龍之介くんのこと?そっか記事を書かないといけないからね。いいわよ、そんな答えれるかはわからないけれど」
「良かった、ありがとうございます。そしたら、どうしましょう」
「あそこのイートインスペースで座って話しましょう」
中年女性の方から誘導してくれた。話がわかる人で良かった。むしろ協力的だ。
2人はイートインスペースのテーブルに向かい合いに座る。エコバッグをテーブルの上に置いて、なにやら中身をゴソゴソと漁る。
「これだけは溶けちゃうから食べながらでいいかしら」
中から出て来たのはアイスだった。
「もちろんです。食べながらで構いません。いくつか質問をさせていただきます」
袋の包みを開け棒アイスを引っ張り出す。チョコがコーティングされた小判型のアイスにかじりつく。
「前田恵美のお母さんということを言っていましたが、前田恵美さんというのは龍之介さんの同級生ですか?」
「んん、そうよ。小学校の時の同級生。でも、龍之介くん小学校4年生の時に引っ越して転校しちゃったからそれぶりだったのよ」
「転校?それより前にまず1つ、龍之介さんはこの町の生まれなんですね?」
「そうよ、恵美と同じ桜台小学校だったの。小学校4年生までね」
「その、転校、というか引っ越した理由ってわかりますか?」
「うーん、その頃私も仕事で忙しいかったからどうしてかまでは知らないのよねー。特別恵美とも仲が良かった訳でもなかったしね」
子供同士仲が良かった訳ではなかったのにあのテンションだったのか。素直に疑問だった。
「ただ一つ、一度だけ行った授業参観であの子を見たときの衝撃は忘れられないわ。あんなに顔が整った小学生なんて初めて見たわよ。あんまり目立つタイプではなかったけれど、確実にあれは将来化けると思っていたわ。私の目に狂いはなかったわね!」
アイスも食べ終わり、ティッシュで口を拭きながら自信満々に言う。
つまりイケメンだったから覚えていたという訳か。
「それじゃあ、小学校の頃の龍之介くんがどんな子だったかとかは」
「その授業参観の時だけよ」
それでよくあのテンションで話しかけれたな。と同時によく龍之介も覚えていたなと感心した。もしかしたら話を合わせただけなのかもしれないが。特に仲が良かった訳でもない同級生の母親なんて覚えている方が難しい。
「あんまり知らなくてごめんなさいね」
一瞬心の声が漏れたかと思ってビクっとした。
「い、いえ。出身小学校がわかっただけでもかなりの収穫です。ありがとうございます」
「そう?なら良かったわ。そろそろ仕事戻らないといけないからいいかしら」
エコバッグを持って立ち上がる。
「あ、すみません。お時間とってすみません、ありがとうございました」
慌てて立って頭を下げる。
「なに、いいわよ。頑張ってね。いい記事を書きなさいよ」
そう言ってスーパーから出て行った。
ちょうどそのタイミングで麻美が戻ってきた。
「何か収穫はあったかしら」
「あったようであんまりないですね。一応、龍之介さんはこの町の産まれで小学校4年のとき、おおよそ10歳の時に引っ越しして転校をしているってことだけですね」
転校?と麻美は顎に手を当てる。
「引っ越しの理由はわからなかった感じなのね」
「その通りです。麻美さんの方はどうでした?」
「一応収穫はあったわ」
イートインスペースの位置から外にいる龍之介のキッチンカーが見える。
「ここの店長と話をすることができたんだけど、龍くん。毎月同じ日にあそこに来ているみたいなの」
「同じ日?」
「そう。毎月ここに来る日の曜日が違っていたのはそのせいね。同じ日に来ているからカレンダーでいくと毎回曜日が変わっている。それが今日16日よ」
輝樹は携帯の日付を見る。今日は3月16日だった。
「ああいうキッチンカーは、基本的に曜日が固定になってたりするわ。だから龍くんもそうだとばかり思っていた。だけど先々月花を買いに来た日も今思えば16日の月曜日だった。先月は木曜日。そして今日も木曜日。初めて会った日が月曜日だったから月曜日に来るもんだとばかり思っていた。今日会えたのは本当に偶然ね。そういえば、午前中に会ったおじさんも結婚記念日と龍くんがここに来る日がちょうどいいみたいな事を言っていたような気がするわね。ここの店長にもその理由は喋ってないみたい。16日にだけとしか。実際お店の迷惑になっていないから、お店としてもそれで了承したみたい」
16日だけ来る移動販売か。日にちが固定ってすごい違和感だ。麻美が言った通り、こういうのは毎週土曜日だったり曜日が固定で週に1回や、月に2.3回といった物が多いようなイメージがある。だからこそ、月に1回しか来ないというのがすごい違和感だったのだ。
「もしかしたら、本当に龍くんには直接自分では言えないような何かがあるのかもしれないわね。むしろそれを調べて欲しいまであるような気がしてきたわ」
一見明るく振る舞っている人ほど何かを隠していることがある。
「あ、そういえば麻美さん。龍之介さんの小学校がわかりました。この後行ってみますか?」
「あら、しっかり収穫あるじゃない。じゃあお昼食べたら行ってみましょう。今日はご馳走するわ。今日だけよ」
「マジっすか!あざす!」
あとは話しかけるだけだったのだが、中々声をかけることができずにストーカーのように見失わないように後を追いかけていた。
レジに向かったタイミングで入り口で待ち伏せをすることにした。スーパーから出るタイミングを狙う作戦だ。
サービスカウンターに目をやるが、麻美の姿は無かった。
少し待つとエコバッグを腕に下げたさっきの中年女性が来た。
勇気を出して声をかける。
「すいません、さっき龍之介さんと話していた方ですよね?」
「あら、さっきの花御新報社の記者の人じゃない」
「えと、ちょっと龍之介さんのことで色々と聞きたいことがありまして、少し取材をしてもいいですか?今お時間大丈夫ですか?」
「なに、龍之介くんのこと?そっか記事を書かないといけないからね。いいわよ、そんな答えれるかはわからないけれど」
「良かった、ありがとうございます。そしたら、どうしましょう」
「あそこのイートインスペースで座って話しましょう」
中年女性の方から誘導してくれた。話がわかる人で良かった。むしろ協力的だ。
2人はイートインスペースのテーブルに向かい合いに座る。エコバッグをテーブルの上に置いて、なにやら中身をゴソゴソと漁る。
「これだけは溶けちゃうから食べながらでいいかしら」
中から出て来たのはアイスだった。
「もちろんです。食べながらで構いません。いくつか質問をさせていただきます」
袋の包みを開け棒アイスを引っ張り出す。チョコがコーティングされた小判型のアイスにかじりつく。
「前田恵美のお母さんということを言っていましたが、前田恵美さんというのは龍之介さんの同級生ですか?」
「んん、そうよ。小学校の時の同級生。でも、龍之介くん小学校4年生の時に引っ越して転校しちゃったからそれぶりだったのよ」
「転校?それより前にまず1つ、龍之介さんはこの町の生まれなんですね?」
「そうよ、恵美と同じ桜台小学校だったの。小学校4年生までね」
「その、転校、というか引っ越した理由ってわかりますか?」
「うーん、その頃私も仕事で忙しいかったからどうしてかまでは知らないのよねー。特別恵美とも仲が良かった訳でもなかったしね」
子供同士仲が良かった訳ではなかったのにあのテンションだったのか。素直に疑問だった。
「ただ一つ、一度だけ行った授業参観であの子を見たときの衝撃は忘れられないわ。あんなに顔が整った小学生なんて初めて見たわよ。あんまり目立つタイプではなかったけれど、確実にあれは将来化けると思っていたわ。私の目に狂いはなかったわね!」
アイスも食べ終わり、ティッシュで口を拭きながら自信満々に言う。
つまりイケメンだったから覚えていたという訳か。
「それじゃあ、小学校の頃の龍之介くんがどんな子だったかとかは」
「その授業参観の時だけよ」
それでよくあのテンションで話しかけれたな。と同時によく龍之介も覚えていたなと感心した。もしかしたら話を合わせただけなのかもしれないが。特に仲が良かった訳でもない同級生の母親なんて覚えている方が難しい。
「あんまり知らなくてごめんなさいね」
一瞬心の声が漏れたかと思ってビクっとした。
「い、いえ。出身小学校がわかっただけでもかなりの収穫です。ありがとうございます」
「そう?なら良かったわ。そろそろ仕事戻らないといけないからいいかしら」
エコバッグを持って立ち上がる。
「あ、すみません。お時間とってすみません、ありがとうございました」
慌てて立って頭を下げる。
「なに、いいわよ。頑張ってね。いい記事を書きなさいよ」
そう言ってスーパーから出て行った。
ちょうどそのタイミングで麻美が戻ってきた。
「何か収穫はあったかしら」
「あったようであんまりないですね。一応、龍之介さんはこの町の産まれで小学校4年のとき、おおよそ10歳の時に引っ越しして転校をしているってことだけですね」
転校?と麻美は顎に手を当てる。
「引っ越しの理由はわからなかった感じなのね」
「その通りです。麻美さんの方はどうでした?」
「一応収穫はあったわ」
イートインスペースの位置から外にいる龍之介のキッチンカーが見える。
「ここの店長と話をすることができたんだけど、龍くん。毎月同じ日にあそこに来ているみたいなの」
「同じ日?」
「そう。毎月ここに来る日の曜日が違っていたのはそのせいね。同じ日に来ているからカレンダーでいくと毎回曜日が変わっている。それが今日16日よ」
輝樹は携帯の日付を見る。今日は3月16日だった。
「ああいうキッチンカーは、基本的に曜日が固定になってたりするわ。だから龍くんもそうだとばかり思っていた。だけど先々月花を買いに来た日も今思えば16日の月曜日だった。先月は木曜日。そして今日も木曜日。初めて会った日が月曜日だったから月曜日に来るもんだとばかり思っていた。今日会えたのは本当に偶然ね。そういえば、午前中に会ったおじさんも結婚記念日と龍くんがここに来る日がちょうどいいみたいな事を言っていたような気がするわね。ここの店長にもその理由は喋ってないみたい。16日にだけとしか。実際お店の迷惑になっていないから、お店としてもそれで了承したみたい」
16日だけ来る移動販売か。日にちが固定ってすごい違和感だ。麻美が言った通り、こういうのは毎週土曜日だったり曜日が固定で週に1回や、月に2.3回といった物が多いようなイメージがある。だからこそ、月に1回しか来ないというのがすごい違和感だったのだ。
「もしかしたら、本当に龍くんには直接自分では言えないような何かがあるのかもしれないわね。むしろそれを調べて欲しいまであるような気がしてきたわ」
一見明るく振る舞っている人ほど何かを隠していることがある。
「あ、そういえば麻美さん。龍之介さんの小学校がわかりました。この後行ってみますか?」
「あら、しっかり収穫あるじゃない。じゃあお昼食べたら行ってみましょう。今日はご馳走するわ。今日だけよ」
「マジっすか!あざす!」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる