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花屋の男
龍之介の母校
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輝樹と麻美は桜台小学校に行ってみることにした。
龍之介が在学していたのは今から13年前。当時の雰囲気などはわからないが、小学校に来るだけでどこか懐かしい気持ちになる。
変に寄り道をして怪しまれる前に職員室に直行した。
すぐに名刺を渡し、取材の許可を取る。
13年前の生徒の事を聞きにくる時点で若干怪しまれたが、素性をすぐに明かし目的を簡潔に伝えることで相手も答えやすくなる。
すぐに校長先生が職員室の奥の部屋から出て来た。
「校長の秋元といいます」
2人は職員室の奥の校長室に通された。
「どうも、お忙しいところ申し訳ありません。私花見新報の佐々木といいます。こちらは岡田といいます」
麻美と輝樹は校長にも名刺を渡す。
その名刺を確認するように裏表を何度も見る。
「今日はどういったご用件で?」
「13年前にこちらの小学校に在学していた、杉咲龍之介という生徒について調査をしていまして」
「はぁ、その生徒がなにか?」
「いや、悪い意味で調べている訳ではありません。私たちが発行している地域雑誌に龍之介さんの営むお花屋さんの特集を組むことになったんです。それで龍之介さんがどういう生徒だったのかを聞きたくて」
秋元校長はなるほど、と顎に手を当てる。
「事情はわかりましたが、私もここの校長になって間もないもので当時のことは何もわからないんですよ。あー、でも13年前だったらギリギリ被ってるかもしれないかな」
そう言うと秋元校長はよいしょとソファーから立ち上がる。
「少しお待ちいただけますか?新藤先生がたしか10年前くらい前にこの小学校で教員をしていた時期があったはずなんです。今呼んで来ますのでこのままお待ち下さい」
校長室と職員室をつなぐ扉から出て行った。
もしかしたらその先生なら龍之介のことを何か知っているかもしれない。
次に扉が開いたのは校長室の扉の方だった。秋元校長と一緒に女性の教員が入って来た。
「新藤といいます。事情は秋元校長先生から伺っています。杉咲龍之介くんのことですね」
「当時のことを知っているんですか?」
「私は13年前、杉咲龍之介くんがいたクラスの担任をしていました。一度この小学校を離れたのですが、何かの縁でまた戻って来たんです」
まさかのまさかだ。当時の龍之介の担任の先生だなんて。
「そうなんですね。これはすごい偶然ですね。それじゃあまず1つ。龍之介さんは小学校6年の時に引っ越しをして転校をしたというのは本当なんでしょうか?もし、そうならその理由って覚えていますでしょうか?」
その質問に新藤はしばらく考え込んだ。輝樹はメモをとる準備をする。約30秒ほど無言になったところで話しづらそうに口を開いた。
「転校したのは本当です。理由なんですが、たしか親の仕事の都合だったような気がします。すいません結構前のことなので詳しく覚えてはいなくて」
「いえ、構いませんよ。10年以上前のことですので覚えていなくて当然です。覚えている範囲で構いませんので、当時龍之介くんはどんな生徒だったかだけ教えていただけませんか?」
「龍之介くんはとても大人しい生徒でした。とても頭が良く、テストの成績もかなり良かったと思います。でも、あまり自己主張するようなタイプではなくそこまで目立つような子ではなかったと思います。まさかまた戻ってきてお花屋さんをしているなんて、知りませんでした」
今度はほぼ間髪入れずに答えた。
「そうですか。すいません、昔のことで答えづらかったかと思いますが、ありがとうございました」
「いえ、すみません、こちらこそあまり覚えておらず。あまりお役に立てず」
「いえいえ、もしまた聞きたいことができたらお伺いします。今日はありがとうございました」
麻美は立ち上がり軽くお辞儀をすると校長室から出て行った。輝樹もすぐに会釈して後を追いかける。
「あんまり成果なかったですね」
麻美に追いついた輝樹が言った。
「そうでもないわ。当時の担任教師がいるという時点でかなりの収穫よ。またいつでも聞きにくることができるしね」
「まぁ、そうですけど。普通に10年以上前のことってそうそう覚えてないもんですよね。俺だって細かい記憶ないですし」
「そうでもないわよ」
麻美の足取りが早くなる。
「え?どういうことですか?」
「輝樹くんはあの担任教師に何か違和感なかったかしら?」
違和感?輝樹は考えた。
「しいて言えば、転校の話を聞いた時はすごい考えていたのに龍之介さんの当時のことを聞いたときはすっと答えていましたね。思い出していたから時間がかかったんですかね」
「そこよそこ。転校の話を聞いたとき明らかに答えるまでに時間がかかった。仮に思い出しているならその後も質問にも少しは時間がかかるはず」
「事前に校長から龍之介さんの昔のことを聞きに来たってことを伝えられてたとか?」
「それなら転校の話を聞いてくることくらい容易に想像できるはずよ。こっちは最初から13年前と言っているもの。普通なら何年に卒業した生徒という尋ね方をするわ。でも龍くんはあの小学校を卒業していない。だから自然とああいう質問の仕方になる。その時点でこの人たちは龍くんが6年生で転校していることを知っていると分かるはずよ。その状態で答えるのに時間がかかっていたということはあの教師はその理由を知っていてわざと答えなかった。どう答えたらいいかを考えたから時間がかかった」
麻美が一気に探偵に見えた。
なるほど、と輝樹は頭を掻く。
「でも、それならどうして?」
「そこに龍くんの全てが詰まっているような気がするわ。なぜ引っ越したのか。まぁ、考えすぎかもしれないけれどね」
急に放り投げられたように会話が終わった。
2人は一度オフィスに戻り作戦会議をすることにした。
龍之介が在学していたのは今から13年前。当時の雰囲気などはわからないが、小学校に来るだけでどこか懐かしい気持ちになる。
変に寄り道をして怪しまれる前に職員室に直行した。
すぐに名刺を渡し、取材の許可を取る。
13年前の生徒の事を聞きにくる時点で若干怪しまれたが、素性をすぐに明かし目的を簡潔に伝えることで相手も答えやすくなる。
すぐに校長先生が職員室の奥の部屋から出て来た。
「校長の秋元といいます」
2人は職員室の奥の校長室に通された。
「どうも、お忙しいところ申し訳ありません。私花見新報の佐々木といいます。こちらは岡田といいます」
麻美と輝樹は校長にも名刺を渡す。
その名刺を確認するように裏表を何度も見る。
「今日はどういったご用件で?」
「13年前にこちらの小学校に在学していた、杉咲龍之介という生徒について調査をしていまして」
「はぁ、その生徒がなにか?」
「いや、悪い意味で調べている訳ではありません。私たちが発行している地域雑誌に龍之介さんの営むお花屋さんの特集を組むことになったんです。それで龍之介さんがどういう生徒だったのかを聞きたくて」
秋元校長はなるほど、と顎に手を当てる。
「事情はわかりましたが、私もここの校長になって間もないもので当時のことは何もわからないんですよ。あー、でも13年前だったらギリギリ被ってるかもしれないかな」
そう言うと秋元校長はよいしょとソファーから立ち上がる。
「少しお待ちいただけますか?新藤先生がたしか10年前くらい前にこの小学校で教員をしていた時期があったはずなんです。今呼んで来ますのでこのままお待ち下さい」
校長室と職員室をつなぐ扉から出て行った。
もしかしたらその先生なら龍之介のことを何か知っているかもしれない。
次に扉が開いたのは校長室の扉の方だった。秋元校長と一緒に女性の教員が入って来た。
「新藤といいます。事情は秋元校長先生から伺っています。杉咲龍之介くんのことですね」
「当時のことを知っているんですか?」
「私は13年前、杉咲龍之介くんがいたクラスの担任をしていました。一度この小学校を離れたのですが、何かの縁でまた戻って来たんです」
まさかのまさかだ。当時の龍之介の担任の先生だなんて。
「そうなんですね。これはすごい偶然ですね。それじゃあまず1つ。龍之介さんは小学校6年の時に引っ越しをして転校をしたというのは本当なんでしょうか?もし、そうならその理由って覚えていますでしょうか?」
その質問に新藤はしばらく考え込んだ。輝樹はメモをとる準備をする。約30秒ほど無言になったところで話しづらそうに口を開いた。
「転校したのは本当です。理由なんですが、たしか親の仕事の都合だったような気がします。すいません結構前のことなので詳しく覚えてはいなくて」
「いえ、構いませんよ。10年以上前のことですので覚えていなくて当然です。覚えている範囲で構いませんので、当時龍之介くんはどんな生徒だったかだけ教えていただけませんか?」
「龍之介くんはとても大人しい生徒でした。とても頭が良く、テストの成績もかなり良かったと思います。でも、あまり自己主張するようなタイプではなくそこまで目立つような子ではなかったと思います。まさかまた戻ってきてお花屋さんをしているなんて、知りませんでした」
今度はほぼ間髪入れずに答えた。
「そうですか。すいません、昔のことで答えづらかったかと思いますが、ありがとうございました」
「いえ、すみません、こちらこそあまり覚えておらず。あまりお役に立てず」
「いえいえ、もしまた聞きたいことができたらお伺いします。今日はありがとうございました」
麻美は立ち上がり軽くお辞儀をすると校長室から出て行った。輝樹もすぐに会釈して後を追いかける。
「あんまり成果なかったですね」
麻美に追いついた輝樹が言った。
「そうでもないわ。当時の担任教師がいるという時点でかなりの収穫よ。またいつでも聞きにくることができるしね」
「まぁ、そうですけど。普通に10年以上前のことってそうそう覚えてないもんですよね。俺だって細かい記憶ないですし」
「そうでもないわよ」
麻美の足取りが早くなる。
「え?どういうことですか?」
「輝樹くんはあの担任教師に何か違和感なかったかしら?」
違和感?輝樹は考えた。
「しいて言えば、転校の話を聞いた時はすごい考えていたのに龍之介さんの当時のことを聞いたときはすっと答えていましたね。思い出していたから時間がかかったんですかね」
「そこよそこ。転校の話を聞いたとき明らかに答えるまでに時間がかかった。仮に思い出しているならその後も質問にも少しは時間がかかるはず」
「事前に校長から龍之介さんの昔のことを聞きに来たってことを伝えられてたとか?」
「それなら転校の話を聞いてくることくらい容易に想像できるはずよ。こっちは最初から13年前と言っているもの。普通なら何年に卒業した生徒という尋ね方をするわ。でも龍くんはあの小学校を卒業していない。だから自然とああいう質問の仕方になる。その時点でこの人たちは龍くんが6年生で転校していることを知っていると分かるはずよ。その状態で答えるのに時間がかかっていたということはあの教師はその理由を知っていてわざと答えなかった。どう答えたらいいかを考えたから時間がかかった」
麻美が一気に探偵に見えた。
なるほど、と輝樹は頭を掻く。
「でも、それならどうして?」
「そこに龍くんの全てが詰まっているような気がするわ。なぜ引っ越したのか。まぁ、考えすぎかもしれないけれどね」
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2人は一度オフィスに戻り作戦会議をすることにした。
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