ひーやん

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小学6年生までの話

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 次に彼の姿を見たのは冬ごろSkypeの画面でだった。
 土曜日に有志で小学校に集まり、パソコン室で病院のひーやんとSkypeを繋げた。
 えだちゃん(学級委員長。ひーやんと仲が良い男の子)ゆうやん(副学級委員長で、ひーやんと仲良い女の子)ちっぴー(幼稚園からひーやんと一緒の女の子)はるきんぐ(ひーやんと同じく野球部所属)とっち、ぴなもいた。私がここにいるのはなんとなく場違いな気がしたが、ちっぴーとゆうやんに強引に連れてこられた。
 坪山がパソコンをいじっている。しばらくして画面に野球の帽子を被った男の子が映った。
 びっくりした。
 帽子の下には髪の毛はなく、眉毛もまつ毛もなくて、マスクをしていた。車椅子に座っていて、変なチューブが見える。肌は青白くて唇に血色感がない。私の知ってるひーやんとはかけ離れていた。
 みんなは、おおー!と言って喜んでいたが、どうしてもひーやんには思えなくて、ひーやんに久しぶりに会えたという感動がまるでなかった。
 みんなが喋っているのを隅っこの方で眺めていた。
 坪山が不意に卒業式の練習をしようと言い出した。卒業式では毎年「呼びかけ」がある。6年生は1人1セリフ、他の学年は代表1、2名にセリフがあり、G線上のアリアの曲をバックに言葉を繋げていく。
A「卒業」
みんなで「卒業」
B「喜びに胸躍る今日のよき日」
C「私たち30名は」
D「小学校を卒業します。」と言った具合だ。
 ひーやんは卒業式は車椅子で参加すると決まっていた。今までずっと「無菌室」というところにいて、子供は面会NGだったというので、すごい良くなっているのだなと嬉しかった。
 卒業式の「呼びかけ」は私とひーやんで1セリフだった。
私「一生懸命練習した」
ひーやん「陸上大会」
私「水泳大会」という感じ。
 みんなやれやれ!というようなムードになって私はひーやんと繋がっているパソコンの側に連れて行かれる。画面越しに目が合う。
 「久しぶり。」
後ろでヒューという声が上がる。いつのまにかみんなが知っていた。
 ひーやんの声ってこんな感じだったっけ?ひーやんの目ってこんな感じだったっけ?
 一度呼びかけの練習をして、光くん、本番こんな感じね、と坪山が笑った。ひーやんが学校に来るのは本番だけ。本番一発勝負だった。
 ねぇ、ビデオレター見てくれた?私の手紙読んでくれた?嫌じゃなかった?
 
  頑張ってるひーやんに頑張ってって言うのはひどいけど、でも、私は頑張ってとしか言えません。強いひーやんなら絶対治るって信じています。だから、頑張って。また会える日を楽しみにしてます。
 
 私、嫌われてないよね?
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