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第五章「過去はもういらないです」
第23話 NTRされた彼女
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そのメッセージを読んだ瞬間、俺は酷い嫌悪感に襲われた。感情と共に胃液が逆流する。胸糞悪いとはこのような事態を言うのだろう。
スマホを見たまま固まった俺を心配したのか、隣で眠っていた明日花さんも眉を垂らしながら様子を伺ってきた。
「どうしたの? 何かあった?」
「いや、大したことじゃないんだけど……」
連絡してきたのは前の職場で共に働いていた先輩で、名は田沼さん。彼は俺の元カノだった都子を紹介してくれた人だったのだが、俺と自然消滅した後に二人は付き合い出したのだ。
そう、俗にいう寝取られ関係だった。
今でこそ明日花さんと出逢い幸せな状況だが、当時はかなり人間不信に陥ったものだ。
できることなら会いたくない。
二度と関わりたくない人種だった。
そんな彼らが、今更何の用だろう?
「田沼さんと都子が結婚するから、独身最後の飲み会をしよう——?」
そんなの、勝手にやってほしい!
俺のことなんて脳の片隅にも置かないで、好きにワチャワチャして欲しい!
皆で楽しく? 絶対に違う、自慢したいだけだ。
『コイツ、お前のよりも俺のが好きなんだってよ? ドンマイwww』
『壱嵩くんのセックスって、独りよがりでしつこくて嫌だったんだよね。それに比べて田沼さんは激しくて素敵だったわ♡』
前にそんな話を二人がしていたと同僚から聞いたことがあった。
黒歴史にも程がある……。思い出しただけで吐き気が込み上がるほどだ。
「壱嵩さん? 本当に大丈夫? 顔色が悪いけど」
「あぁ、大丈夫。いや、実は元カノとその彼氏から連絡が来て。結婚するから仲間内で集まって飲もうって連絡が来たんだ」
明日花さんの表情が凍りついた。
しまった、口が滑った。
いくら今は微塵も気持ちが残っていないとはいえ、無神経な発言だった。
しかし明日花さんの方がずっと大事だし、何があっても手放したくないほど好意を抱いている。
だが、きっとそういうことではないのだろう。
「——行くの? その飲み会」
行きたくないのだが、行かなかったら行かなかったらで根も葉もないことを言われるのだろう。
今の俺はこんなに幸せなのに。
「あの、できれば明日花さんにも一緒に来てもらいたいんだけど、ダメかな?」
「え?」と驚いた表情を見せた彼女に俺まで虚をつかれた。
「わ、私……一緒に行ってもいいの? そんな、誰かに紹介してもらうとか初めてなんだけど」
頬を染めて恥ずかしがる彼女を見てハッとした。確かに紹介とかしたことがない。俺も友人が多い方ではないので、今回が初めてする彼女紹介だ。
本当なら皆に自慢して回りたいほど大事な彼女なのに、その機会が少なくてヤキモキしていたほどだ。
「今週の金曜日らしいんだけど、いいかな?」
「うん……私でよければ。ふふっ、顔がニヤけて戻らないね」
両手で頬を覆って、なんて愛らしいのだろう。それに比べて、顔も思い出せない元カノ。寝取ってくれてありがとうと言いたくなるから複雑である。
「壱嵩さんが恥をかかないように、うんとオシャレしていくね」
「いや、もう十分素敵だから。これ以上可愛くなったら、寝取られる心配が出てくるから逆にダサくして欲しいです」
——そうだ、その心配が残っていた。
自分で言って気付いたが、田沼さんが明日花さんを寝取る可能性が浮上してくる。
何故なら彼は既に味を占めている。幸山からなら簡単に彼女を寝取れると。
そういう性癖の人間なのかもしれない。
他人のものがやたらと良く見える輩なのかもしれない。
一度、地獄に落ちて鬼に成敗してもらった方がいい屑に違いない。
だが、そんな屑よりも劣っていたのだと思うと自信がなくなってしまう。感情の弄ばれ方が半端じゃない。
「大丈夫? やっぱり具合が悪いんじゃ」
「だ、大丈夫。時間が経てば治まると思うから」
こうして俺は一ミリも乗り気でない飲み会に参加する羽目になったのだ。
スマホを見たまま固まった俺を心配したのか、隣で眠っていた明日花さんも眉を垂らしながら様子を伺ってきた。
「どうしたの? 何かあった?」
「いや、大したことじゃないんだけど……」
連絡してきたのは前の職場で共に働いていた先輩で、名は田沼さん。彼は俺の元カノだった都子を紹介してくれた人だったのだが、俺と自然消滅した後に二人は付き合い出したのだ。
そう、俗にいう寝取られ関係だった。
今でこそ明日花さんと出逢い幸せな状況だが、当時はかなり人間不信に陥ったものだ。
できることなら会いたくない。
二度と関わりたくない人種だった。
そんな彼らが、今更何の用だろう?
「田沼さんと都子が結婚するから、独身最後の飲み会をしよう——?」
そんなの、勝手にやってほしい!
俺のことなんて脳の片隅にも置かないで、好きにワチャワチャして欲しい!
皆で楽しく? 絶対に違う、自慢したいだけだ。
『コイツ、お前のよりも俺のが好きなんだってよ? ドンマイwww』
『壱嵩くんのセックスって、独りよがりでしつこくて嫌だったんだよね。それに比べて田沼さんは激しくて素敵だったわ♡』
前にそんな話を二人がしていたと同僚から聞いたことがあった。
黒歴史にも程がある……。思い出しただけで吐き気が込み上がるほどだ。
「壱嵩さん? 本当に大丈夫? 顔色が悪いけど」
「あぁ、大丈夫。いや、実は元カノとその彼氏から連絡が来て。結婚するから仲間内で集まって飲もうって連絡が来たんだ」
明日花さんの表情が凍りついた。
しまった、口が滑った。
いくら今は微塵も気持ちが残っていないとはいえ、無神経な発言だった。
しかし明日花さんの方がずっと大事だし、何があっても手放したくないほど好意を抱いている。
だが、きっとそういうことではないのだろう。
「——行くの? その飲み会」
行きたくないのだが、行かなかったら行かなかったらで根も葉もないことを言われるのだろう。
今の俺はこんなに幸せなのに。
「あの、できれば明日花さんにも一緒に来てもらいたいんだけど、ダメかな?」
「え?」と驚いた表情を見せた彼女に俺まで虚をつかれた。
「わ、私……一緒に行ってもいいの? そんな、誰かに紹介してもらうとか初めてなんだけど」
頬を染めて恥ずかしがる彼女を見てハッとした。確かに紹介とかしたことがない。俺も友人が多い方ではないので、今回が初めてする彼女紹介だ。
本当なら皆に自慢して回りたいほど大事な彼女なのに、その機会が少なくてヤキモキしていたほどだ。
「今週の金曜日らしいんだけど、いいかな?」
「うん……私でよければ。ふふっ、顔がニヤけて戻らないね」
両手で頬を覆って、なんて愛らしいのだろう。それに比べて、顔も思い出せない元カノ。寝取ってくれてありがとうと言いたくなるから複雑である。
「壱嵩さんが恥をかかないように、うんとオシャレしていくね」
「いや、もう十分素敵だから。これ以上可愛くなったら、寝取られる心配が出てくるから逆にダサくして欲しいです」
——そうだ、その心配が残っていた。
自分で言って気付いたが、田沼さんが明日花さんを寝取る可能性が浮上してくる。
何故なら彼は既に味を占めている。幸山からなら簡単に彼女を寝取れると。
そういう性癖の人間なのかもしれない。
他人のものがやたらと良く見える輩なのかもしれない。
一度、地獄に落ちて鬼に成敗してもらった方がいい屑に違いない。
だが、そんな屑よりも劣っていたのだと思うと自信がなくなってしまう。感情の弄ばれ方が半端じゃない。
「大丈夫? やっぱり具合が悪いんじゃ」
「だ、大丈夫。時間が経てば治まると思うから」
こうして俺は一ミリも乗り気でない飲み会に参加する羽目になったのだ。
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