25 / 49
おでかけなのです!
しおりを挟む大量のお小遣いをゲットして小金持ちなミィです。
「これはいっちょお買い物をしなきゃなのです!」
わたしはお出かけ用の洋服に着替えてそう宣言した。
「モフ丸、お買い物にいきますよ」
床でぷうすこ寝ているモフ丸の首に手を回し引きずっていこうとした。
「……おもたいです。モフ丸自分で歩いてください」
「……もうちょっと頑張れ」
モフ丸が片眼をチロッと開けてそう言った。
……元の位置から10センチくらいしか移動してませんね……。
「父さま、おはようございますです!」
食堂にいた父さまに抱き着いて挨拶をすると、抱き上げられ頬にちゅっとキスをされる。ミィも父さまの首に頭をすりすりしてマーキングしておいた。
そのまま父さまの膝の上でごはんを食べ終わる。
「ミィ、今日は俺とリーフェがついて行くぞ」
「ミィ一人でも行けますよ?」
「うちは『可愛い子なら懐にいさせよ』に方針転換したんです~」
わたしの眉間を人差し指でうりうりするイルフェ兄さま。ムッとして顔のパーツが中心に寄る。
「むぅ」
「ぶちゃいくな顔になったな。かわいい」
どっちですか。
むにっとほっぺを両手で潰された。
「ここに商人を呼べばいいのに」
オルフェ兄さまがちょっと不満そうにそう言った。
「久々にみんなに会いに行きたいのです」
「……」
「まあまあ兄上。俺らがちゃんとついて行くし」
「ちげぇよリーフェ。自分が仕事でミィとお出かけできないから拗ねてんだよ」
イルフェ兄さまがニヤニヤしながらオルフェ兄さまを煽る。
城の玄関まで父さまとオルフェ兄さまがお見送りにきてくれました。
父さまによってわたしの首にキュッと鈴の付いたリボンが結ばれる。苦しくないし緩くもない絶妙な加減だ。父さま、さては陰で練習しましたね。
わたしはチリンチリンと自分の首についた鈴をいじる。
「父さま、これなんです?」
「護りの魔石を我らに位置が分かるように加工したものだ」
「ほうほう」
ハイテクですね。
「飼い猫みたいで愛いのお。似合っておるぞ」
モフ丸が褒めてくれました。今日はモフ丸も一緒にお買い物にいきますよ。
「じゃあ父さま、オルフェ兄さま、ミィ達はいってくるのです」
「ああ」
「気を付けて行ってくるんだぞ」
二人に手を振ってわたしは歩き出した。
両手をイルフェ兄さまとリーフェ兄さまにそれぞれ繋がれる。モフ丸は後ろから歩きでついてくる。
魔王城は小高い丘の上にあるので街に行くには坂を下っていく必要がある。
「乗り物は使わんのか?」
「乗り物を使うと目立ち過ぎちゃうので今日はなしなのです。モフ丸も歩かないとおでぶちゃんになっちゃいますよ」
「我は太っていてもきゅーとだからいいのだ」
モフンと胸を張るモフ丸。
「内臓脂肪はかわいくないのですよ」
「数百年後はその言葉自分に帰ってくるからな運動不足」
「だから今運動してるのです」
「これはお主の年齢では運動とは呼べぬぞ」
あれ?いつの間にかミィの方が小言を言われてるのです。
小言を受け流してたらいつの間にか街に着いてました。
「いつ来てもここは賑やかですね」
「魔王のお膝元だしな」
わたしを片腕で抱っこしたオルフェ兄さまが言う。そう、わたしは自分の足で歩いてたはずだったのにいつの間にか兄さまに抱っこされてました。モフ丸の視線が痛いです。
「ミィ、最初はどこに行きたい?」
「もちろん、いつものとこ!」
「いつものとこ?」
モフ丸がコテンと首を傾げている。
「あ、そっか、モフ丸とお買い物にくるのは初めてでしたね。モフ丸にミィの行きつけのお店を紹介してあげるのです!!兄さま、ごーです!」
「あいよ」
そして、兄さま号に乗ってわたしは行きつけのお店に着いた。看板を見てモフ丸のテンションが若干下がった気がしたけど、きっと気のせいですね。
兄さまが降ろしてくれたので、自分で扉を開けてお店に入る。
「ごめんくださ~い、なのです」
「あらまぁミィ様!お久しぶりですねぇ!!本日いらっしゃると連絡をいただいて待っておりましたのよ!」
「にゅふん」
出迎えてくれたのは馴染みの店主のお姉さんだ。ギュッと抱きしめられてたわわなお胸にほっぺがムニッと潰される。母さまを思い出しますね。
「あら、ミィ様ちょっと成長されましたか?」
「いえ、一ミリも成長してないのです」
「……まぁ、ごめんなさいねぇ」
気にしてないので大丈夫なのです。魔王家は長寿なので元々成長は遅いし、小さいままだといつまでも甘えてられますからね!
「じゃあ今までと同じサイズで大丈夫ですわね。新たに採寸し直す必要はないようですし」
「はいです」
「ミィ……」
ちょこんとお店の中でお座りしてたモフ丸に声をかけられた。
「なんです?モフ丸」
「ここはなんの店なのだ?表の看板には『箱の店』と書いてあったが」
「その通りですよ。箱の専門店なのです。ミィが入ってる箱は大体ここの商品なんですよ」
「ミィが寝ている棺桶もか?」
「もちのろんなのです」
あれはとってもいい商品です。箱なら形は何でもよかったんですけど、おまかせで注文したら棺桶型で届きました。寝る場所が棺桶ってジョークがきいてていいですよね。
店内には大中小様々な大きさの箱が置いてあり、そのデザインも色々だ。ただの段ボールから宝石をあしらった高価なものまでこの店には揃っている。
うむ、マニアックな要望にも対応できるいいお店ですね!
「ミィ様が広告塔になってくださっているおかげで、ペットを飼っている方々から自分のペットの寝床を作ってほしいという注文をひっきりなしにいただきますわ」
「ミィはペットと同じ扱いか」
モフ丸が呆れたような声を出す。
「ミィ様が猫のように愛らしいのは魔界では常識ですわよ、モフ丸様」
えへへ、照れるのです。
「それで、今日はどんな箱をおつくりしますか?」
「足を伸ばして入れるのもいいんですけど、久々にみっちりスッポリ嵌れる箱がほしいのです」
イメージはおでぶ猫ちゃんが毛とか胴体のお肉をはみ出しつつ箱に入ってる感じなのです。
「まあミィ様は本物のねこちゃんではないので内側はやわらかい素材でお造りしますね。小さめのクッションを抱いて丸まるとピッタリなサイズになるかと思います」
「はいなのです。あ、あとこのモフ丸を抱っこして寝られるサイズの箱と、モフ丸の寝床もお願いするのです」
「はい、かしこまりましたわ。できましたらお城にお届けいたしますね」
「はいです」
お姉さんは笑顔で裏に入っていった。
「ミィ……」
モフ丸が意外そうな目でわたしを見てきました。
わたしは腰に手を当てて胸を張ります。
「にゅっふんっ。今までちゃんとしたモフ丸の寝床がありませんでしたからね。モフ丸を拾った飼い主としてミィが用意してあげるのです」
「!ミィはいい子だのう」
「えへへ」
モフ丸の首に手を回してむぎゅっと抱き着くと、モフ丸は鼻先でわたしの頬をスリスリしてくれる。
「癒されるねぇ兄上」
「だな」
***
お店を出たら、リーフェ兄さまが肩車をしてくれました。視点が高いのが新鮮です!背が高くなった気になるのです!
モフ丸はちゃっかりオルフェ兄さまに抱っこされてる。
「ミィ、次はどこに行きたい?」
「う~ん、お腹が空いたのでなにか食べたいのです」
「じゃあお昼にしようか。なにが食べたい?」
「おさかなです!」
「じゃあ魚料理が食べられるところにいこうね」
「はいです!」
楽しみです。
そこから暫く人通りの多い大通りを歩いていくと、一際賑わってるご飯屋さんがあった。お店の外までお客さんが並んでいる。兄さまはそこを指さして言った。
「今日はあそこでご飯を食べようか。魚料理に限らずとてもおいしいらしいんだよ。ねぇイルフェ兄上?」
「ああ、俺はたまに部下と行くな。どの料理も美味いぞ」
「おお!」
舌が肥えてるイルフェ兄さまがおいしいって言うなら期待大なのです!
「ちなみに、今日はミィがなにを言ってもあそこに行くつもりだったので既に予約済みです。並ばないで入れるよ」
「ちょっと釈然としないですけど兄さまぐっじょぶなのです!」
そして、わたし達はお店に入った。人気店だけあって店内は広く、人で賑わっている。
そこかしこからいい匂いが漂ってきます。じゅるり。
清潔感もあって雰囲気もいい感じなのです。
「ミィはなに食べたい?」
リーフェ兄さまがメニューを見せてくれる。どれもおいしそうなのです。
オルフェ兄さまはさっさと注文する料理を決めて膝にのせたモフ丸をなでなでしている。手持無沙汰なんですね。
「むぅ、煮魚もこの揚げたのも捨てがたいのです」
「じゃあ両方頼んで半分こしようか」
「はいです!」
リーフェ兄さま優しい。
「決まったか?じゃあ店員呼ぶぞ」
「は~い」
「ふおおおおお!おいしそうです」
わたしの前の机にはおいしそうな料理が並んでいる。
「じゃあ食べるか」
「はいです!いただきますなのです!」
はむっと煮魚を一切れ口に入れる。
むぐむぐ。
「ん~!うまうまです!」
「お刺身もお食べ」
リーフェ兄さまがお刺身を食べさせてくれる。
「ん~!これもおいしいのです!」
新鮮なのが分かるお刺身です。臭みも全くありません。
「……」
「……兄上、なんて顔してるの……」
イルフェ兄さまが拗ねた子どもみたいな顔してる。むーん、て効果音が聞こえてきそう。
「リーフェばっかりずるい。俺もミィにあーんする」
「ばっちこいなのです」
イルフェ兄さまのステーキも密かに狙ってました。
一匹で黙々と食事をしていたモフ丸がゆらりと尻尾を揺らす。
「仲がよいのう……」
「にゅふんっ」
わたしはがま口財布から取り出したお金をレジに出した。もちろん全員分の料金です。
「え」
財布を取り出そうとしたイルフェ兄さまがポカンとしてます。
「今日はミィが払うのです」
「いや、それは兄の威厳が……」
「それはちょっとねぇ……」
「気にするななのです」
兄さま達が微妙なお顔をしている間にわたしは店員さんからおつりを受け取りました。
「さあ、次のお店に行くのです!」
微妙な顔をする二人と一匹を連れてわたしはお店を出た。
***
「父さま、オルフェ兄さま!ただいまなのです!」
玄関で出迎えてくれた二人に抱き着く。
「おかえり」
「おかえりミィ。楽しかったか?」
「はいです!今日お昼を食べたお店がおいしかったので今度父さまとオルフェ兄さまも一緒に行きましょうね!」
よじよじとオルフェ兄さまに登り、抱っこしてもらう。
「ほう、では今度の休みにいくか」
「はい!」
父さまが兄さま達の方を見る。
「イルフェ達も楽しめたか」
「ああ」
「楽しかったよ」
「うむ」
「そうか」
父さまの返事は一見そっけないけど、その表情は少し嬉しそうなのです。
父さまはわたしの方に向き直る。
「さあ、今日はミィの土産話を父さま達に聞かせておくれ」
「もちろんです!」
いっぱい話したいことあるのですよ!
はしゃぎすぎたのかその日の夜はスコンと眠りに落ちました。
23
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。
桜城恋詠
ファンタジー
聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。
異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。
彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。
迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。
「絶対、誰にも渡さない」
「君を深く愛している」
「あなたは私の、最愛の娘よ」
公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。
そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?
命乞いをしたって、もう遅い。
あなたたちは絶対に、許さないんだから!
☆ ☆ ☆
★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。
こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。
※9/28 誤字修正
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!
白夢
ファンタジー
何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。
そう言われて、異世界に転生することになった。
でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。
どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。
だからわたしは旅に出た。
これは一人の幼女と小さな幻獣の、
世界なんて救わないつもりの放浪記。
〜〜〜
ご訪問ありがとうございます。
可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。
ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。
お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします!
23/01/08 表紙画像を変更しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる