天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの

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こぼれ話

帰ってきたよ!

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「なんか久しぶりな感じがするねぇパパ」

 シロ達は王城に到着していた。

「ボクと博士は陛下に報告しにいく。お前達は今日はもうゆっくり休め」
「ああ」

 殿下の言葉にブレイクは頷いた。皆今日はもう仕事をする気は起きないだろう。
 シオは博士に背負われたままシロに手を振った。

「シロ、また後で会おうな」
「うん」

 シロもブレイクに抱っこされたまま手を振り返し、そこで殿下達と特殊部隊は分かれた。





「あ、おっさ~ん!」
「お~おかえり~ちびっこ」

 特殊部隊の隊舎の前で、おっさんがシロ達を出迎えた。
 シロはブレイクから降りると、おっさんに飛びついた。おっさんは飛びついてきたシロを難なく抱き上げる。

「お、この重みなんか久しぶりだな」
「えへへ。おっさんはシロ達がいない間何してたの」
「ん~? 俺はお前らがいないとあんま仕事ねぇからな、ここ最近で一番穏やかな時間を過ごしてたぞ」
「よかったねぇ」
「まあでも騒がしくないこの隊舎にはなんか違和感あったけどな」

 そう言っておっさんは笑った。

「でも今日からまた騒がしくなるよ。さよなら平穏おかえり胃痛。よかったねおっさん」
「別によかねぇけどな。……あ、お前らメシは食ってきたのか?」
「いや、まだだ」

 おっさんの問いにブレイクが答える。その間にブレイクはちゃっかり娘を取り戻していた。

「メシの準備してあっから、休む前に食っとけよ」
「おお! ありがたい!」

 おっさんの言葉を聞いたイオが早速食堂に飛び込んでいった。そして皆イオの後に続く。

「あ! コラ! 食う前に手を洗え!! あとそこ! 窓から入るんじゃない!!」

 隊員達を追いかけていくおっさんの後ろ姿をシロとブレイクは見送った。

「……おっさんはいつの間にオカン属性になったの?」
「さあ。でも完全に母性本能が芽生えてるな。……俺らもメシを食べにいくか、シロ」
「うん!」




***


 隊員達は我先にと食事を取ってきて席に着いた。

「―――なんでお前らそんなにがっついてるんだ?」

 おっさんに疑問にシリルが答える。

「いや~、塩焼きの魚とかフルーツもおいしいんだけど手の込んだ料理が食べられなかったんだよね。だって誰も料理できないから」
「誰か一人はできる奴連れてけよ」
「そしたら次はオッサンが連れてかれることになるけどいいの?」
「……帰ってきたらおいしいメシ食えるから気張ってこいよ」

 おっさんは隊員達の任務先での食事を諦めた。
 そしておっさんはアニへと視線を移す。
 
「……んで、お前はどうしてそんなにソワソワしてんだ?」
「……なんかちゃんとしたイスに座って食事するのって違和感あるんだよね……」
「分かりたくないけど分かるぞ弟よ」

 アニの言葉に常識人の筈のエルヴィスが同意した。おっさんはそんなエルヴィスを見てギョッとする。

「おいエルヴィス! お前までそっちにいってどうするんだ!」
「だって……なぁ。ちゃんとイスと机を使って食事なんて人間みたいじゃんか。文化人かよ」
「突っ込む方向がちげぇ。お前はちゃんと人間で文化人だよ、野生に還らないでくれ」

「エルヴィス達もこっちにおいでよ~!」
「?」

 エルヴィスが振り返ると、シロとブレイクはフロアマットの上に足を伸ばして座っていた。シロの遊び場兼お昼寝場所として、食堂の一部にはフロアマットがひいてあるのだ。
 そしてマットの真ん中には少し大きめの机が置かれている。

「え、いくいく~!」
「シロちゃ~ん!!」
「え、俺も行く」
「僕も~」

 隊員達は次から次へとシロ達の元へと向かい、あっという間に机の周りはギュウギュウ詰めになった。せっかく移動したのに胡坐をかくスペースはない。
 シロは早々にブレイクの膝の上に移動させられた。

「おいシリルもうちょっと詰めろよ!」
「もう限界だよ! エルヴィスちょっと太ったんじゃないの!?」
「俺は常にモデル体型だわ!」

 隊員達はギュウギュウ詰めで騒ぐ。
 その様子を見てシロはくふくふと笑った。

「―――にゅふふっ、パパ、楽しいねぇ」
「そうだなぁ」

 ブレイクは穏やかに笑いながらシロの口に食事を運んでいった。




***




「―――おいおい、こいつらはそろいもそろって五歳児かよ……」

 およそ一時間後、用事から戻ってきたおっさんはシロの遊び場スペースを見下ろしてそう言った。

 そこでは、特殊部隊の隊員達が互いに重なり合いながら眠っている光景が広がっていた。
 
「はぁ、しょうがねぇな」

 おっさんは大きなタオルケットを一枚引っ張り出してきて皆の上にバサッとかけた。もちろん顔がタオルケットに覆われてしまっている者もいる。ごちゃごちゃに寝ているのでそこまで気を遣っていられないのだ。



「全員子どもみてぇだな」

 そう呟いたおっさんは完全に母の目をしていた。







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