異世界の聖杯を拾ったら後輩系彼女ができた件

三色ライト

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4話 彼シャツを着せるのは日本文化だ

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 さてリディアの服はどうしたものか。

 脱ぎ捨ててあった俺の服から着せるのは抵抗がある。かといって外出用の服は、当然ながらガッツリ男物だ。

 リディアは身長150センチに届かないくらいだろう。対して俺は170センチなので、20センチ以上の差がある。ぶかぶかの服を着せて、はだけてセクシーもいいが、初日でそれは殺されかねない。

 うーむと悩んだ結果、日本の伝統衣装を着てもらうことにした。

 洗面所に服を置くと、リディアのシルエットが浴室ドアの曇りガラスに写ってしまっていた。

 スレンダーだが、出るところは出ているな。あれを触ったのか。もう一度触らせてくれないだろうか。

「正輝さん? なんか長くないですか?」

「すみませんでした」

「なぜ謝るのです?」

「いやほんと、すみませんでした」

 やましいことばかり考えている自分が情けない。だがそんな自分がちょっとだけ好きだったりする。

 数分後、リディアの初入浴が終わったらしい。浴室ドアが開く音がした。

 さて、あの服で間違っていなかっただろうか。

 ガチャ……と洗面所のドアが控えめに開かれた。

「ま、正輝さん。服はこれで合っているのですか?」

「あ、あぁ。合っているぞ」

「そ、そうですか」

 いったん確認を挟んだリディアが洗面所から出てきた。

 彼女は俺のシャツを纏っていた。俗にいう、彼シャツ。

 ぶかぶかなシャツは、ありありと自分とリディアの体格差を思い知らさせる。袖は当然余っており、少し前に流行った萌え袖状態だ。

 健康的な太ももが露出され、その艶やかな肌がライトに照らされていた。しっとりと、柔らかそうな太ももだ。

「な、なにかおかしい気がするのですが気のせいでしょうか」

「何をいう、それは日本伝統の彼シャツ。彼女が最初に通る道だ」

「そ、そうですか」

 一応リディアは飲み込んだようだった。

 ……いや、盛り上がって着せてみたけどこれはまずいな。

 リディアの水色の下着がほとんど見えている。それ目的だったわけではないが、まるで狙っているかのようだ。

「ごめん、やっぱりジャージに着替えてもらっていいか? 服は明日何とかするから」

「え、でもこれが伝統なのでは」

「嘘ですすみませんでした」

 良心が痛んだ。
 荒んだ俺にも良心があったことに、逆に安心感を覚えた。

 俺も風呂から上がると深緑色のジャージを着たリディアがジッと見つめてきた。ぶかぶかだが、彼シャツよりは良いだろう。

 着せた俺が言うのも変だが、彼シャツはどうかしていたな。

「正輝さん、明日はどうされるのですか?」

「明日は朝から夕方まで仕事だ」

「そうでしたか。私は……」

「ここで大人しくしていてくれ。暇だったらライトノベル、読んでもいいぞ」

「ライトノベル?」

「小説だ。面白いぞ」

「そうですか。では読ませていただきます」

「じゃあ寝るか。布団はリディアが使えよ」

「いえ、家主を差し置いて布団で寝るなど」

「いや彼女に床で寝させるほど俺はクズじゃないぞ」

 これまでの軽口や悪戯を棚上げしてドヤ顔した。

 リディアは考え込むようにあごに手を当てた。そしてさっぱりと

「分かりました。布団は使わせてもらいます」

 そう宣言した。

 よかった、これで彼女に彼シャツを着せた挙句に床で寝させたゴミクズ男の称号を回避できた。

 俺が床で寝ようとすると、リディアが「ちょっと」と声をかけてきた。

「どこ行くんですか。こっち、来てくださいよ」

「え?」

 リディアは掛け布団をめくり、誘うように上目遣いになった。

 言っている意味はわかる。だが、すんなり脳が処理をしてくれない。

「いいのか?」

「正輝さんを床で寝させるなんて嫌です。……一応、彼氏ですし」

「リディア……天使か」

「そ、そういうのいいですから!」

 リディアは枕で顔を隠した。照れると顔を隠すのはもうお決まりのようだ。

 リディアの同意を得られたので、遠慮なくお邪魔することにした。

 布団の半分をリディアが使っている。余った半分を、俺が占拠した。

 温かい。人のぬくもりだ。

「なんか安心する」

「そうなんですか? 私はいつ襲われないかビクビクしています」

「じゃあなんで布団に誘ったんだよ」

「正輝さんは最低最悪な彼氏です」

「うぐ……」

「でも、不誠実なことはしない。そんな人な気がするんです」

 リディアは耳を真っ赤に染めていた。

 向こうを見ていてくれて助かった。

 俺まで顔が赤くなっているのを、見られなくて済んだからな。
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