その無防備が誘ってるみたいで。でも僕らはギリギリでまだ友達。

zanka

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【ベットから落ちたら】

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 初日の「ブルーハワイ」でのアルバイトはあっという間に終わった。
 ペンションに戻るなりシャワーを浴びた。先に海翔が入り、拓真が浴室から出たときには海翔はもうベットの上だった。
 拓真はダブルベッドにうつぶせで半裸で横たわる海翔を見て苦笑する。
 アサミも「遊んできたら?」と言ってくれていたし、暑いし目の前の海に飛び込んだら気持ち良さそうだったのに、海翔はどうも焼きそばを焼きたかったらしく、ひたすら商売人になっていたのだ。
 午後六時だった。夏の空は明るい。
「今日、ご馳走してくれるって。マコさんとアサミさんが」
「・・・ほんとう? やったー」
 寝たまま窓の外を見ながら、海翔が言う。
 腕に触ると痛い、と海翔はぼやきながら、先ほどから海翔は横になっている。
「明日はめっちゃ日焼け止め塗って行く・・・」
 そう呟いたと思うと、海翔は寝息を立てはじめた。
「明日は海、入ろうよ」
 そう拓真は言ったが、もう眠っている海翔は返事をしない。
 拓真は眠る海翔に近づき、床にあぐらで座るとじっとその寝顔を見つめた。
 長い睫、ぽかんと開いた形の良い唇、中性的な顔だちだった。
 三年で同じクラスになってから数ヶ月、ずっと側にいたけど、こんなにじっくり見たことはない。
 自由奔放でぴたっとくっついて行動するときもあれば、気がそれたら一人ですぐどこかにいってしまう。マッツーとミキオ、拓真と海翔の四人で何となく一緒にいることが多いのだが、気がつくと居なかったりするのだ。
 拓真はブランケットを海翔の体にかける。
 クーラーも入っているし、半裸で寝てたら風邪を引いてしまう。
 そして拓真の指は、躊躇いがちに海翔の髪に触れる。
 柔らかく、生まれつき少し明るい髪。
 夏休み前に染めた自分の髪色と、何か違う。
 次に頬に触れた。柔らかく滑らかだった。触れた自分の指が熱を持ってしまったようだ。
「やばい、これ・・・」
 小さく呟いて拓真はなんとか指先を引っ込めた。
 海翔に背を向け、ベットの縁に背を凭れかけ外を見る。
    
 宿泊客が集う広めのロビーに拓真は座っていた。
 二十歳前後の女の子が、拓真を見てなにやら話している。
 声をかけようかどうしようか、という様子だった。
 拓真もそういう視線や態度には慣れているので、面倒になる前に席を立ち、キッチンに向かった。食堂もあり、宿泊客に出す料理もマコとアサミが作っているのだ。
「あれ、ひとり?」
 マコが笑顔で声をかけてくれる。
 黙っていてもマコとアサミの親密さが伝わってくる。
 二人に話しかけるのが躊躇われて、拓真はなんとなくキッチンの入り口に立っていた。
「寝てるから」
「ああ、海翔君大活躍だったものね」
 アサミが冷蔵庫からアイスのカップを二つ出してくる。
「ほら、小さいから食事の前でも食べられそう。部屋の冷蔵庫に入れて置いたら?」
 拓真は微笑して受け取った。
「ありがとうございます」
 結局部屋に戻った拓真は、アイスを冷凍庫に入れる。
 部屋に居たら何かをしてしまいそうで、出ていたのに・・・拓真は悩む。
 その時、寝室からドサッという大きな物音が聞こえた。
「海翔?」
 拓真はすぐに寝室に駆け寄る。
 ドアを開けると、ベッドの上に海翔は居ない。
「海翔!」
 血相を変えてベッドに近づくと、海翔は床の上に転がっていた。
「痛ーい・・・、落ちた」
「何してるんだよ、もう」
 心配したじゃないか、という腹立たしさでぶっきらぼうに拓真は言う。
 一瞬窓から誰か入ってきて・・・と変な想像をしてしまったのだ。
 海翔は体を起こし、
「もー、駄目なんだよ、ベット。落ちちゃうんだって。昨日が奇跡だから。今日の朝、起きて〝あっ、落ちてなかった〟って思ったもん」
「こんなに広いのに端で寝るからだろ」
「動いていったら落ちるじゃん。今日から拓真がこっちね。僕は壁側で寝るから」
 拓真は無表情になって、ベットを見る。
「拓真が居たら僕も床に落ちないよ」
 これで解決といわんばかりに海翔は清々しく言い、伸びをして鞄からTシャツを引っ張り出し着替えている。
「まあ、いいよ」
「うん。ねえ、なんでそんな深刻な顔するわけ? 一人で寝たい派?」
「・・・別に」
 拓真は素っ気なく言って目を逸らした。    
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