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【嫌じゃないのは拓真だけ】
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色々と話してしまいたい欲求に捕らわれた。
拓真は聞いてくれるだろう、と思った。
しかし、海翔は拓真の体温を感じながら夢の中に入っていく。
狭い一室で、小さいローテーブルに普段より多めの小皿が並ぶ。
金曜日は母が張り切って料理をする日だった。
それが嬉しくて、キッチンに立つ母の背中をじっと見ていた。
お兄さんが来る頻度は、だんだんと減っていった。
それでも母は、その日が来ると嬉しそうにキッチンに立つ。
海翔は母の事を邪魔しないように、いい子にしていた。
食べ終わり、皿洗いをしている母の後ろで、お兄さんの膝に座ってテレビを見ていた。
お兄さんは海翔の膝小僧をくすぐり、それはエスカレートしていく。
何だかよく分からないけど、気持ち悪いから嫌になった。
『やだよ』
と言ったのは何歳だっただろう。
海翔は思い出せない。
覚えているのは、お兄さんの怖い顔。
彼が全く家に寄りつかなくなったことで母が脆く崩れ去り、海翔は居ない存在となったこと。
施設に移る寸前で祖父母が自分を引き取ってくれたこと。
海翔が出て行った後、母はそのまま死んだ。
あの、お兄さんに言った『やだよ』がきっかけだったに違いないと海翔は今も思っている。
クーラーの効いた部屋で目覚めた。
拓真は海翔を腕の中に抱えたまま眠っていた。
海翔は拓真の寝息を聞きながら、彼の背に腕を回す。
体温が温かく心地よい。くっついていると安心できた。
「ねえ、今、何時かなあ・・・」
見える位置に時計がない。おそらく深夜だろうと海翔は思う。
明日、マコさんとアサミさんに謝らなければ、と考えた。
拓真が身動きし、ぎゅっと海翔を力強く抱きしめる。
「起きたの?」
本当は誰に触れられるのも嫌なはずなのに、むしろ安心できた。
自分にとって拓真は他の人と違うのだ、と海翔は気がついた。
「ちょっと・・・痛いよ」
腕の力が強く、体が痛い。
首筋に拓真の唇が触れ、海翔は緊張して体を硬くした。
拓真は聞いてくれるだろう、と思った。
しかし、海翔は拓真の体温を感じながら夢の中に入っていく。
狭い一室で、小さいローテーブルに普段より多めの小皿が並ぶ。
金曜日は母が張り切って料理をする日だった。
それが嬉しくて、キッチンに立つ母の背中をじっと見ていた。
お兄さんが来る頻度は、だんだんと減っていった。
それでも母は、その日が来ると嬉しそうにキッチンに立つ。
海翔は母の事を邪魔しないように、いい子にしていた。
食べ終わり、皿洗いをしている母の後ろで、お兄さんの膝に座ってテレビを見ていた。
お兄さんは海翔の膝小僧をくすぐり、それはエスカレートしていく。
何だかよく分からないけど、気持ち悪いから嫌になった。
『やだよ』
と言ったのは何歳だっただろう。
海翔は思い出せない。
覚えているのは、お兄さんの怖い顔。
彼が全く家に寄りつかなくなったことで母が脆く崩れ去り、海翔は居ない存在となったこと。
施設に移る寸前で祖父母が自分を引き取ってくれたこと。
海翔が出て行った後、母はそのまま死んだ。
あの、お兄さんに言った『やだよ』がきっかけだったに違いないと海翔は今も思っている。
クーラーの効いた部屋で目覚めた。
拓真は海翔を腕の中に抱えたまま眠っていた。
海翔は拓真の寝息を聞きながら、彼の背に腕を回す。
体温が温かく心地よい。くっついていると安心できた。
「ねえ、今、何時かなあ・・・」
見える位置に時計がない。おそらく深夜だろうと海翔は思う。
明日、マコさんとアサミさんに謝らなければ、と考えた。
拓真が身動きし、ぎゅっと海翔を力強く抱きしめる。
「起きたの?」
本当は誰に触れられるのも嫌なはずなのに、むしろ安心できた。
自分にとって拓真は他の人と違うのだ、と海翔は気がついた。
「ちょっと・・・痛いよ」
腕の力が強く、体が痛い。
首筋に拓真の唇が触れ、海翔は緊張して体を硬くした。
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