その無防備が誘ってるみたいで。でも僕らはギリギリでまだ友達。

zanka

文字の大きさ
24 / 36

【別れた女】

しおりを挟む
 ペンションに戻ると拓真はマコに手招きされる。
 一人になった海翔はキッチンに立つアサミを手伝いだした。
 やがて手を止めて海翔はアサミを見る。
「あの、さ」
「うん?」
「僕ら、そういう感じになるかもしれない」
 キスやそれ以上のことをしているのだから、付き合っていると言ってしまっていいのだろうか。しかし海翔は何故かそれが言えなかった。
「あら、いいじゃん。楽しそう!」
 軽い感じでアサミは返す。
「ああ、いいなあ。なつかしい、付き合いたての頃。ほんと楽しかった」
「二人は今でも楽しそうだよ?」
 恋人の距離感でソファに座る二人を思い浮かべ、海翔は言う。
「そりゃあ、楽しいよ。マコといつでも会えるんだもん。でもね、でも色々と出てくるのよ。長くなると。それでも大好きだけどね」
「そうなんだ」
「色々あっても一緒に居たいんだって。女が好きなんじゃなくて、マコが好きなんだから」
「なるほど」
 きゅっと唇を引き結んで、少し微笑んでアサミは黙った。
 海翔は黙って手際よく手伝っていく。
 ペンションの宿泊客のための食事だ。
 それにしてもマコさんは拓真と何をしているのだろう、と海翔は思う。
 いつもはテーブルの準備をしているのに、と。
        
「あれ、拓真は」
 二階から下りてきたマコに海翔が尋ねた。
 マコは困ったように笑って指で二階を指差す。
「海翔君、一緒にアイス食べない?」
 階段を登り始めた海翔に、アサミが声をかけた。
「じゃあ、拓真も呼んでくるね」
「ああっ」
 アサミが慌てたような声を出したので、海翔は振り返る。
 マコとアサミは二人並んできょとんとした顔の海翔を見たが、何も言えなかった。

 部屋のドアを開ける。
「拓真、アイス食べよ」
 アイスも好きだし拓真も好きだった。
 マコとアサミには何も隠すことがないし、四人でちょっと休憩するのは単純に楽しかった。 いつもまあまあな人生だったけど、こんなに楽しみな事ってあったけ?
 そんな事を思いながら、海翔は部屋の中を見回す。
 そこには拓真と見慣れない少女がいた。
「私は帰らない!」
「帰れ」
「嫌、だって別れてないもん」
「別れたよ。夏休みに入る前に」
「私はオッケーしてないもん、拓真が勝手に別れた気になってるんじゃん!」
 拓真は海翔に気がつき、顔色一つ変えず、
「ああ、ごめん。先に食べてて」
 と海翔に言う。
「え、うん…」
 海翔は呆然とそのまあまあな可愛らしさの少女を見ていたが、
「拓真の彼女?」
 と尋ねた。
「モトカノ」
 少女はちらっと海翔を見たが、何も言わず拓真の方に向き直る。
「絶対、別れない。絶対、別れないから! 電話も出てくれないし、酷いよ」
 少女は拓真に抱きつく。
 海翔は、思わず目を逸らして、足早に部屋を出た。
 階段を下りながら、つい独り言が出る。
「そっか…モトカノ…」

 拓真がどのようなサイクルで今までの彼女と付き合っていたのか知らない。
 ただ、拓真に抱きつく少女の姿が頭から離れなかった。
 長身の拓真の胸に飛び込んで離れない少女は、どう考えても可愛かった。
 そっか、あれが普通なんだ、と海翔はなにか考え込んでしまう。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。

溺愛系とまではいかないけど…過保護系カレシと言った方が 良いじゃねぇ? って親友に言われる僕のカレシさん

315 サイコ
BL
潔癖症で対人恐怖症の汐織は、一目惚れした1つ上の三波 道也に告白する。  が、案の定…  対人恐怖症と潔癖症が、災いして号泣した汐織を心配して手を貸そうとした三波の手を叩いてしまう。  そんな事が、あったのにも関わらず仮の恋人から本当の恋人までなるのだが…  三波もまた、汐織の対応をどうしたらいいのか、戸惑っていた。  そこに汐織の幼馴染みで、隣に住んでいる汐織の姉と付き合っていると言う戸室 久貴が、汐織の頭をポンポンしている場面に遭遇してしまう…   表紙のイラストは、Days AIさんで作らせていただきました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。

叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。 幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。 大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。 幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

姫ポジ幼馴染の貞操を全力で守っていたのに、いつの間にか立場が逆転して伸し掛かられた件

イセヤ レキ
BL
タイトル通りのお話しです。 ※全七話、完結済。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

処理中です...