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物語14ポチの治療
しおりを挟む今日は休日、朝から快晴で散歩日和だった。
大田さんがマル子ちゃんと一緒に来たのは朝八時だった。家のポチは何となく体の具合自体はそんなに変わらなかったが、顔の元気がない。まだ以前のてんかんを抱えているのだろうか?やはり心配だった。大田さんはポチのことを心配してきてくれた、彼は早速ポチの具合を聞いてくる。
「こんにちは、今日も天気が良くて、散歩にも気持ちが良いわ。でもポチがまだ元気がなくて」
「どんな風に元気がないの?」
そこで最近のポチに具合について話をした。
ポチは最近食べるときは食べるが、食べないときは一日でも食べない、下痢もする。だから体に力が入らないようだった。大田さんにその症状を聞いて貰った。
「それは心配だね。あの後後輩にも聞いたけど、犬も人間と同じでいろいろな病気にかかるらしいし、精神的な病気もあるみたいだよ。ポチは前に知り合いの医者に診せたけど、その時はストレスだと言っていた。でも食欲にムラがあるなら、:慢性型の伝染病か:慢性胃腸炎かも知れなかも知れない。慢性的な下痢をするようなら神経性の病気やアレルギー性に病気が考えられっるらしいけど。気長に治療を続けていけばそんなに心配はないと思うよ。そうだ、君はその方の知識はないから今度本をプレゼントするよ」とかなり詳しく教えてくれた。
「それと、これ」と言って薬の入った袋を呉れた。
「これは何?」
「ほら前に会って貰った後輩に貰ったんだけど、その後輩も、あれから心配してポチ用に薬を調合してくれたんだ。あのときポチを見て『たぶんこれで良いはず』と言って呉れた。きっとこれで元気になると思うよ」あたしはそのことが嬉しくて、仕方無かった。
犬も生き物だから様々な病気にもなるだろう。人間と同じだ。
それも元気のときもあるし、具合が悪く一日箱の中で寝ているときもある。まだ若いのでいずれは直るだろうと思ったが、やはり心配になる。
医者も新庄さんもちゃんと治療していれば良いと言う、でも人間みたいに保険がきかない。治療費は結構高いので、私の安時給ではとても困る。
小さな頃から可愛がってきた、お気に入りのポチだけに、私はとても心配だったし、重たい気持ちが心を占めていた。
早速大田さんが持ってきてくれた、ポチ用に調合してくれた薬を与えた。ポチは薬の意味が分かったのか、進んで粒状になった薬を食べていた。
「そうだ、僕もこんな良い天気の日は散歩していても気持ちが良いし、君も一日中家の中に居たのでは気も晴れないだろう。ポチも少し元気みたいだから、まず庭に出して、ポチが歩けるようなら水元公園に行かないか」私は重い気持ちだったので、気晴らしにでもと思いポチを抱っこして庭に出してみた。
そしたら薬が効いたのか、意外と元気そうだったので、大田さんとマル子ちゃんの四人で公園に散歩に出かけた。
水元公園には犬を放し飼いに出来る設備がある。ポチとマル子ちゃんを離し自由にして上げた。
そしたら二匹ともしばらくは、うろうろしていたが、そのうち元気に走り回って遊んでいるようだった。
「ほら、やはり動物たちは表で遊んだ方が元気になるんだ」大田さんが言ったようにポチとマル子ちゃんは、仲良く二匹で絡み合いながら遊んでいるように見えた。私もその姿にホットした。
空は青く高くまで澄み渡り、白い一筋の飛行機雲が流れていた。風も気持ちよくサラサラと吹き、木々や草のにおいが辺りを覆っている。
犬だけでなく、その場に居た私たちまでがノンビリと、ゆったりとした気持ちに成れた。
私はふと(この人は本当に良い人なんだわ)と思った。
「やはりこんな日には、公園に来た方がポチも喜ぶのね」
「そりゃそうさ、君なんか毎日とても忙しいだろ、お休みの日にはこんな風にノンビリした方が良いに決まっているさ」
私は暖かくなっていく日の光と大田さんの温かい心遣いにとても安心出来たし、普段感じたことがないような、安らげる気持ちになっていた。私はふと思った
「ねえマル子ちゃんはいつも元気なの?」ポチと一緒に遊んでいるマル子ちゃんの健康が心配になった。
「うん、マル子は以前胃潰瘍に罹り、薬とか手当をした。今は元気さ、その時にこうやって外で遊ばせると、良いと医者から教わったんだ。人間でも精神的に胃が痛くなる事って結構あるでしょ」
「もう何ともないの?」私は犬が胃潰瘍だなんて聞いてとても驚いた。胃潰瘍って人間の病気じゃないかと思って居たが大田さんの話では、胃潰瘍でもいろいろ症状があるようで、薬で完治する物もあれば、手術しなければならない物もあるらしい。
犬も人間と同じように様々な病気にかかるようだ。やはりこうして自由に遊ばせるのが健康にも良いらしい。
どのくらいそうしていただろう。日も傾き空が夕焼けでとても綺麗に橙色に染まってきた。私はこのまま帰りたくはなかったし、ポチたちも呼んでも来ない。大田さんが
「マル子、もう帰るよ」と言うのだがマル子ちゃんも、ちっとも帰りたくないらしかった。でも渋々彼に寄って来たしポチの戻ってきた。だから思い切って言ってみた
「ねえ、ポチもマル子ちゃんも仲良くしているから、ちょっとの間でも家でお茶でも飲んでいかない?そうすれば犬たちも気が晴れると思うけど?」
「えー?お邪魔して良いの?」
「うん、どうぞ」早速家に二人を連れて帰り、大田さんにお茶を出し、マル子ちゃんとポチには特別な缶詰のエサを遣った。
「ポチがこんなに元気になれたのも、あなたのお陰だわ」
「俺は何もしてないさ、でもポチが元気になって本当に良かった」大田さんは茶の間で私が出したお茶を飲みながら、新庄さんとポチに話しをしたと言っていたが、薬に話しは難しくて理解出来ない。私が返事に困っているのが解ったようで、「じゃあまた来るよ。薬は定期的に飲ませてね」と言って帰って行った。
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