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物語19
しおりを挟む最近葛飾区では空き巣ドロボーが多発しているらしかったし、若い女の子の下着ドロボーも噂されていた。だから警察でも広報車を出して、住民に注意の呼び掛けをして居た。でも私は仕事に追われ、今日も昼時は忙しかった。
皆懸命に働き、私もヘトヘトになるくらいだ。この間雇ったおじさんも、年の割にはよく働いてくれる。
休息時間が来たので、順番に休むがその間も客は来る。今日は少し暖かい日なので、冷やし中華もそろそろ人気だ。冷やし中華は麺を冷やす手間は居るのだが、スープは出来合いだし、作業自体は簡単だった。
やっと夕方の時間になり、バイトの娘も帰宅の支度を始めた。
「アレー?」一人アルバイトの娘が、声を上げた。また社長がロッカーの中を見たのかな?そう思っていたのだが?
「お給与の封筒が無い、あたしは此処に入れたんだけど」と言う。
「あんた!なんでお給与なんかそんな処に入れるの?」私は不用心な娘に呆れた。今までも社長からさんざん覗かれているし、下着の話も合った。
此処のお店ではロッカーを共同で使うので、鍵は掛かっていない。そんなところに下着や財布など入れておく人が不用心なのだ。
「で、いくら入っていたの?」
「今月のお給与全部です。あれがないと凄く困る!」半分泣き出しそうな顔をしているのだが、きっと何処か別な所に置いたのだろう。(でもきっと無くなったら困るだろうね?)私も心配になった。
「もっと良く考えて!、お給与を貰ったら、その封筒はどうしたの?」この時はまだこの子が何処かに、置き忘れているのだと思って居た。
「まずポッケに入れて?それからトイレに入り、そして此処のロッカーに入れたんです。間違いなく此処に入れました。」
「だいたい共同で使うロッカーに、大事な物入れるなんて、少し不用心すぎない?」どうしようかなと思った。でもこの店に人の物を取る人なんて居るわけがない。
「一応社長と相談して見るからね、でもあなたも良く探してみて、きっと何処かにしまい忘れているはず。」
まさか社長が下着は触っても、自分で払った給与には手を出さないだろう。さっそく電話して、相談する事にした。
「もしもし社長ですか?横井です。アルバイトの娘がロッカーの中に置いた、給与がなくなっていると言うのですが?そう封筒毎!どうします?警察を呼びますか。前の社長の問題も有るので、少しまずいと思いますが?」私は思わず深いため息をついてしまった。
社長は何かと言うと店の売り上げが上がらないことから、すべて私の責任と言い出す。余計な苦労はしたくない。
ただでさえ目が回るほど忙しい。(勘弁してよ!)そう心の中で呟いた。だいたいこんなに責任を押しつけられている割に、待遇が悪い。貰うのは時給だけ、今度何かあったら止めたいと思って居た。
結局はその事件は、女の子の不注意ということで、我慢して貰うしかなかったのだった。
ただその娘(中台敦子二三歳)、、親からアパート代など出して貰い、その月を過ごす羽目になった。親からは
「早く嫁にでも行かないから、中年になって独身のままならどうする?」と見合いを強制されたとか?
私も自分の財産管理は、しっかりとしなければならない。私には助けて呉れる親は、もう亡くなっている。親戚もお金の無心などしたら、いい顔しないだろう。
葬儀の時にはなんだかんだと言って居たが、そんな時に文句を言うだけ!親戚など当てに出来無い。
当然それからは「ロッカーには大切な物は入れない」と言う張り紙を張った。
でもそんな物貼る前に、自分で大切な物は、自分でしっかりと管理すべきだ。個人用ロッカーで無いのだから!社長が自分で遣ったことはこの際、棚に上げられた。
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