82 / 133
それぞれのクリスマス1
2
しおりを挟む—幸助side
俺・・・もう死にそうだ。
金もないし食い物もない。
あるのは・・・あの横浜の実家があった土地に残った離れだけ。
家と土地を売って大金を手に入れられると思ったが・・・・親父とお袋が全ての権利を和也に託し、親父の会社とも縁を切られ、今後一切かかわらないようにと通告された。
親父は結局、血が繋がっている和也の方が可愛い。
きっと・・・そういう事だ。
全てを失った俺は、もう行くところもなく・・・和也に言ったんだ。
『せめて、元町の家の離れにいさせてくれ』と・・・・。
和也はそんな俺に
『自首して全てを自供してくれ』
と言って来たんだ。
何を言ってるんだ・・・コイツは。
何様なんだ???
でも俺は、何も悪い事はしていないし、全ては美晴とあの男が・・・俺を苦しめただけ。
和也にそう言っても聞いてはくれなかった。
そして何度か和也が家に来て施設に連れて行こうとしたが、和也に頭を下げ・・・気持ちを入れ替えて頑張るから許してくれと泣いて頼んだ。
流石の和也もそれには少し揺れた様で・・・少しだけ金を置いて帰って行った。
でも・・・・もうその金も尽きそうだ。
『もしもし・・・?』
俺は自宅近くにある数少ない公衆電話から和也に電話をかけた。
すると、和也の声は・・・冷たく低い声で・・・今まで聞いた事もない声。
「あ、・・・和也???元気???」
一応気を使って話してみる・・・が・・・。
『兄貴ごめん、今仕事中だから・・・』
待ってくれ・・・そんな事を言わないでくれ・・・。
「10万で良いから振り込んでもらえないか?もう・・・何もないんだ・・・。食い物もないし飲み物もない・・・・頼むよ・・・・」
すがる思いだった。
俺は公衆電話にしがみ付きイライラする気持ちを抑えて、
「和也頼む・・・仕事も見つけるから・・・。それまでの生活費で少し振り込んでくれ・・・・。一生のお願いだよ・・・。」
俺がそう言うと・・和也は電話の向こうで、
『兄貴・・・お袋や親父に会いに行ってる?』
と・・・・そんな事を言ってきた。
・・・・・・。
今その話はしてねぇだろッ!!と・・・無性にイライラした。
「和也・・・そこに行く金すらねぇんだ。頼むから金を・・・」
俺がそう言うと、
『兄貴にはもう随分金を払ってる、兄弟だから助けてやりたい気持ちはあるけど・・・親父やお袋に対し少しでも気持ちがあるならちゃんと会いに行けよ・・・。まずは仕事を探して・・・・。』
・・・・・・ッ?!
「だからその金すらねぇって言ってんだろッ?!取り敢えず金を振り込んでくれッ!!電話だって止まってるからこうやってわざわざ公衆電話まで来てるんだ!食い物もねぇし、俺が餓死したらお前のせいだと書置きしてやるからな!!」
まだ・・・こんな声を出す力があったんだって思った。
—和也side
定時になる少し前に・・・・兄貴から会社に電話が掛かってきた。
あの事件以来、俺は何度も兄貴に自首するように言った・・・が、兄貴は動かない。
はぁぁ・・・・。
親父に会いに行ったら、今まではあの元町の土地と家、親父の会社の権利は俺と兄貴に半分ずつあったと言われたんだ。
しかし、こうなった以上兄貴には渡せないから全ての権利を俺に託すとそう言われた。
親父の会社は全てを他の人に任せているから、安心。
だけどあの家の土地は・・・俺の子供の頃からの思い出の場所。
だから・・・・大事にしたい。
電話を切ってため息をつくと、電話を引き継いでくれた大聖が俺の方に走ってきて
「和也さん・・・電話・・・すいませんでした!!」
そう言って頭を下げてきた。
龍が記憶がなくなったあの事件のすぐ後、兄貴はすぐに逮捕されたが・・・お袋が全てを自供し全て自分がやったと兄貴の罪を被ったんだ。
そして兄貴は逮捕を逃れ、あの家にいる。
湊は兄貴からの電話を俺に繋がないよう皆に言ってくれた。
が・・・、これは俺の家の問題。
若いスタッフ達に迷惑を掛けて本当に申し訳ないと思う・・・。
俺は大聖の頭をグリッと撫で、
「大聖、ごめんな?なんか変なこと言われなかった???」
俺が言うと大聖は少しほっとした顔をして・・・・。
「いえ・・・。少し強く・・・和也さんに代われって言われただけで・・・・大丈夫でしたか?」
「あぁ、・・・大丈夫だよ。今度飯おごるからさ・・・許して???」
本当に・・・申し訳ないってそう思う・・・・。
兄貴に金を渡すのもどうかと思うが、デスクに戻ってPCからネットバンクの画面を開いた。
これで兄貴に野たれ死なれても困るし・・・・。
一旦兄貴に言われた10万を振り込み、
「はぁ・・・。」
と、ため息。
翌日
今日で仕事納めかー・・・・。
昨夜は夏樹が待つホテルに戻り、一緒に過ごして俺は朝から仕事。
夏樹は・・・今日は買い物をして、昼から実家に行くと言って朝は一緒にホテルを出て・・・銀座のカフェでお茶をしてから買い物をするって言ってた。
夏樹は・・・やっぱり一緒にいて楽しくて、気持ちが安らぐ。
会社についてすぐに夏樹からラインが来て、銀座のサンドイッチが有名な喫茶店に行ったらしく、1人でどでかいサンドイッチをほおばってる写真を送って来てくれた。
可愛い・・・・・。
俺は朝から2時間の対応を済ませ、午後は胡桃さんの予約1件で終わり。
皆の報告書を確認していると、プルルルルルッ・・・とデスクの電話が鳴って、
「はい、和也です!」
と、電話に出ると・・・。
『胡桃様がご到着したぞ』
と、電話の相手は祐司。
あ・・・・、もうそんな時間か!!!
まずいまずい・・・。
「あ!!すぐ行きますッ・・・・」
電話を切って・・・あ、携帯はちゃんと置いて行かないとな・・・。
デスクの引き出しに自分の携帯をしまい、ネクタイを締め直しオフィスのお客様フロアと繋がっている扉を開け・・・向こう側へ・・・・。
すると綺麗に髪を内巻きに巻いた胡桃さんがソファーに腰掛けていて俺の方を見て笑った。
「胡桃さんこんにちは、お待たせしちゃってごめんね・・・・。」
俺がそう言うと胡桃さんは立ち上がって、
「ううん・・・逢えてよかった・・・」
そう言って直ぐに俺の腕に絡みついてきて嬉しそうに胸に顔を付けてきた。
最近、胡桃さんが・・・ちょっと本気っぽく見えるのはー・・・俺だけ?
祐司から鍵を受け取って、
「2時間・・・」
そう言われ胡桃さんの肩を抱くと、胡桃さんはニッコリ笑って俺の腰に抱き付いて
「クリスマスに和也君に逢えるなんて幸せだなぁ・・・」
そう言った。
「ありがとう・・・」
そう言って、祐司と目で合図をし奥の扉を開けて客室の廊下を歩いた・・・・。
2人っきりになると、胡桃さんは更に俺にギューッとくっ付いてきて
「ねぇ、和也君・・・今夜はあの電話の女の子とデート?」
夏樹はもう彼女だから隠す必要はないんだけど・・・・プライベートの話をするのは・・・少し気が引ける。
俺は胡桃さんの肩を抱き・・・エレベーターの前に行くとボタンを押して、
「それは胡桃さんの想像に任せるよ」
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
マッチ率100%の二人だが、君は彼女で私は彼だった
naomikoryo
恋愛
【♪♪♪第19回恋愛小説大賞 参加作品♪♪♪ 本編開始しました!!】【♪♪ 毎日、朝5時・昼12時・夕17時 更新予定 ♪♪ 応援、投票よろしくお願いします(^^) ♪♪】
出会いサイトで“理想の異性”を演じた二人。
マッチ率100%の会話は、マッチアプリだけで一か月続いていく。
会ったことも、声を聞いたこともないのに、心だけが先に近づいてしまった。
――でも、君は彼女で、私は彼だった。
嘘から始まったのに、気持ちだけは嘘じゃなかった。
百貨店の喧騒と休憩室の静けさの中で、すれ違いはやがて現実になる。
“会う”じゃなく、“見つける”恋の行方を、あなたも覗いてみませんか。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる