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命の重さ
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しおりを挟む—和也side
夜中の2時過ぎ。
俺も夏樹も中々寝付けず、ベッドに横になったまま波の音を聞いていた。
夏樹は昼間の出来事について何も追及してこないし、俺を攻める事もしてこない。
でも・・・その方がキツイ。
何か聞かれて、怒られた方がましだった。
夏樹は昨夜と何も変わらない。
俺にギュッと抱き付いて・・・・
「落ち着くね・・・・・・」
そう言った。
俺も夏樹の髪を撫でて、
「なー・・・・、ずっとこうやっていたいね・・・・」
それは・・・本音。
忙しく働くのも好きだけど、夏樹に逢うとそういう気持ちが・・・・薄れてしまう俺。
この休暇が終わったら夏樹はハワイに戻って、俺は東京に戻る。
世にそんな恋人同士って、俺ら以外にも沢山居るはず。
でも・・・・離れないでずっとこうして一緒にいたいなって・・・今日は特に、強く思う。
ギュっと夏樹を強く抱き締めると、・・・・ぶーーー・・・・ぶーーーーっと、ベッド脇に置いてある携帯が鳴り出した。
俺は手を伸ばし・・・
「誰だろう・・・・・」
画面を見ると、・・・・・・健二からの電話。
夏樹は体を起こし、
「何かあったんじゃない?」
直ぐに通話を押し、
「健二、どうした?」
そう言うと・・・・電話の向こうではバタバタと慌ただしい音と・・・・、
「和也さん!!すいません、・・・・胡桃さんがっ・・・・風呂場で手首を・・・・・」
泣いている・・・健二の声だった。
慌てて着替え・・・・夏樹も一緒に部屋を出た。
ホテルのロビーに行くと、救急車が到着した所で健二が泣きながらタンカーに乗っている胡桃さんにすがるようにしているのが見えた。
「健二!!!・・・・胡桃さんはっ?」
俺が健二の腕を掴み言うと、
「ごめんなさい・・・和也さん・・・俺っ・・・・・」
胡桃さんは応急処置をされているが・・・顔面蒼白。
「健二、大丈夫だ・・・・俺も直ぐに行くから・・・・大丈夫・・・・大丈夫・・・・・」
そう言うと、健二は何度も頷いて・・・・胡桃さんに付き添い救急車に。
「夏樹・・・ごめん、夏樹は部屋に戻ってて・・・俺は・・・・」
・・・・・・・・。
俺のすぐ後ろにいた夏樹は、ビックリした顔をして・・・両手で口を抑え呆然としていた。
「夏樹・・・?」
肩を撫でると、夏樹は手を震わせ・・・・
「私・・・・・私のせい・・・・」
そう言った。
—夏樹side
凄く・・・怖かった。
目の前で、あんな人を・・・見た事が無かった。
血だらけで、真っ青な顔で・・・救急隊の人に声を掛けられながら運ばれていく・・・胡桃さん。
健二君は泣きながら一緒に救急車に乗り・・・和也君が私の目の前で何かを言っていたけど・・・全く何も聞こえない。
私が・・・私が居るからきっと、胡桃さんは・・・・自分で・・・・。
私のせいで・・・。
そう思うと息も出来ない。
「夏樹!!!・・・・夏樹違う、夏樹のせいじゃない・・・・」
・・・・・・・・・。
やっと私の耳に和也君の声が届き、和也君を見ると・・・和也君は私の頬を優しく撫で
「夏樹ごめんな・・・本当にごめん・・・・・」
和也君は悪くない。
胡桃さんも・・・・きっと悪くないの。
—拓海side
早紀と部屋で休んでいたら、ホテルの外で救急車が到着。
嫌な予感がして直ぐに起き、上着を着て外に出ると
「拓海・・・・・多分・・・胡桃さんが運ばれたっぽい!!」
隣の部屋から出てきたのは仁。
えっ?!
仁は着替えをし、入り口で幸ちゃんにチュッとキスをして部屋を出てきた・・・・。
「俺・・・ちょっと気になるから行ってくる。お前どうする?」
・・・・・・・・・。
「あ・・・・俺も行く!!」
振り返ったが・・・早紀ちゃんは・・・爆睡。
後でラインしておこう。
俺と仁は、慌ててホテルのロビーに降りた。
—和也side
俺と夏樹は沖縄市にある総合病院に向かった。
車を降り夜間口から中に入って・・・救急の入口まで行くと、そこには手や服が真っ赤に染まった・・・健二が泣きながら項垂れて座っていた。
「健二・・・・・・」
直ぐに健二の傍に行き頭を抱き寄せると、健二は子供のようにまた泣き出して・・・・俺の腰にしがみ付いてきた。
「俺・・・寝ちゃってっ・・でも・・・多分、睡眠導入剤入れられてたっぽいんです・・・で、気付かなくて・・・起きたら・・・胡桃さんが見当たらなくて・・・・・」
胡桃さん・・・・・。
健二は目を擦って、呼吸を落ち着かせながら、
「あと・・・俺、気付かなかったんですけど・・・救急隊の人が・・・脱衣所に手紙があったって・・・」
そう言って俺に渡してきた・・・ホテルのマークが入っている白い便せん。
俺は黙ってその便箋を・・・開いた。
・・・・・・・・。
『健二君、和也君、そして・・・・夏樹さん。他、皆様。
本当にご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。
和也君の事、本当に大好きだった。
でも、それは貴方にとって迷惑でしかないよね・・・・・。
もう私は貴方の前に現れないし、迷惑もかけません。
さようなら。』
涼と淳もすぐに来てくれて、地元警察も直ぐに俺等の元にやって来た。
警察は涼と淳の元に行き・・・・。
「今、ホテルの部屋を調べましたが事件性はない様です」
そう言った。
俺と健二も顔を上げ涼と淳の方をジッと見つめた。
すると・・・・・、
「先ほどご家族に連絡をしましたが・・・・もう離婚が先月成立していて、彼女には3億弱の借金があったようです。今回の自殺行為は・・・・借金の事を考えて追い込まれてしまったのではと・・・・・」
え・・・・・・。
離婚?!
すると健二は立ち上がって、
「嘘だ・・・・・だって、胡桃さんもうすぐ離婚するって・・・・」
胡桃さんは、先月もう離婚が成立していた。
胡桃さんのご主人。
本条正樹は個人事務所で、その代表は・・・胡桃さんだった。
ここ最近、ライブツアーをしても赤字。
CDも全く売れず事務所には借金ばかりが残った。
そして、離婚が成立した時・・・その借金を折半することになり、胡桃さんには3億弱の借金が残った。
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