転生して竜の親になりました~でも、スライムなんですけど?!~

桜月雪兎

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竜親、町興し編

五十七話、作戦決行②

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 偵察部隊長side

 私はリザードマンの諜報部隊をまとめる者。基本的に魔物・魔族には名がないので諜報部隊長と呼ばれている。
 現在、長の甥っ子であるあの問題児のおかげで我らリザードマンは危うい立場にある。
 まったく、余計なことをしてくれる。
 まぁ、それは私たち諜報部隊の働きで取り返そう。長もそれを望んでいる。それにこの合同部隊の総大将となったスライムはどう考えても特殊固体だ。
 まず、スライムが意志を持ち、あれほどの先を見通して話すなど出来ない。話すことさえな。
 どのような種族でも『特殊固体』は別格なんだ。無知は困る。これであのスライムが好戦的であったらと思うと悪寒が走る。
 私たちはダークエルフがいるである場所に向かって走っている。
 今回の標的であるダークエルフの行動に違和感はある。戦闘を好む種族とはいえ、ここまでの侵略はしてこなかった。向こうがしようと思えばできた可能性があってもだ。
 向こうもこっちに向かっているのですぐに出会うだろう。
「部隊長」
「ああ、近いな」
「そこの岩場で確認しましょう」
「そうだな」
 そんな話をしていたら複数の熱源を感知した。
 私たちリザードマンに備わる固有スキル『熱感知』だ。
 熱と数人が持っている『魔力感知』で確認したがざっと数えても2万人以上はいる。
 多いなぁ、これは異常だぞ、この森の水準から言っても5部族以上はいるぞ。
「部隊長!」
「落ち着け。よく魔力を感知するとダークエルフとは違った魔力を感じる」
「確かに。数にして3人ですね」
「ああ」
 この世のすべてのモノに魔力があり、その魔力にも固有の魔力がある。
 大体はその魔力を基準としているので同じ種族・ダークエルフと考えていいだろう。
 それ以外の魔力を感じる。これはあのスライムの言った通りなのか?それとも共闘か?それにしては数が極端に少ない。
 私たちはスキル『隠密』を使って、ぎりぎりのところまで近づいた。
 そこで聞こえてきた話・見てしまった光景に私たちは驚いた。
「おい!早く次の町を落としにいかねーか!!」
「……休息は必要だ」
「口答えするな!」
「っっ!!」
「部隊長!!」
「ッッ……だい、じょうぶだ。明日には落としに行く。ここまでの進軍で兵が疲弊している。これでは勝てるものも勝てない」
「ああ?!」
「落ち着きなさいよ。大丈夫、こいつらは私たちを裏切れないもの」
「そうそう、こっちにはこいつらがいるんだからな」
「今日はもう休ませてあげる。でも、明日には進むのよ、さもないと」
「っ!や、やめろ!!分かっている……明日には進軍する」
「ふふ、分かればいいのよ」
 そこにいたのは人間だった。
 そいつらが持っている片手に収まるほどの球体の中に数人のダークエルフの子供がいた。
 つまり人間たちはダークエルフの子供を人質にこの大量殺戮を行わせているのだろう。しかも、無理矢理に。
 なんて外道な!
 このまま、攻撃部隊がダークエルフと衝突してはいけない。
 私たちはそのまま、あのスライムがいる総合部隊に向かった。
 向かっているさなか、部下たちは不安をあらわにしていた。
 無理もない、どう考えても泥沼の戦場になりかねない。
 それでも私はあのスライムなら突破口を築いてくれる気がした。
 あの集まりの中で全てをまとめていたあのスライムなら。
「部隊長、どうすれば」
「総大将に連絡するのだ」
「あのスライムに?!」
「あれは特殊固体、私たちより知恵が回りそうだ。それに我らの立場を守っているのはそのスライムだぞ」
「「「…………」」」
「わからんか?」
「分かりかねます」
「あのバカが私たちの立場を悪くした。だが、取りまとめていたあのスライムが『自分は』気にしないと言ったことでとりあえず公に避難されることはなかった。それに我らにこの役目をくれたのはここで成果を出せば皆が認めてくれるからだ。それだけの知恵が回るんだ、あのスライムは」
「「「ッッ!!」」」
「分かったら走れ!早急にこの情報をもたらすのが私たちの仕事だ!!」
「「「はっ!!」」」
 私たちは走った。
 夜が明ければダークエルフたちは歩を進める。
 それまでに策を考え、すべてを配置する必要があるのだ。
 この情報こそが多くの者を救う一石になるのだ。

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