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第一章
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カイルが頷いたのを見届けると、国王は新たな話を始めた。
「ふむ。さて、本来ならこれで終いだが、今回ばかりはそうもいかん」
「国王様?」
「「「「「?」」」」」
「「「っ!」」」
「「………………」」
国王の言葉に大半が首を傾げたが、元クリムゾン伯爵家使用人たちはビクッとなり、オリバーとナタリーは覚悟した。
「今回のことで明るみになったクリムゾン伯爵家の件が残る。アルバ・クリムゾンが自白した両親と弟殺しだが、それを罰するには当時のアルバ・クリムゾンの精神状態や環境により情状酌量の余地がありすぎる。しかし、その環境と精神状態にした者を裁く必要はある」
「「「っっっ!!!」」」
「元クリムゾン伯爵家使用人たちよ!いくら年月が経っていようともそなたたちが行ったのは許されざる罪であり、職務放棄である!15年の強制労働を言い渡す!」
「「「そ、そんな!」」」
15年の強制労働を言い渡された使用人たちは崩れ落ちた。
カイルも今回ばかりは何とも言えなかった。
調べた際に別の角度からも見るようにしなくてはと反省した。
国王はアルバを支えながら暗い顔をしているオリバーとナタリーに気付いた。
二人は不当解雇された証拠もあるのでそれを罪に問うことは出来ない。
「しかし、オリバーとナタリーは不当解雇により側にいれなかったと本人たちも罪悪感と後悔をしている。ゆえに今後はしっかりとアルバ・クリムゾンを支えよ」
「「っっっ!!!……ありがとうございます、国王様」」
オリバーとナタリーは国王の判断に感謝した。
そして、いまだに泣き続けるアルバを抱き締めた。
「これにて裁判は終了とする!罪人たちを連れて行け!!」
「いやーー!はなして!」
「なんで、なんで、こんなことに……」
「私たちは」
「ただ、証言を」
「こんなのって、ないわよ!」
国王の命令で罪人たちは連れ出された。
国王と王妃も退出し、見物客たちもいなくなり、そこにはアルバとオリバーとナタリーにランドロールとヴァルファス公爵家が残っていた。
やっと落ち着いたアルバはある物のことを思いだし、ランドロールに声をかけた。
「……ランドロール、あれを」
「はい…………カイル・ヴァルファス公爵令息様、これをお受け取りください」
「なんだこれは?」
「これはマリア奥様の形見です」
「アイリス嬢の母上の?」
ランドロールがカイルに手渡したのはアルバに保管しておくように言われた箱だ。
それを開けると中には色とりどりの装飾品があった。
「はい。サマンサ様とアイリーンお嬢様に取られないように私がアルバ様のご命令で保管しておりました。どうか、アイリスお嬢様にお渡しください」
「分かった」
「ありがとうございます」
「これからどうする気だ」
カイルは何気なく尋ねた。
そんなカイルを見て、ランドロールは少し考えると苦笑しながら答えた。
「私たちはクリムゾン伯爵家に戻ります。国王様の恩情に報いませんと」
「そうか」
「…………あの方と13年一緒にいました。だけど、あの方はこれがないと本音の1つも言ってくださらないのです…………情けないですよね。1番近くにいてもですよ。あの方が生まれ直すなら今度は私たちが支えなくては」
「……………」
アルバだけではなく、ランドロールも憑き物が落ちたように穏やかだった。
自身に今だ刻まれている隷属魔法を指差しながら、困ったように笑った。
カイルは何も言えなかった。
言う言葉が見つからなかった。
絶対に裏切れない状態でなければ誰も信頼できないなど考えたこともなかったのだ。
そんなカイルにランドロールは頭を下げた。
「なので、アイリスお嬢様のこと、よろしくお願いいたします。あの方々はやっと前へ進めるのですから」
「…………そうだな」
「ええ」
ランドロールはもう一度、ヴァルファス公爵家に向かって頭を下げた。
それを離れたところからオリバーとナタリーも見ており、頭を下げた。
3人はアルバを支えながら退出した。
出る間際にアルバも頭を下げた。
「アイリスのこと、よろしくお願いいたします…………幸せにしてやってください」
「ああ」
「分かったよ」
「ありがとうございます」
こうしてアルバたちはクリムゾン伯爵家に戻った。
生まれ変わったようにクリムゾン伯爵家を切り盛りするアルバの姿があった。
その側には常に執事のオリバーと侍女長のナタリーに護衛のランドロールがいた。
ランドロールの左胸には隷属魔法の紋章はなくなっていた。
「ふむ。さて、本来ならこれで終いだが、今回ばかりはそうもいかん」
「国王様?」
「「「「「?」」」」」
「「「っ!」」」
「「………………」」
国王の言葉に大半が首を傾げたが、元クリムゾン伯爵家使用人たちはビクッとなり、オリバーとナタリーは覚悟した。
「今回のことで明るみになったクリムゾン伯爵家の件が残る。アルバ・クリムゾンが自白した両親と弟殺しだが、それを罰するには当時のアルバ・クリムゾンの精神状態や環境により情状酌量の余地がありすぎる。しかし、その環境と精神状態にした者を裁く必要はある」
「「「っっっ!!!」」」
「元クリムゾン伯爵家使用人たちよ!いくら年月が経っていようともそなたたちが行ったのは許されざる罪であり、職務放棄である!15年の強制労働を言い渡す!」
「「「そ、そんな!」」」
15年の強制労働を言い渡された使用人たちは崩れ落ちた。
カイルも今回ばかりは何とも言えなかった。
調べた際に別の角度からも見るようにしなくてはと反省した。
国王はアルバを支えながら暗い顔をしているオリバーとナタリーに気付いた。
二人は不当解雇された証拠もあるのでそれを罪に問うことは出来ない。
「しかし、オリバーとナタリーは不当解雇により側にいれなかったと本人たちも罪悪感と後悔をしている。ゆえに今後はしっかりとアルバ・クリムゾンを支えよ」
「「っっっ!!!……ありがとうございます、国王様」」
オリバーとナタリーは国王の判断に感謝した。
そして、いまだに泣き続けるアルバを抱き締めた。
「これにて裁判は終了とする!罪人たちを連れて行け!!」
「いやーー!はなして!」
「なんで、なんで、こんなことに……」
「私たちは」
「ただ、証言を」
「こんなのって、ないわよ!」
国王の命令で罪人たちは連れ出された。
国王と王妃も退出し、見物客たちもいなくなり、そこにはアルバとオリバーとナタリーにランドロールとヴァルファス公爵家が残っていた。
やっと落ち着いたアルバはある物のことを思いだし、ランドロールに声をかけた。
「……ランドロール、あれを」
「はい…………カイル・ヴァルファス公爵令息様、これをお受け取りください」
「なんだこれは?」
「これはマリア奥様の形見です」
「アイリス嬢の母上の?」
ランドロールがカイルに手渡したのはアルバに保管しておくように言われた箱だ。
それを開けると中には色とりどりの装飾品があった。
「はい。サマンサ様とアイリーンお嬢様に取られないように私がアルバ様のご命令で保管しておりました。どうか、アイリスお嬢様にお渡しください」
「分かった」
「ありがとうございます」
「これからどうする気だ」
カイルは何気なく尋ねた。
そんなカイルを見て、ランドロールは少し考えると苦笑しながら答えた。
「私たちはクリムゾン伯爵家に戻ります。国王様の恩情に報いませんと」
「そうか」
「…………あの方と13年一緒にいました。だけど、あの方はこれがないと本音の1つも言ってくださらないのです…………情けないですよね。1番近くにいてもですよ。あの方が生まれ直すなら今度は私たちが支えなくては」
「……………」
アルバだけではなく、ランドロールも憑き物が落ちたように穏やかだった。
自身に今だ刻まれている隷属魔法を指差しながら、困ったように笑った。
カイルは何も言えなかった。
言う言葉が見つからなかった。
絶対に裏切れない状態でなければ誰も信頼できないなど考えたこともなかったのだ。
そんなカイルにランドロールは頭を下げた。
「なので、アイリスお嬢様のこと、よろしくお願いいたします。あの方々はやっと前へ進めるのですから」
「…………そうだな」
「ええ」
ランドロールはもう一度、ヴァルファス公爵家に向かって頭を下げた。
それを離れたところからオリバーとナタリーも見ており、頭を下げた。
3人はアルバを支えながら退出した。
出る間際にアルバも頭を下げた。
「アイリスのこと、よろしくお願いいたします…………幸せにしてやってください」
「ああ」
「分かったよ」
「ありがとうございます」
こうしてアルバたちはクリムゾン伯爵家に戻った。
生まれ変わったようにクリムゾン伯爵家を切り盛りするアルバの姿があった。
その側には常に執事のオリバーと侍女長のナタリーに護衛のランドロールがいた。
ランドロールの左胸には隷属魔法の紋章はなくなっていた。
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