家族と婚約者に冷遇された令嬢は……でした

桜月雪兎

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フォルクスは可愛いですね、落ち着きますわ。

現実逃避は駄目ですね、すみません。
ですが、これで分かりました。
私はアバント伯爵令嬢であると同時にドラゴニス王国の王族に属すのですね。

正直に申しますといつまでもアバント伯爵家にいるのは耐えられません。
ですが、フォルクスを置いていくのは出来ません。

今回の王命違反は第一王子様ですが、相手はサリフィア様なので何処まで私やフォルクスに火の粉が降りかかるか分かりません。
それにフォルクスは今後、学園にも通わなくてはいけないので来年には卒業する私ではフォルクスを守れません。
なんて事をしてくださったのでしょうね、本当に。

「国王陛下、私はこのような場で婚約破棄をされました。いえ、国王陛下の配慮で白紙に戻りましたが、どのようになりますか?」
「ふむ。このような場での宣言でなくワシに訴えとして上がれば別の王子と再婚約という道をとったのだが」
「これだけ大きな場での宣言では極めて難しいですわね」
「ああ、その通りだ。それに我が国はエリアンティーヌ嬢の母君であるマリリン夫人を死なせてしまった件もある。ドラゴニス王国との衝突も免れないだろう」
「マリリン夫人とは仲良く出来ると思っていましたのに」

王妃陛下が悲しそうに言われています。
王妃陛下としてはお母様と仲良くなりたかったのかもしれません。

王妃陛下は率先して私の王子妃としての教育を自らしてくださいました。
それに何かと気にかけてもくださいました。
ですが、私はどうも第一王子様の事が好きになれませんでしたからそこは申し訳なく思っていました。
それでもアイザック様やフレデリック様のお話もしましたので困ることはなかったのですが。

アイザック様やフレデリック様のお話をする際は子供を心配するお母様という感じでしたし、私の事も心配してくださるので少々照れてしまいますけど、嬉しかったのです。

「お母様はご自身で商会を経営していましたが、何も知らない私が継いでも問題ないようにしてくださっていました」
「ええ、マリリン夫人はエリアンティーヌ嬢を本当に愛していましたわ。ご自身の事よりエリアンティーヌ嬢が困らないように常に準備をされていましたのよ。もっと頼ってくだされば良いのに嫁いだ者の務めだと1人で頑張っていました。その度に心苦しかったのです。私がアバント伯爵に注意しようとすると何度もマリリン夫人が止めるのです、ご自身の矜持が許さないと」
「お母様の矜持ですか?」
「ええ。もしかしたら半分ぐらいは意地だったのかもしれませんが」
「…………そうですね。お母様、弱い所を見せる事や弱音を吐く事が苦手だったのだと思います。いつでも笑顔でした……それしか見せてくれませんでした」
「私たちもです」

やはりですね。
お母様は優しく強い方でしたが、甘えることが出来なかったのですね。
アバント伯爵家しか嫁げなかったのなら何故次に持ち越さなかったのでしょうか?

勿論、そうなれば私は産まれてませんし、違う存在になっていたでしょう。
ですが、無理に推し進める必要があったのでしょうか?

私が疑問に思っているとすまなさそうにマンサール様が説明してくださいました。

「それに関してはドラゴニスにも事情があったのです。こちらで採掘される鉱石の取引が早急に必要になったのです。ですが、我が国王陛下もマリリン様をそれで急ぎ嫁がせるつもりはなかったのですが、マリリン様が独断で話を進めてしまって」
「お母様……」
「気概も行動力も良い方だった。少々暴走する所もあったようだが、それは一重に母国や国民や領民のためであった」
「ええ、ですから、私は馬鹿息子より信頼していたのです」
「「「お、お祖父様?!」」」
 
何と貴族の方々の輪の中からお祖父様が現れました。
その横には耳を引っ張られた現アバント伯爵と伯爵を心配するようにナディア様がやって来ました。

お祖父様は普段、アバント伯爵の代わりに領地経営をしていますのでこの王都にいないのですが、どうされたのでしょうか?
サリフィア様は青ざめています。

サリフィア様は会えばいつもお説教をするお祖父様が苦手です。
仕方ないですよね、サリフィア様が勉強もマナーもサボっているのですから。

「先代アバント伯爵」
「国王陛下、お久しぶりにございます。陛下より託されました、マリリン様をあのような結果にしてしまい、本当に申し訳ありませんでした」
「ランドール・アバント先代伯爵よ。それをここで言ってもどうにもならん」
「ええ、分かっております。我が愚息が何度説明しても理解せず、勝手なことをしましたのは監督不行き届です。あれほど、マリリン様は隣国の王家の方なので丁重かつ大事にするように言い聞かせていたのに私が領地経営のためにいなくなるとすぐにサボったようだな。サリフィアはそんなお前にそっくりだ。伯爵としての仕事もせず、マリリン様やエリアンティーヌを無体にするなど許されるはずがないだろ!ましてやまだ子供のフォルクスに当主教育をするなどあり得ない!しかもお前自身では出来ないために他者を頼ってするなどあり得ん!」
「何故、父上がそれを……」

フォルクスへの対応は私がお祖父様に知らせました。
あまりにもひどいと思ったのです。
それも教鞭をとる相手はアバント伯爵程ではないですが、当主としての役目をしっかりと理解していない方でした。

ただ恐怖を植え付けて傀儡のようにして、我がアバント伯爵領の税などを搾取しようと考えているような方でした。
なので、私はフォルクスを勉強会などに連れ出したのです。

フレデリック様との剣の稽古で心身ともに強くなっていくフォルクスはその教鞭をとる相手を言い負かし、追い出しました。
それに勉強会で呼ばれる先生の方が経験豊かですし、領地経営の事も教えてくれます。
なので、こちらの方がフォルクスのためになったのです。

話が少々それました。

「お前が仕出かしたことをしっかりと相手方に謝るのだ。マンサール卿にもエリアンティーヌにも無体を強いたフォルクスにも、ご迷惑をおかけしている王家の方々にもだ」
「ち、父上」
「お前たちのせいでどれだけマリリン様がご苦労されたか!お前にとっては気の進めぬ結婚だったと言いたいのだろうがそれはマリリン様も同じだ!マリリン様は母国の国民のために身分を偽ってまで嫁いでくださったというのに!ご迷惑やご苦労をおかけしおって!だいたい、マリリン様の許可があったからこそ、ナディアとの結婚も許したというのに!」
「「「「え?」」」」

それは初耳です。
お母様がナディア様とアバント伯爵の結婚を許したのですか?
何故でしょう?
お母様は何を考えていたのでしょうか?

さすがにこれはよく分かりません。
想像もつきません。









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