兄弟の絆を紡ぐVRMMO記

桜月雪兎

文字の大きさ
1 / 10

1、兄と弟の気持ち

しおりを挟む
 VRMMO技術が発達したこの日本で『インフィニティ』と言うVRMMOゲームのオープンβベータが終了し、正式オープンした。
 このゲームのうりは一部を現実リアルとリンクさせたことだ。
 引き篭もりが社会問題になったこの日本においてこれは国が決めた救済システムだ。
 この『インフィニティ』の世界をもう一つの現実リアルとすることだ。
 現実のお金と『インフィニティ』でのお金を共通にすることや職業を認めることなどの社会対応システムのことだ。
 もちろん、現実リアルの体の健康維持のために一定時間ゲーム内活動時間の間隔を開けるシステムも入れている。自らの健康維持がゲームにも反映するので廃人も健康維持を心掛けるようにもなったと言うデータも取られた。
 国推奨のゲームとして多くの企業や団体が関わったオンラインゲームとなった。



 ここにもそれを始めようとしている少年・笹原秋良。
 秋良は夕食後珍しく家族全員がいるのでリビングに呼び、自分のノートPCでそのゲームの紹介ムービーを見せた。
『史上初!国推奨のオンラインゲームが誕生!多くの企業や団体が関わったことによって可能となった高速演算による寸分の誤差のないアバターの動きや世界観、AI搭載により人と変わりないNPCやモンスター。数多な職業やスキル。個人同盟ギルドを開き仲間たちと行動するのも、個人で動くのもあり、己の判断が未来を切り開く!この世界での一部は現実世界リアルでも適用。さぁ、専用のヘッドギアを用意して新たな世界に飛び込もう!』
 ムービーを見終わった家族はもう一度秋良の方を見た。
 秋良は真剣な顔をして家族、両親と兄・雪兎を見た。
 両親は秋良を見て優しい顔をしているが雪兎はどうでも良さそうに明後日の方を見ていた。
「このゲームがしたいのか?」
「うん」
「ヘッドギアが欲しいの?」
「いや、ヘッドギアは小遣いで買ったからいいんだ。いいんだけど」
「何か問題があるのか?」
「年齢、こいつは15だから20歳以上の保護者同伴じゃないと入れないんだよ、このゲーム」
「そうなんだ」
 秋良の方は見てないも雪兎は秋良の言いたいことがわかり付け加えた。
 秋良はその上で雪兎の方を見た。
 2人の視線が合うことは滅多にない、と言うのも雪兎は秋良のことが好きではないのだ。
 雪兎は秋良が生まれるまでずっと両親にほっとかれ、この家で1人でいることが多かった。
 それに秋良を溺愛している両親は秋良を優先し、何かと雪兎に強制してくるのだ。
 そんな両親や秋良のことを雪兎がよく思えるはずもなく、雪兎は極力関わらないように避けている。
「協力してあげたいけど、お母さんたち仕事があるからねぇ」
「ああ……そうだ、雪兎、お前が保護者として一緒にやってあげなさい」
「はぁ?」
「それがいいわ。あなた、在宅仕事で時間があるじゃない。秋良に協力してあげなさい」
「断る」
「なんだと?可愛い弟の頼みが聞けないのか!」
「なんで俺がこいつのお守りをしないといけないんだ。それにあんたたちよく俺にそんなこと言えるな。ほっとかれた俺が愛されている弟の頼みを聞きたいと思うわけないだろう。寝言は寝て言え、俺は部屋に戻る」
「雪兎!」
「秋良、お母さんたちが雪兎に言っておくから」
「いいよ、兄さんの言いたいことは分かるから」
「秋良」
「湊と一緒にやるから、玲にいにでも頼むよ」
「そうね、玲一君にはお母さんたちからも頼んどこうかしら?」
「いいよ、1人で言える」
 秋良はそう言うと自室に向かった。
 秋良の部屋の隣は雪兎の部屋だ。
 雪兎の部屋の扉に掛かった侵入禁止の札がいつも以上に強く秋良を拒んでいるように感じた。
 本当は秋良は優秀な雪兎のことが好きだ。
 どんなに自分に冷たくても最後は見捨てないでいてくれる雪兎のことを秋良は慕っている。
 本当は普通の兄弟のように接したいのだが、両親がいると雪兎は嫌がる。
 秋良からしたら両親より雪兎と仲よくしていたいのだ。
 でも、そんなこと言えない。
 それは両親に『愛されたかった』雪兎の神経を逆撫でするようなことだからだ。
 秋良は扉に手を当てて聞こえてないだろうと分かっていながら雪兎に話しかけた。
「ごめん、兄さん。嫌な思いさせて……でも、俺、兄さんと一緒にやりたかったんだ。湊と一緒にやるから……迷惑かけて、本当にごめん」
「……………」
「お休み、兄さん。仕事頑張りすぎないでね」
「……………」
 何も返事が返ってこなかったが秋良はそのまま自室に戻った。
 秋良が自室に入った後雪兎の部屋の扉が開いた。
「……湊と一緒にってことは保護者は玲かよ。はぁ、結局お守りするのか……まぁ、仕方ないか、『弟』なんだもんな」
 雪兎は諦めたようにため息をついた。
 雪兎には全部聞こえていた、だからわざと扉を開けなかったのだ。
 素直になれない自分が雪兎は両親と同じぐらい嫌いだ。
 雪兎は秋良のことが『好きではない』だが『嫌いなわけでもない』のだ。
 雪兎は幼馴染の玲一がいたから『友情』は分かるが『愛情』をもらっていないので分からない。
 ましてや疑問と悔しさと憎しみに近い感情しか両親に感じたことしかないので『愛情』を知らない。
 知らないから愛されたくても、愛したくても、分からない、表現ができない。
 だからこそ雪兎は諦めていた、誰かに愛されることを、誰かを愛することを。
「玲ならどうにかできるだろう」
 雪兎は残りの仕事をするために自室に戻った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...