81 / 118
第二章
21、色々と、落ち着きました
しおりを挟む
アリシアがつわりで悩まされる日々がやっと過ぎ去り、体の方も安定してきた。
こうなってくると今度は周りが落ち着かなくなってきた。
それはこのぐらいの時期にドラグーンでは変化が起きる。
そしてアリシアにも変化が起きた。
それは真夜中のことだった、急にお腹の痛みを覚えたアリシアが唸っていると異変に気付いたルドワードが飛び起きた。
「シア?!どうした?!」
「お、お腹が、急に、ううう~」
「なっ!誰か!誰か来てくれ!!」
ルドワードはアリシアを片腕で抱きしめながら、緊急の呼び鈴を鳴らした。
今日の護衛であったアルシードがあわてて中に入ってきた。
「竜王様!竜王妃様!何が?!」
「アリシアが急に痛み出した!すぐに医者を!!」
「分かりました!」
「シア、すぐに医者が来る。がんばれ」
「ルド様~~、うううう」
アルシードは全速力で医者を担いできた。アルシードに付き添った隊員も医者の診察道具をもって一生懸命について行った。
医者が到着するころにはラースたちも集まっていた。
医者が触診等を行うとあることが分かった。
「どうやら、この度のアリシア様の御懐妊はドラグーン方式のようです。卵が下りてこようとしているために生じる痛みのようです」
「た、卵」
「この度はドラグーン方式、ということは……竜王様方は今すぐにお部屋から出てくださいまし!!」
「へ?はぁ?」
「出産は神聖なものです!殿方がいてはいけません!!」
ラースたち侍女の剣幕に押され、ルドワードたちは扉の外に出た。今回、未出産のリリアたちは誰も入らないように番をすることになった。
もちろん出産にかかわる医者は女性だ。
外に出された面々は気が気じゃない。
時折聞こえるアリシアの苦しそうなうめき声やそんなアリシアを励ます侍女組の声、侍女に指示やアリシアに促す医者の声だけが聞こえてくる。
「だ、大丈夫なんだろうか?」
「リン」
「私にもわかりません。ですが、カナリアさんたちがここを通すなと言われましたので」
「はい。たとえ、竜王様でもここはお通しできません」
「あ、ああ……アリシア」
ルドワードたちは侍女たちの許可が下りるまでは本当に中に入れない。
それはリリアたちはアリシア付きの侍女なので、いくら竜王でアリシアの夫であっても、彼女たちに最終命令をできるのはアリシアだけなのだ。アリシアの不利益になったり、意に反することであれば彼女たちはたとえ竜王であるルドワードの命令も無視でき、対立できる。
それが竜王妃付きの侍女なのだ。
そして今回のはそれが顕著に表れることだ。
出産は男性が入れないのであれば、アリシアの出産の儀式を守るのが彼女たちの役割となるからだ。
それでも全員が時折聞こえるアリシアの苦しそうなうめき声にやきもきしているのもまた事実なのだ。
それが数時間続いた頃、急に静かになった。
静かになったら静かになったで不気味なのだ。
そうしていると医者が出てきた。
「アリシアは?」
「はい。無事に卵はお生まれになりました。今はお疲れになって休まれていますので今日の所は医務室の機械で温めておきます」
「ああ」
「竜王様、どうぞ、ご入室を。アリシア様も整いましたので」
「ああ」
ナディアに促されるままに自室に入るとベッドにはアリシアが眠っていた。
その身は清められたらしいが顔には疲労が見て取れた。
「ご苦労様、シア」
「んん~、ルド様ぁ~」
アリシアはルドワードの温もりを求めるようにルドワードにくっ付いて幸せそうな顔をしている。
ルドワードももう大丈夫なのだと理解し、ベッドに入った。
ルドワードがベッドに入ったのを見届けてクシャナたちは一礼して扉を閉めた。
アルシードたちもひと段落したのだと分かり、それぞれの持ち場に就いた。
侍女組は部屋に戻り、眠りについた。
やっとこれで色々落着き、また色々とはじまるということなのだろう。
こうなってくると今度は周りが落ち着かなくなってきた。
それはこのぐらいの時期にドラグーンでは変化が起きる。
そしてアリシアにも変化が起きた。
それは真夜中のことだった、急にお腹の痛みを覚えたアリシアが唸っていると異変に気付いたルドワードが飛び起きた。
「シア?!どうした?!」
「お、お腹が、急に、ううう~」
「なっ!誰か!誰か来てくれ!!」
ルドワードはアリシアを片腕で抱きしめながら、緊急の呼び鈴を鳴らした。
今日の護衛であったアルシードがあわてて中に入ってきた。
「竜王様!竜王妃様!何が?!」
「アリシアが急に痛み出した!すぐに医者を!!」
「分かりました!」
「シア、すぐに医者が来る。がんばれ」
「ルド様~~、うううう」
アルシードは全速力で医者を担いできた。アルシードに付き添った隊員も医者の診察道具をもって一生懸命について行った。
医者が到着するころにはラースたちも集まっていた。
医者が触診等を行うとあることが分かった。
「どうやら、この度のアリシア様の御懐妊はドラグーン方式のようです。卵が下りてこようとしているために生じる痛みのようです」
「た、卵」
「この度はドラグーン方式、ということは……竜王様方は今すぐにお部屋から出てくださいまし!!」
「へ?はぁ?」
「出産は神聖なものです!殿方がいてはいけません!!」
ラースたち侍女の剣幕に押され、ルドワードたちは扉の外に出た。今回、未出産のリリアたちは誰も入らないように番をすることになった。
もちろん出産にかかわる医者は女性だ。
外に出された面々は気が気じゃない。
時折聞こえるアリシアの苦しそうなうめき声やそんなアリシアを励ます侍女組の声、侍女に指示やアリシアに促す医者の声だけが聞こえてくる。
「だ、大丈夫なんだろうか?」
「リン」
「私にもわかりません。ですが、カナリアさんたちがここを通すなと言われましたので」
「はい。たとえ、竜王様でもここはお通しできません」
「あ、ああ……アリシア」
ルドワードたちは侍女たちの許可が下りるまでは本当に中に入れない。
それはリリアたちはアリシア付きの侍女なので、いくら竜王でアリシアの夫であっても、彼女たちに最終命令をできるのはアリシアだけなのだ。アリシアの不利益になったり、意に反することであれば彼女たちはたとえ竜王であるルドワードの命令も無視でき、対立できる。
それが竜王妃付きの侍女なのだ。
そして今回のはそれが顕著に表れることだ。
出産は男性が入れないのであれば、アリシアの出産の儀式を守るのが彼女たちの役割となるからだ。
それでも全員が時折聞こえるアリシアの苦しそうなうめき声にやきもきしているのもまた事実なのだ。
それが数時間続いた頃、急に静かになった。
静かになったら静かになったで不気味なのだ。
そうしていると医者が出てきた。
「アリシアは?」
「はい。無事に卵はお生まれになりました。今はお疲れになって休まれていますので今日の所は医務室の機械で温めておきます」
「ああ」
「竜王様、どうぞ、ご入室を。アリシア様も整いましたので」
「ああ」
ナディアに促されるままに自室に入るとベッドにはアリシアが眠っていた。
その身は清められたらしいが顔には疲労が見て取れた。
「ご苦労様、シア」
「んん~、ルド様ぁ~」
アリシアはルドワードの温もりを求めるようにルドワードにくっ付いて幸せそうな顔をしている。
ルドワードももう大丈夫なのだと理解し、ベッドに入った。
ルドワードがベッドに入ったのを見届けてクシャナたちは一礼して扉を閉めた。
アルシードたちもひと段落したのだと分かり、それぞれの持ち場に就いた。
侍女組は部屋に戻り、眠りについた。
やっとこれで色々落着き、また色々とはじまるということなのだろう。
14
あなたにおすすめの小説
前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~
高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。
先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。
先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。
普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。
「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」
たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。
そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。
はちみつ色の髪をした竜王曰く。
「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」
番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる