竜王の花嫁

桜月雪兎

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第二章

22、大事な卵

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 翌朝、ルドワードが目を覚ますとアリシアはまだ眠っていた。
 昨晩は急に産気づいてしまってかなり疲れたようだ。いつもならルドワードが起きれば自然に一緒に起きていた。
 ルドワードはアリシアの寝顔を見て微笑み、その頭を優しく撫でた。
 アリシアはその感触で目が覚めた。
「んん~~」
「起こしたか?」
「ルド様ぁ~」
「おはよう、シア。体は大丈夫かい?」
「おはようございます、ルド様。ちょっとまだだるいですがだいじょう、ぶ……わ、私たちの子は?!」
「ここに居りますよ、竜王妃様」
 医者は起床の時間に合わせて、卵を持って室内に来た。
 本来、ルドワードやアリシアの了承を得なくてはいけないのだが、我が子がいなくて慌てるだろうアリシアのことを予測してやってきたのだ。
 周りも大事な御子の卵なのでそのまま通した。
 アリシアはそのまま医者から卵を受け取った。アリシアにはそれが自身の子だと分かる。それはドラグーンの母親がそうであるように卵と親は不思議な見えない絆でつながっているのだ。
「ああ、よかったです。私たちの子」
「竜王妃様、卵はなるべくご自身でお抱えになりまして温めてください」
「はい」
「何かありましたら医務室の機器で温めることも出来ます。それと卵と母親は繋がっていますので体調面にも気を付けてください。卵に伝わります」
「分かりました」
「それでは私は失礼いたします」
「うん、ご苦労だった」
「ありがとうございました」
 医者は二人からねぎらいの言葉を貰って嬉しそうにその場を後にした。
 ルドワードはアリシアに布団をかけてから着替え始めた。
「ルド様?」
「今日は部屋で過ごすといい。体はまだ疲れているのだからな」
「ですが」
「食事はここに運ばせよう。もう少し良くなってから起きなさい」
「はい」
「じゃあ、行ってくる、昼時は一緒に食べよう」
「はい!」
 ルドワードはアリシアの額にキスをしてその場を後にした。
 ルドワードと入れ違いにラースたちが入ってきた。
「おはようございます、アリシア様」
「おはようございます」
「体は横になっていて下さいませ、マリアがすぐに消化に良い物を持ってまいりますので」
「はい。子を生むというのは体力が必要なんですね」
「ええ、ですが。その分可愛いのです」
「今は卵ですが、卵から孵った時も感動いたしますよ」
「そうなんですね、早く会ってみたいです」
 アリシアは優しく、大事に卵を抱えた。
 抱えたと言ってもまだまだ小さい卵だ。その大きさは両の手にすっぽりと収まるほどしかない。だが、この卵もいずれは両腕で抱えるほどになり、御子が孵るのだ。
 誰もがその卵を優しい瞳で見ていた。
 マリアが食事を持ってくるとベッドに小さい台を置き、そのまま食した。
 意外にもマティスの贈ったクッションやシリウスの贈った大きめのひざ掛けは重宝していた。
 今もアリシアの体を支えるためにクッションを置き、アリシアの体と卵をひざ掛けが包みこんでいる。
「まさか、苦笑していたクッションがこのように役に立つとは」
「ひざ掛けもですよ」
「二人には本当に感謝しないといけませんね」
「「「ですね」」」
 全員がそんなことを想いながら卵の成長を見守っている。

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