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第三章 『子猫』を拾いました

殿下は、どんな気持ちでそんなことを言ったんだろうか

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「キミは俺のことが嫌い? それとも怖い?」

 その言葉に私は何て返したらいいのかわからなかった。
 自分でもわからなかったから。
 唯一わかるのは、殿下が悲しそうにしていたこと。
 悲しそうな顔なんて初めて見た。ゲームでも悲しそうな表情なんてしたこと無かった。

 なんで殿下はいきなりそんなことを言ったのだろう。

 一体、どんな気持ちで.....?

 殿下のことだからずっと前から気付いてたはずなのに。
 気付かないようにすればいいだけの話なんだけど、私には演技が出来るほど器用ではない。

 顔に出したくなくても顔に出てしまう。
 こうなることなら、アイリスと笑顔の特訓しとくんだった。多少は顔に出さないように出来たはず。

 本当に私ってどうしようもなく頭が悪いんだから。
 いや、努力をするということがなんなのかわかってなかったというのもあるかも知れないけど。

 そういえば『作ってる微笑み』をしてる殿下ではなく無邪気に笑ってる殿下も初めて見たっけ。


 そんなことを考えながら廊下を歩いているとアイリスとオリヴァーさんが楽しそうに話してるのが見えた。

 二人ってこんなに仲良かったっけ.....?
 良い雰囲気だし、邪魔したくないし.....。
 すぐに仲良くなれるのは羨ましい。

 でもここを通らないと私の寝室にはいけないし。

 後でこっそりとアイリスに友達の作り方を教えてもらわないと。

 学園に通った時のために!

「あっ。ソフィア様!」

 アイリスが私に気付いて近寄ってきた。オリヴァーさんも子猫を抱いて近寄ってくる。

 子猫はオリヴァーさんに抱っこされながらすやすやと気持ちよさそうに眠っている。

「申し訳ありませんでした。子猫を.....」

 アイリスは私に深々と頭を下げた。

「いいの。それよりもその子猫、飼えないかな」
「その子猫.....ですか?   それは難しいかと」
「だよね」

 この世界での貴族のペットは犬。猫をペットとして飼うのは難しい。それに猫は家畜として飼われていた事例があるだけで愛玩として飼育はされたことがない。

 猫をペットで飼いたいと言ったら「頭がおかしい危ないヤツ」だと思われるだろう。なにせ、前例がないのだから。

 だけど私はこんなにも愛らしい小さな命を守りたい。

 小さな命を守れないのに大切な人たちを守れるとは思えない。

 頭がおかしいと言われようが、変なヤツだと思われようが、私は開き直ることにした。

 小さな命を守れるなら、私の評価なんて小さな犠牲だ。

 .....悪い方向にいかないといいけど。というか、この選択が悪い方向にいかないで!

「.....お義父さまとお義母さまの説得しないと」

 忘れてはいけない。私はこの屋敷に養女として迎えられたということを。

 あんまり我儘は言えない立場。かなり我儘言ってきたような気もするけど.....。

 なんとしても説得を頑張らないと。この子猫の命がかかってるんだから。
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