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第四章 『対話』する方法を見つけました!
親睦を深めるために
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イアン様と親睦を深めるのが目的で侍女にクッキー作りを教わった。
私は出来上がったクッキーを渡すため、客室に向かう。
渡すだけだと仲良くなれないと思った私は、イアン様と一緒にお茶をすることになったのが昨日の出来事。
「だから何回も言ってるだろ。こねすぎなんだよ」
「そう言われても」
イアン様と私、そして三名の侍女が調理場にいるという奇妙な状況。
少し離れた距離で侍女達がハラハラと見守ってくれている。
イアン様は私にクッキー作りを教えてくれている。
最初は、私とイアン様の二人でという話だったらしい。
さすがに調理場に令嬢と令息の二人にするというのはなにかあると対応が遅れる可能性があるので、侍女三人で見守っている。
「クッキー生地はさっくりこねるのが美味しくなるんだ。昨日のクッキーは硬かったし、若干パサパサしていた。ということはこねかたに問題があるんだ」
どうやら私はイアン様の変なスイッチを押してしまったようだ。
それにしてもイアン様はお菓子作りが出来るとは思わなかった。
というよりもゲームでもそんな設定あったかな。
確か、双子の妹のためにお菓子作りしたことがあったとは言っていた気もするけど。
ーーなんだかちょっと可愛い。
「ん? なんだよ。ニヤニヤして」
「あっ、いえ」
「……貴族の男がお菓子作りが好きなのは変かよ」
「どうして、そう思うのですか?」
変だなんて思ったことはない。
どうしてそう思ってしまったのか気になってしまい聞き返してしまった。
「だって変だろ。男がそんな女みたいな趣味持ってるなんて。ましてや俺は剣術の天才だと言われてんだ」
「はい、知ってますよ。ですが、男とか女とか関係ないです。それに……私だって女なのにイアン様、あなたに剣術を教わっています」
「なんだか似てますね」と、クスクス笑っていたらイアン様が驚いた顔をしていた。
笑ったのは失礼だったのかもと思い、慌てて謝ろうとしたらイアン様がお腹を抱えて笑いだした。
「あははははっ! 確かにそうだな」
「イアン様?」
「男とか女とか関係ない、か。お前はどうして俺に剣術を教わろうと思ったんだ?」
「私は……守りたい人達がいるから、ですかね。イアン様もそうなのではありませんか?」
「……そうか、俺はそんな思いを忘れていたんだな」
イアン様はボソッと呟いたが、私は聞き逃すことはしなかった。
気を張って生きてきたのもあり、イアン様はなんのために剣術をしているのかを忘れているような気がしていたけど、私の予想は当たっていたらしい。
守りたい人のために剣術をしているというのは私の想像だ。
イアン様のことを考えるとそれしか思いつかなかった。
だってイアン様は、双子の妹を溺愛しているんだもん。
そのことを忘れるぐらいにたくさん悩んで頑張ってきたんだな。
強くなればなるほど周りの人達の期待が高くなる。そんなプレッシャーを毎日抱えて生きていることを考えただけでも逃げたくなるに決まってる。私だったら逃げていたと思う。
イアン様は剣術だけじゃなく、心も強い人なのだろう。
強い人だからこそ、一人で抱えて悩んでしまったのだろう。
悩んでいても、周りからよく思わなくても、お菓子作りが好きというのを隠さないあたり、精神が強いとは思ってたけど。
「ああっ!!」
「え!?」
話に夢中になっていたばかりに私は、クッキー生地をずっとこねているのを忘れていた。
イアン様は私がずっとこねていたクッキー生地を見て絶叫する。
これはもう一回作り直しだろう。
イアン様は絶対怒ってるだろうと思っておそるおそる顔色をうかがう。
「たくっ。仕方ねぇな」
仕方がないといいながらイアン様はどこか楽しそうだ。
私は出来上がったクッキーを渡すため、客室に向かう。
渡すだけだと仲良くなれないと思った私は、イアン様と一緒にお茶をすることになったのが昨日の出来事。
「だから何回も言ってるだろ。こねすぎなんだよ」
「そう言われても」
イアン様と私、そして三名の侍女が調理場にいるという奇妙な状況。
少し離れた距離で侍女達がハラハラと見守ってくれている。
イアン様は私にクッキー作りを教えてくれている。
最初は、私とイアン様の二人でという話だったらしい。
さすがに調理場に令嬢と令息の二人にするというのはなにかあると対応が遅れる可能性があるので、侍女三人で見守っている。
「クッキー生地はさっくりこねるのが美味しくなるんだ。昨日のクッキーは硬かったし、若干パサパサしていた。ということはこねかたに問題があるんだ」
どうやら私はイアン様の変なスイッチを押してしまったようだ。
それにしてもイアン様はお菓子作りが出来るとは思わなかった。
というよりもゲームでもそんな設定あったかな。
確か、双子の妹のためにお菓子作りしたことがあったとは言っていた気もするけど。
ーーなんだかちょっと可愛い。
「ん? なんだよ。ニヤニヤして」
「あっ、いえ」
「……貴族の男がお菓子作りが好きなのは変かよ」
「どうして、そう思うのですか?」
変だなんて思ったことはない。
どうしてそう思ってしまったのか気になってしまい聞き返してしまった。
「だって変だろ。男がそんな女みたいな趣味持ってるなんて。ましてや俺は剣術の天才だと言われてんだ」
「はい、知ってますよ。ですが、男とか女とか関係ないです。それに……私だって女なのにイアン様、あなたに剣術を教わっています」
「なんだか似てますね」と、クスクス笑っていたらイアン様が驚いた顔をしていた。
笑ったのは失礼だったのかもと思い、慌てて謝ろうとしたらイアン様がお腹を抱えて笑いだした。
「あははははっ! 確かにそうだな」
「イアン様?」
「男とか女とか関係ない、か。お前はどうして俺に剣術を教わろうと思ったんだ?」
「私は……守りたい人達がいるから、ですかね。イアン様もそうなのではありませんか?」
「……そうか、俺はそんな思いを忘れていたんだな」
イアン様はボソッと呟いたが、私は聞き逃すことはしなかった。
気を張って生きてきたのもあり、イアン様はなんのために剣術をしているのかを忘れているような気がしていたけど、私の予想は当たっていたらしい。
守りたい人のために剣術をしているというのは私の想像だ。
イアン様のことを考えるとそれしか思いつかなかった。
だってイアン様は、双子の妹を溺愛しているんだもん。
そのことを忘れるぐらいにたくさん悩んで頑張ってきたんだな。
強くなればなるほど周りの人達の期待が高くなる。そんなプレッシャーを毎日抱えて生きていることを考えただけでも逃げたくなるに決まってる。私だったら逃げていたと思う。
イアン様は剣術だけじゃなく、心も強い人なのだろう。
強い人だからこそ、一人で抱えて悩んでしまったのだろう。
悩んでいても、周りからよく思わなくても、お菓子作りが好きというのを隠さないあたり、精神が強いとは思ってたけど。
「ああっ!!」
「え!?」
話に夢中になっていたばかりに私は、クッキー生地をずっとこねているのを忘れていた。
イアン様は私がずっとこねていたクッキー生地を見て絶叫する。
これはもう一回作り直しだろう。
イアン様は絶対怒ってるだろうと思っておそるおそる顔色をうかがう。
「たくっ。仕方ねぇな」
仕方がないといいながらイアン様はどこか楽しそうだ。
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