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第五章 庭師『クラレンス』
稽古は思っていたよりも大変です
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イアン様が滞在して一ヶ月経とうとしていた。
結界が張り直されてる気配はないし、ノア先生は皇帝からの命令でどこかに行ってしまった。
……それにしても結界が張り直されてる気配がないのはおかしい。
もうとっくに張り直されてもいいのに。
「どうした? 息切らしてんじゃん」
「だったらもう少し手加減してください!」
「手加減したら、意味ないじゃん」
今は庭にて稽古中。
動きやすいようにジャージにしてるけど、稽古のしすぎでボロボロになっている。
新しいの作ってもらおう。
素人相手にイアン様は一切手を抜くことはなく、容赦なく剣を振りかざす。しかもかなり余裕があるらしく楽しそうに笑っている。こっちは余裕がなくて必死だというのに。
私の必死さを嘲笑ってるのかもしれない。
ネガティブなことをたまに考えてしまうが、イアン様はそんな人じゃない!
と、信じたい。
剣といっても木製で出来ていて、矛先は鋭くはなく、丸くなっていて当たっても傷はつかない。ただ、痣は出来るけど。
イアン様に剣術を教えてもらって、もう一ヶ月になろうとしてるのかぁ。
イアン様の動きをよく見て攻撃をかわせるぐらいの反射神経は身に付いたけど。
守ることはできる。でも、攻めることがまだできない。攻めても一瞬の隙をついて攻撃されて終わるから。
ただ一つだけ、かわせない場所がある。
それは……。
私はイアン様の剣の動きに集中していると、な・に・か・につまずいて転んでしまった。
膝を地面に強打してしまって擦り傷ができた。
その何かは、イアン様の足。
たまに私の足を引っ掛けて転ばせようとしてくる。
それはわかってるのに毎回引っかかってしまう。
「うぅ……」
「だーかーらー、お前の欠点は目の前のことに集中しすぎなところだ。周りをちゃんと見ろ。そうすれば自ずと見えてくるものもある。それは剣術のことだけじゃなく、日常生活にも言えることだ。お前、心当たりあるんじゃないのか」
う……。ぐうの音も出ないというのはこういうことをいうのだろう。
でも、周りを見ようとしてもいつの間にか目の前に集中しているんだよね。
「最初の頃よりは良くなってるけど、まだまだだな」
イアン様は鼻で笑った。
悔しい。ものすごく悔しい。
私は悔しくて下を向いていたら頭になにか……?
「令嬢にしては、良くやってるよ。少しは見直した」
「……え」
私の頭をイアン様は優しく撫でていた。
イアン様は「この調子で頑張れ」と、言ってくれる。
どうしよう、泣きそう……。
アメとムチですか!? いや、ムチからのアメ?
とにかく、素直に嬉しい!
さっきまで悔しかったけど、褒められれば嬉しい!
私って単純。でも、頑張ろうって気持ちになる。
「今日はもうやめだ。ティータイムにしようぜ」
「あっ、はい!」
イアン様が手を差し伸べてきたので、お礼を言いながらその手を取った。
こういう時は紳士なんだよねぇ、イアン様は。
「ソフィア様! 手当しますのでこちらに。イアン様はその」
「先に行って待ってる」
「急いで侍女たちにティータイムの準備をするように伝えます」
邪魔にならないところで稽古を見守っていたアイリスが駆け寄ってきた。
アイリスはイアン様に一礼した後、手馴れた手付きで私の怪我を見る。
イアン様はさっさと屋敷に入っていった。
こんなかすり傷程度だというのに、傷が残ったら大変だからとすぐに手当をしてくれる。
確かに、傷が残ったら大変だしね。私、一応令嬢だし。
剣術を教えてもらうことを食事中にさりげなくお義父さまとお義母さまに話したら驚いていたっけ。
でも、私は大魔術士の娘。いろんな人から狙われやすい存在。きっとこれから先、なにかあるかわからないから自分の身は自分で守れるような強さがほしい。
そう言ったらなぜか二人とも……いやそれを聞いていた侍女たちも涙ぐんでいた。
えっ、涙ぐむところなの!?
そして侍女たちは一斉に拍手してくるし、なんなんだろう。この状況。
お義父さまとお義母さまも一緒になって拍手をするという……。
一緒に食事をしていたイアン様は俺は関係ないですよと言わんばかりに知らない顔をしてスープを飲んでるし。
……とりあえず、剣術を教わるのを許してもらった。
結界が張り直されてる気配はないし、ノア先生は皇帝からの命令でどこかに行ってしまった。
……それにしても結界が張り直されてる気配がないのはおかしい。
もうとっくに張り直されてもいいのに。
「どうした? 息切らしてんじゃん」
「だったらもう少し手加減してください!」
「手加減したら、意味ないじゃん」
今は庭にて稽古中。
動きやすいようにジャージにしてるけど、稽古のしすぎでボロボロになっている。
新しいの作ってもらおう。
素人相手にイアン様は一切手を抜くことはなく、容赦なく剣を振りかざす。しかもかなり余裕があるらしく楽しそうに笑っている。こっちは余裕がなくて必死だというのに。
私の必死さを嘲笑ってるのかもしれない。
ネガティブなことをたまに考えてしまうが、イアン様はそんな人じゃない!
と、信じたい。
剣といっても木製で出来ていて、矛先は鋭くはなく、丸くなっていて当たっても傷はつかない。ただ、痣は出来るけど。
イアン様に剣術を教えてもらって、もう一ヶ月になろうとしてるのかぁ。
イアン様の動きをよく見て攻撃をかわせるぐらいの反射神経は身に付いたけど。
守ることはできる。でも、攻めることがまだできない。攻めても一瞬の隙をついて攻撃されて終わるから。
ただ一つだけ、かわせない場所がある。
それは……。
私はイアン様の剣の動きに集中していると、な・に・か・につまずいて転んでしまった。
膝を地面に強打してしまって擦り傷ができた。
その何かは、イアン様の足。
たまに私の足を引っ掛けて転ばせようとしてくる。
それはわかってるのに毎回引っかかってしまう。
「うぅ……」
「だーかーらー、お前の欠点は目の前のことに集中しすぎなところだ。周りをちゃんと見ろ。そうすれば自ずと見えてくるものもある。それは剣術のことだけじゃなく、日常生活にも言えることだ。お前、心当たりあるんじゃないのか」
う……。ぐうの音も出ないというのはこういうことをいうのだろう。
でも、周りを見ようとしてもいつの間にか目の前に集中しているんだよね。
「最初の頃よりは良くなってるけど、まだまだだな」
イアン様は鼻で笑った。
悔しい。ものすごく悔しい。
私は悔しくて下を向いていたら頭になにか……?
「令嬢にしては、良くやってるよ。少しは見直した」
「……え」
私の頭をイアン様は優しく撫でていた。
イアン様は「この調子で頑張れ」と、言ってくれる。
どうしよう、泣きそう……。
アメとムチですか!? いや、ムチからのアメ?
とにかく、素直に嬉しい!
さっきまで悔しかったけど、褒められれば嬉しい!
私って単純。でも、頑張ろうって気持ちになる。
「今日はもうやめだ。ティータイムにしようぜ」
「あっ、はい!」
イアン様が手を差し伸べてきたので、お礼を言いながらその手を取った。
こういう時は紳士なんだよねぇ、イアン様は。
「ソフィア様! 手当しますのでこちらに。イアン様はその」
「先に行って待ってる」
「急いで侍女たちにティータイムの準備をするように伝えます」
邪魔にならないところで稽古を見守っていたアイリスが駆け寄ってきた。
アイリスはイアン様に一礼した後、手馴れた手付きで私の怪我を見る。
イアン様はさっさと屋敷に入っていった。
こんなかすり傷程度だというのに、傷が残ったら大変だからとすぐに手当をしてくれる。
確かに、傷が残ったら大変だしね。私、一応令嬢だし。
剣術を教えてもらうことを食事中にさりげなくお義父さまとお義母さまに話したら驚いていたっけ。
でも、私は大魔術士の娘。いろんな人から狙われやすい存在。きっとこれから先、なにかあるかわからないから自分の身は自分で守れるような強さがほしい。
そう言ったらなぜか二人とも……いやそれを聞いていた侍女たちも涙ぐんでいた。
えっ、涙ぐむところなの!?
そして侍女たちは一斉に拍手してくるし、なんなんだろう。この状況。
お義父さまとお義母さまも一緒になって拍手をするという……。
一緒に食事をしていたイアン様は俺は関係ないですよと言わんばかりに知らない顔をしてスープを飲んでるし。
……とりあえず、剣術を教わるのを許してもらった。
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