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第十二章 動き始めた……○○フラグ
人を疑わないほど恐ろしいものはない【イリア視点】
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ソフィア様を医務室に送り届けた私とお兄様はシイラ伯爵令嬢とケニア侯爵令嬢の後を追っていた。
シイラ様の動向はお父様から監視するようにと、命じられた。
「お兄様、どう思われます?」
「ん。ああ……おかしいよな」
そう、おかしい。急にソフィア様を心配するフリをしたり、悪口を広めたり……。
入学前のシイラ様は寛容がある方。それなのに、自分の感情のままに行動するのがどうも引っかかる。
今のシイラ様に接触するのは危険だし、感情的になると困るから裏で情報収集していた。
念の為に、ソフィア様にも忠告してたのだけど……。
人を疑わないほど恐ろしいものはないですわね。
「ソフィア様、顔色が悪かった」
私はお兄様の言葉を疑った。聞き間違いなのかと思った。
お兄様は「おかしい」と言ったのはソフィア様が体調を崩したことだった。
私が聞いたのは、シイラ様の行動だったのですが……。
ちゃんと伝わらないことに少し苛立ちを覚える。
「お兄様、いくら好意を持ってる異性が心配なのは分かりますが、お父様から命じられてますよね。まさか忘れてる……なんてありませんよね?」
「も、もちろんだ」
ああ……、頭が痛い。
でも、今回ばかりは仕方ない。お兄様が初めて好意を持った女性なのですから。
「心配する気持ちは分からなくはないですわね」
ソフィア様と知り合って短いというのに、彼女はとても危なっかしい。
精神的にまだまだ未熟な点が多く、天然で抜けてる子という印象がある。
そこがソフィア様の魅力の一つだと感じるのですけれど……。
庇護欲を掻き立てられるというのは、女性らしさがあって初々しい。
けれど、悪くいってしまえば清純派を装っているとも捉えることができる。
ソフィア様を見る限り、あれは素なんだろうけど、そうは思わない人もいるから、少しは自覚してほしい。
そうじゃなくてもソフィア様は悪い意味でも良い意味でも注目されているのですから。
一緒にいて楽しいけれど、冷や冷やするのですわ。
そんなことを思っていたら、シイラ様とケニア様の後ろ姿が見えた。
私は声を上げた。
「シイラ様、ケニア様」
名前を呼ぶと、二人は肩を跳ねて慌てて振り向いた。
その顔には動揺しているようだったが、すぐに冷静さを取り戻して心配そうに聞いてきた。
「これはイリア様。ソフィア様の具合は大丈夫なのでしょうか?」
「心配いりませんわ。……ところでシイラ様は化粧に詳しいんだとか」
「え……ええ」
シイラ様の父親であるマシュー様は口紅の事業をしている。
何年か前までは流行りを先取りしようとして始めた事業が失敗したのだが、最近になって誰かが資金援助したのか、事業を立て直した。
ただ、口紅を使った人達は快感さを味わうんだとか。その反面、人によっては人格障害や記憶障害など……、症状が様々で少しずつ変化するので原因が口紅なのだと判断するのに時間がかかった。
シイラ様も口紅の被害者だとするなら性格の矛盾にも納得がいく。
知らずに使っているんだろうな。……恐らくケニア様も。
「美に敏感なのですね。素晴らしいです」
「お、お褒めいただき光栄でございます」
私は二人を安心させるように微笑む。
シイラ様は慌てて頭を下げた。
「サリバン伯爵家は、特殊な口紅で事業していますよね?」
「は、はい!! それはもう!」
サリバンはシイラ様のファミリーネーム。
「確か、人によっては発色が変わり、口紅から漂う匂いは時に人を狂わす程の魅力があるんでしたっけ?」
私はわざとらしくとぼけて見せるとシイラ様はマシュー様の口紅に興味があるのだと思ったようで嬉しそうに話し出した。
「はい、そうなんです。あの口紅がないと落ち着かないというか……依存が強くなってしまって手放せません」
「そんなに素敵な口紅なら私も使ってみたいですわ」
「で、でしたら私の屋敷にいらしてください。お父様も喜びます」
「……そうさせて貰おうかしら」
マシュー様が違法している可能性は高いが、証拠が足りない。
捕まえることが難しい……。なので、危険ではあるけれど直接会って確かめる必要がある。
「マシュー伯爵に楽しみにしていますとお伝えください。それではごきげんよう」
シイラ様とケニア様は深々とお辞儀をした。
私とお兄様は歩き出した。
「あんま無茶はするなよ、資産援助した奴もついでに捕まえられるかもしれないがな」
「……資産援助したのは、ケニア様の親かも知れませんわ。シイラ様とケニア様は幼馴染みなんですもの。それにケニア様のご両親には悪い噂もあるようですし」
お兄様は私にだけ聞こえるように話してきたので私も小声で話返したのだった。
シイラ様の動向はお父様から監視するようにと、命じられた。
「お兄様、どう思われます?」
「ん。ああ……おかしいよな」
そう、おかしい。急にソフィア様を心配するフリをしたり、悪口を広めたり……。
入学前のシイラ様は寛容がある方。それなのに、自分の感情のままに行動するのがどうも引っかかる。
今のシイラ様に接触するのは危険だし、感情的になると困るから裏で情報収集していた。
念の為に、ソフィア様にも忠告してたのだけど……。
人を疑わないほど恐ろしいものはないですわね。
「ソフィア様、顔色が悪かった」
私はお兄様の言葉を疑った。聞き間違いなのかと思った。
お兄様は「おかしい」と言ったのはソフィア様が体調を崩したことだった。
私が聞いたのは、シイラ様の行動だったのですが……。
ちゃんと伝わらないことに少し苛立ちを覚える。
「お兄様、いくら好意を持ってる異性が心配なのは分かりますが、お父様から命じられてますよね。まさか忘れてる……なんてありませんよね?」
「も、もちろんだ」
ああ……、頭が痛い。
でも、今回ばかりは仕方ない。お兄様が初めて好意を持った女性なのですから。
「心配する気持ちは分からなくはないですわね」
ソフィア様と知り合って短いというのに、彼女はとても危なっかしい。
精神的にまだまだ未熟な点が多く、天然で抜けてる子という印象がある。
そこがソフィア様の魅力の一つだと感じるのですけれど……。
庇護欲を掻き立てられるというのは、女性らしさがあって初々しい。
けれど、悪くいってしまえば清純派を装っているとも捉えることができる。
ソフィア様を見る限り、あれは素なんだろうけど、そうは思わない人もいるから、少しは自覚してほしい。
そうじゃなくてもソフィア様は悪い意味でも良い意味でも注目されているのですから。
一緒にいて楽しいけれど、冷や冷やするのですわ。
そんなことを思っていたら、シイラ様とケニア様の後ろ姿が見えた。
私は声を上げた。
「シイラ様、ケニア様」
名前を呼ぶと、二人は肩を跳ねて慌てて振り向いた。
その顔には動揺しているようだったが、すぐに冷静さを取り戻して心配そうに聞いてきた。
「これはイリア様。ソフィア様の具合は大丈夫なのでしょうか?」
「心配いりませんわ。……ところでシイラ様は化粧に詳しいんだとか」
「え……ええ」
シイラ様の父親であるマシュー様は口紅の事業をしている。
何年か前までは流行りを先取りしようとして始めた事業が失敗したのだが、最近になって誰かが資金援助したのか、事業を立て直した。
ただ、口紅を使った人達は快感さを味わうんだとか。その反面、人によっては人格障害や記憶障害など……、症状が様々で少しずつ変化するので原因が口紅なのだと判断するのに時間がかかった。
シイラ様も口紅の被害者だとするなら性格の矛盾にも納得がいく。
知らずに使っているんだろうな。……恐らくケニア様も。
「美に敏感なのですね。素晴らしいです」
「お、お褒めいただき光栄でございます」
私は二人を安心させるように微笑む。
シイラ様は慌てて頭を下げた。
「サリバン伯爵家は、特殊な口紅で事業していますよね?」
「は、はい!! それはもう!」
サリバンはシイラ様のファミリーネーム。
「確か、人によっては発色が変わり、口紅から漂う匂いは時に人を狂わす程の魅力があるんでしたっけ?」
私はわざとらしくとぼけて見せるとシイラ様はマシュー様の口紅に興味があるのだと思ったようで嬉しそうに話し出した。
「はい、そうなんです。あの口紅がないと落ち着かないというか……依存が強くなってしまって手放せません」
「そんなに素敵な口紅なら私も使ってみたいですわ」
「で、でしたら私の屋敷にいらしてください。お父様も喜びます」
「……そうさせて貰おうかしら」
マシュー様が違法している可能性は高いが、証拠が足りない。
捕まえることが難しい……。なので、危険ではあるけれど直接会って確かめる必要がある。
「マシュー伯爵に楽しみにしていますとお伝えください。それではごきげんよう」
シイラ様とケニア様は深々とお辞儀をした。
私とお兄様は歩き出した。
「あんま無茶はするなよ、資産援助した奴もついでに捕まえられるかもしれないがな」
「……資産援助したのは、ケニア様の親かも知れませんわ。シイラ様とケニア様は幼馴染みなんですもの。それにケニア様のご両親には悪い噂もあるようですし」
お兄様は私にだけ聞こえるように話してきたので私も小声で話返したのだった。
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