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第十六章 信頼
『はじまり』なのだと思う【クロエ視点】
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死んだらそれまでだと言うけれど、転生してしまった今ならわかることがある。
死んだらそれまで。けれどその魂は前世の人生の経験を積んでいる。それが例え、終わってしまったとしても前世の記憶を思い出してるだけで、『はじまり』なのだと思う。
もっとも、思い出せなかったら上書きされるだけだ。記憶は何かしら覚えているものだ。忘れてはいない、ただ……新たな人生の再スタートのために前世の記憶が必要か、そうではないかを勝手に脳が判断しているのかもしれない。
結構、ファンタジーなことを思っているが、そうなんじゃないかと思わずにはいられない。
何せ、前世の記憶がこういう時に役に立つ。
「お久しぶりですね。アイリスさん……いいえ、アイリス子爵令嬢様」
子爵邸のサロンでアイリスさんと向かい合って座っている。
今の姿は、女性の姿なのでドレスを着ているが、足元がスースーして、女性はよく着こなせるなと関心してしまう。
「確か……クロエ様でしたよね」
「はい。この度はお茶会のご招待ありがとうございます」
「い、いえ。他のご令嬢は訳あって来られないそうなので、二人っきりになってしまって申し訳ありませんが……」
「とんでもないです。寧ろ、アイリス様をゆっくりお話出来ると思うと嬉しく思います」
そう、何故子爵邸にいるのかというと、お茶会に招待されたから。
他の令嬢が来ないのは嘘だろう。何せこのお茶会は信用を勝ち取るため、深紅の魔術士の力が必要で、何としても仲良くなる必要があるからだ。
『クリムゾン メイジ』の三作品目のヒロインはアイリスさん。
一作品目の番外編のようなものだけど、ルートに寄っては良いように利用されたんだよな。俺の場合、死亡フラグが無いからそこは安心だけど。
この状況から察するに、物語は終盤に近いのかもしれない。
メインストーリーなので誰ルートなのかまだ分からない。
誰ルートがわかるためにも、ここは女子が好きな恋バナでもしてみようか。
「あ、あの。アイリス様は婚約されたと伺っていますが、お相手様がどのような方なのか存じ上げませんが」
アイリスさんは婚約のためにソフィア様の侍女を辞め、実家に帰った。
ただ、婚約者というのが影が薄いのであまり印象に残らない。ルイス子爵にとっては好都合な男だ。
目立っては今後の計画に支障が出るからな。
「一回だけ、お会いしましたが優しい方ですよ。少し気弱で頼りないですが……」
アイリスさんは下を向いて表情が見えない。
「そうですか、意外ですね。アイリス様にはもっとしっかりしている方がお似合いだと思ってましたが」
その言葉を聞いたアイリスさんは勢いよく俺の顔を見るなり、耳まで真っ赤にした。
一体誰を想像したのかまだ分からない。
「……政略結婚なので、私には断れる理由はありません。それに、子供を産めない私でも結婚してくれる殿方がいるんです。そんな幸運、滅多にありません」
それも知っている。アイリスさんの性格上、家を追い出されたからと言って無視出来ないのも。
本当は好きな人がいるのに自分を偽りで固めている。……誰ルートなのか分からないとソフィア様は死亡フラグを回収してしまう。
それに……壁際にいる侍女の顔色を伺っているようにも見える。
監視されてるんだろう。迂闊なことを言ったら後が大変になるから。
今の言葉だって、決められた台詞を言っているようなものだろう。
「そうでしたか、確かに幸運ですね……お幸せそうでなによりです」
優しく笑うと、アイリスさんは安堵したような笑みを浮かべる。
これ以上の詮索は危ないな。深追いするとソフィア様が死亡フラグになるかもしれない。
三作品目の悪役令嬢もソフィア様なのだから。
一作品目はどのルートでも死亡フラグだったけど、三作品目はルートによっては死んでしまう。
それだけは何としても阻止したい。
今頃はソフィア様のところでも展開が進んでるはずだ。
三作品目での俺の立ち位置はアイリスさんの友人だ。
誰ルートか探りつつも、ルイス子爵の罠にハマったように見せかける。
絶対にソフィア様を死なせない。
スカートの裾を握り、アイリスさんを見た。
死んだらそれまで。けれどその魂は前世の人生の経験を積んでいる。それが例え、終わってしまったとしても前世の記憶を思い出してるだけで、『はじまり』なのだと思う。
もっとも、思い出せなかったら上書きされるだけだ。記憶は何かしら覚えているものだ。忘れてはいない、ただ……新たな人生の再スタートのために前世の記憶が必要か、そうではないかを勝手に脳が判断しているのかもしれない。
結構、ファンタジーなことを思っているが、そうなんじゃないかと思わずにはいられない。
何せ、前世の記憶がこういう時に役に立つ。
「お久しぶりですね。アイリスさん……いいえ、アイリス子爵令嬢様」
子爵邸のサロンでアイリスさんと向かい合って座っている。
今の姿は、女性の姿なのでドレスを着ているが、足元がスースーして、女性はよく着こなせるなと関心してしまう。
「確か……クロエ様でしたよね」
「はい。この度はお茶会のご招待ありがとうございます」
「い、いえ。他のご令嬢は訳あって来られないそうなので、二人っきりになってしまって申し訳ありませんが……」
「とんでもないです。寧ろ、アイリス様をゆっくりお話出来ると思うと嬉しく思います」
そう、何故子爵邸にいるのかというと、お茶会に招待されたから。
他の令嬢が来ないのは嘘だろう。何せこのお茶会は信用を勝ち取るため、深紅の魔術士の力が必要で、何としても仲良くなる必要があるからだ。
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一作品目の番外編のようなものだけど、ルートに寄っては良いように利用されたんだよな。俺の場合、死亡フラグが無いからそこは安心だけど。
この状況から察するに、物語は終盤に近いのかもしれない。
メインストーリーなので誰ルートなのかまだ分からない。
誰ルートがわかるためにも、ここは女子が好きな恋バナでもしてみようか。
「あ、あの。アイリス様は婚約されたと伺っていますが、お相手様がどのような方なのか存じ上げませんが」
アイリスさんは婚約のためにソフィア様の侍女を辞め、実家に帰った。
ただ、婚約者というのが影が薄いのであまり印象に残らない。ルイス子爵にとっては好都合な男だ。
目立っては今後の計画に支障が出るからな。
「一回だけ、お会いしましたが優しい方ですよ。少し気弱で頼りないですが……」
アイリスさんは下を向いて表情が見えない。
「そうですか、意外ですね。アイリス様にはもっとしっかりしている方がお似合いだと思ってましたが」
その言葉を聞いたアイリスさんは勢いよく俺の顔を見るなり、耳まで真っ赤にした。
一体誰を想像したのかまだ分からない。
「……政略結婚なので、私には断れる理由はありません。それに、子供を産めない私でも結婚してくれる殿方がいるんです。そんな幸運、滅多にありません」
それも知っている。アイリスさんの性格上、家を追い出されたからと言って無視出来ないのも。
本当は好きな人がいるのに自分を偽りで固めている。……誰ルートなのか分からないとソフィア様は死亡フラグを回収してしまう。
それに……壁際にいる侍女の顔色を伺っているようにも見える。
監視されてるんだろう。迂闊なことを言ったら後が大変になるから。
今の言葉だって、決められた台詞を言っているようなものだろう。
「そうでしたか、確かに幸運ですね……お幸せそうでなによりです」
優しく笑うと、アイリスさんは安堵したような笑みを浮かべる。
これ以上の詮索は危ないな。深追いするとソフィア様が死亡フラグになるかもしれない。
三作品目の悪役令嬢もソフィア様なのだから。
一作品目はどのルートでも死亡フラグだったけど、三作品目はルートによっては死んでしまう。
それだけは何としても阻止したい。
今頃はソフィア様のところでも展開が進んでるはずだ。
三作品目での俺の立ち位置はアイリスさんの友人だ。
誰ルートか探りつつも、ルイス子爵の罠にハマったように見せかける。
絶対にソフィア様を死なせない。
スカートの裾を握り、アイリスさんを見た。
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