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第十六章 信頼
蛇みたいな人
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キースさんの爆弾発言に唖然としつつも、イリア様は深いため息をした。
「反応に困りますわね」
「必死に堪えてますので、大丈夫ですよぉ」
「そうなんですの。でしたら、その短剣を閉まって頂けると嬉しいですわ。じゃないと、怪我しますわよ?」
イリア様は棘のある言い方をしているが、表情は明るくにこやかに笑っている。
一方、キースさんも笑顔を絶やさずに話しているが、二人共火花を散っているかのようにピリピリとしていて、とても穏やかな会話とは思えない。
二人の空気が痛々しくてハラハラしながらも見守っているとキースさんと目が合った。
「何か誤解してませんか? 僕は、オリヴァーにしか手を出しません。断言します。オリヴァー程僕の性癖を刺激する人はいませんので」
その一言を聞いてイリア様とノエルがお互いに顔を見合わせた後、安堵の息をした。
「そうなんですのね」
「……ああ、良かった。姉上じゃなくて、てっきり姉上狙いかと」
「えっと、そこではないかと思うのですが……」
安堵している二人には申し訳無いけども私はキースさんの一言が気になってしまって、ついツッコミを入れてしまった。
「キースさんは本当にオリヴァーさんが大好きなのですね。もしかしてその気持ちって……」
キースさんは私の言葉に嬉しそうに口角をあげる。
ーーああ、やっぱりそうだ。
私は思っていることを言葉にした。
「幼馴染として好きすぎるが為に、その思いが歪んでしまったというものですね。分かります! この間ロマンス小説で読みましたので、そっちの耐性はバッチリです!! 愛の形って様々ですものね」
「……はい?」
私は確信をもって言ったというのに、キースさんは驚いていた。
さらにイリア様は口を押さえ、肩を震わしているし、ノエルなんて額に手を当てて「そう来ましたか……」と何やら呆れていた。
「??? え、違うのですか?」
「半分はあってますけど……そうじゃないのですよねぇ。確かに大好きですが、この気持ちは、ただ純粋に苦しめるとどんな表情になるのか、試したくなるんです」
あっ……これって、普通にキースさんの中に眠ってるS心が刺激されて暴走をしているって事なのかな。
これも好きの形なんだろうけど……キースさんは蛇みたいな人だな。
遊びたいのに、気が付くと食べてしまうような……。そんなイメージが頭の中で浮かぶ。
蛇系男子の特徴とは少し違うけども。それは恋愛としての例えなんだろうけど。
ノエルが私の肩にポンッと手を置いて眉間に皺を寄せていた。
「深入れしてしまうと、大変なことになりますので、気になるだろうけど聞かない方が賢明かと。そうじゃなくても姉上は知らず知らずに人の心の奥底に入り込みやすいんですから」
「わ、私、そんな……奥底に入ったつもりは」
ノエルは深いため息をした。
イリア様はクスッと笑ってわざとらしく話を逸らした。
「それにしても、ソフィア様。そのロマンス小説が気になりますわ。どんな内容なんでしょう?」
「はい。確か……幼馴染は異性同士なのですがとても仲が良いんです。ですがある時を境にお互いを意識するようになります。女性は恋愛対象として男性は性的対象として……。けれど、男性は特殊な性癖を持っていました。それが好きな人ほどいたぶりたくなるというものです。まさにキースさんのような方、かなと……思ったのですが……」
チラッと私はキースさんを見ると、苦笑して口を開こうとした時だった。
「くっしゅん」
私は鼻に違和感を覚え、両手で鼻を隠すと盛大にくしゃみをしてしまった。
すっかりと忘れていた。私は今、ずぶ濡れだということを。
くしゃみを聞いたノエルとイリア様の背景から雷鳴のような音が聞こえる。
が、実際に雷が鳴ってる訳ではなく、二人の顔色と不安な表情から雷鳴が鳴っていそうな雰囲気が漂っていた。
「た、大変ですわ!!! お風邪を引いてしまいます」
「僕としたことが、濡れた姉上を放置した挙句、くしゃみをさせてしまうなんて義弟失格です」
ノエルは急いで私の肩に上着をかけてくれた。イリア様は私の手を引いて急いで屋敷の中に入るように促した。
……なんというか、過保護だな。二人共。
キースさんがボソリと「……この短剣と魔法石ならすぐに濡れたところが乾くのに、話を聞かない人達ですねぇ」
と、ため息混じりに微かに聞こえ、私は苦笑するしかなかった。
そのキースさんの独り言は私にしか聞こえなかったようで、複雑な気持ちになった。
ーーイリア様とノエルに合わせて言葉を選ぶからややこしくなったような……。
なんて、そんなことを思っていた。
「反応に困りますわね」
「必死に堪えてますので、大丈夫ですよぉ」
「そうなんですの。でしたら、その短剣を閉まって頂けると嬉しいですわ。じゃないと、怪我しますわよ?」
イリア様は棘のある言い方をしているが、表情は明るくにこやかに笑っている。
一方、キースさんも笑顔を絶やさずに話しているが、二人共火花を散っているかのようにピリピリとしていて、とても穏やかな会話とは思えない。
二人の空気が痛々しくてハラハラしながらも見守っているとキースさんと目が合った。
「何か誤解してませんか? 僕は、オリヴァーにしか手を出しません。断言します。オリヴァー程僕の性癖を刺激する人はいませんので」
その一言を聞いてイリア様とノエルがお互いに顔を見合わせた後、安堵の息をした。
「そうなんですのね」
「……ああ、良かった。姉上じゃなくて、てっきり姉上狙いかと」
「えっと、そこではないかと思うのですが……」
安堵している二人には申し訳無いけども私はキースさんの一言が気になってしまって、ついツッコミを入れてしまった。
「キースさんは本当にオリヴァーさんが大好きなのですね。もしかしてその気持ちって……」
キースさんは私の言葉に嬉しそうに口角をあげる。
ーーああ、やっぱりそうだ。
私は思っていることを言葉にした。
「幼馴染として好きすぎるが為に、その思いが歪んでしまったというものですね。分かります! この間ロマンス小説で読みましたので、そっちの耐性はバッチリです!! 愛の形って様々ですものね」
「……はい?」
私は確信をもって言ったというのに、キースさんは驚いていた。
さらにイリア様は口を押さえ、肩を震わしているし、ノエルなんて額に手を当てて「そう来ましたか……」と何やら呆れていた。
「??? え、違うのですか?」
「半分はあってますけど……そうじゃないのですよねぇ。確かに大好きですが、この気持ちは、ただ純粋に苦しめるとどんな表情になるのか、試したくなるんです」
あっ……これって、普通にキースさんの中に眠ってるS心が刺激されて暴走をしているって事なのかな。
これも好きの形なんだろうけど……キースさんは蛇みたいな人だな。
遊びたいのに、気が付くと食べてしまうような……。そんなイメージが頭の中で浮かぶ。
蛇系男子の特徴とは少し違うけども。それは恋愛としての例えなんだろうけど。
ノエルが私の肩にポンッと手を置いて眉間に皺を寄せていた。
「深入れしてしまうと、大変なことになりますので、気になるだろうけど聞かない方が賢明かと。そうじゃなくても姉上は知らず知らずに人の心の奥底に入り込みやすいんですから」
「わ、私、そんな……奥底に入ったつもりは」
ノエルは深いため息をした。
イリア様はクスッと笑ってわざとらしく話を逸らした。
「それにしても、ソフィア様。そのロマンス小説が気になりますわ。どんな内容なんでしょう?」
「はい。確か……幼馴染は異性同士なのですがとても仲が良いんです。ですがある時を境にお互いを意識するようになります。女性は恋愛対象として男性は性的対象として……。けれど、男性は特殊な性癖を持っていました。それが好きな人ほどいたぶりたくなるというものです。まさにキースさんのような方、かなと……思ったのですが……」
チラッと私はキースさんを見ると、苦笑して口を開こうとした時だった。
「くっしゅん」
私は鼻に違和感を覚え、両手で鼻を隠すと盛大にくしゃみをしてしまった。
すっかりと忘れていた。私は今、ずぶ濡れだということを。
くしゃみを聞いたノエルとイリア様の背景から雷鳴のような音が聞こえる。
が、実際に雷が鳴ってる訳ではなく、二人の顔色と不安な表情から雷鳴が鳴っていそうな雰囲気が漂っていた。
「た、大変ですわ!!! お風邪を引いてしまいます」
「僕としたことが、濡れた姉上を放置した挙句、くしゃみをさせてしまうなんて義弟失格です」
ノエルは急いで私の肩に上着をかけてくれた。イリア様は私の手を引いて急いで屋敷の中に入るように促した。
……なんというか、過保護だな。二人共。
キースさんがボソリと「……この短剣と魔法石ならすぐに濡れたところが乾くのに、話を聞かない人達ですねぇ」
と、ため息混じりに微かに聞こえ、私は苦笑するしかなかった。
そのキースさんの独り言は私にしか聞こえなかったようで、複雑な気持ちになった。
ーーイリア様とノエルに合わせて言葉を選ぶからややこしくなったような……。
なんて、そんなことを思っていた。
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