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第5章 霜降
32.待ち人(二)
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……許さない。
そう言ってやりたいが、手紙で呼び出して会えるくらいなら、とっくに顔を見せに来ているだろう。
手紙を婆ちゃんに託してから一週間以上が過ぎた。
結局何の音沙汰もなく、僕のため息だけが増えていった。
でも、僕は誠と違って超ポジティブ思考だ。諦めることはない。たぶん。
「お兄ちゃん、さっきから何ひとりで騒いでいるの?」
「え? あ、ごめん。モヤモヤ考えごとをしてた」
「キモーいっ」
「アホっぽーい」
「二人とも失礼だな」
僕が一人暮らしを始めてから、初めて妹たちが遊びに来た。実家から電車とバスで少々時間はかかるけれど、十分日帰り可能な距離だ。高校二年生の二葉と中学三年生の三苑にとって、近い将来の独立に向けた下見のつもりらしい。
庭付き戸建てが参考になるとも思えないけれど、別荘気分で楽しいようではある。
「あたしは、一人暮らしするなら絶対きれいな部屋がいい」
「あたしもー!」
それはそうだろう。僕は日当たりと静かな環境を優先しただけだ。
「また来ていい? 今度は泊まりで。ここからだと今宣伝してるテーマパークに行きやすいんだよね」
「あたし、次来たら話題になってる水族館に行きたい! ここから行けばウチより近いし!」
「ハイハイ、いつでもホテル代わりにどうぞ」
「ホテルじゃなくて民宿だよねえ」
「ハイハイ……。そろそろ帰る時間だよな。バス停まで送って行くけど」
「あ、お兄ちゃんに頼まれていた雑誌、置いて帰るね。だけど何に使うのよ、こんな女子高生向けのファッション誌なんかさあ」
「えーと……ちょっと参考に……」
「ねえ、お兄ちゃん! なんか、家の外に怪しい人が立ってる」
窓から庭を眺めていた三苑が、キンキンの声で叫んだ。
「少し前からウロウロしていて怖いんだけど。絶対ウチを覗いていたよ!」
三苑の横から窓の外を見た。敷地の入り口に人影がある。長身で全身黒づくめの男だ。
「マコちゃん⁉︎」
僕は外に飛び出した。
「マコちゃん! マコちゃんだよね⁉︎ 」
誠に逃げられそうな気がして、僕は思わず両腕をつかんだ。見上げるように誠の顔をまじまじと見ると、誠はやや戸惑うように僕を見返してきた。
「あれ? 違う……。マコちゃんが、タンポポじゃない」
「……お前、相変わらずだな」
黒髪の誠は、あきれたように言った。少し照れたように、視線を逸らしてうつむいた。
僕は散々心配してイライラして恥ずかしい思いまでしたのに、こうして話した瞬間に今までのモヤモヤが全て吹き飛んでしまった。
きっと、誠の柔らかい笑顔を見たせいだ。それで僕は安心したのだ。
そう言ってやりたいが、手紙で呼び出して会えるくらいなら、とっくに顔を見せに来ているだろう。
手紙を婆ちゃんに託してから一週間以上が過ぎた。
結局何の音沙汰もなく、僕のため息だけが増えていった。
でも、僕は誠と違って超ポジティブ思考だ。諦めることはない。たぶん。
「お兄ちゃん、さっきから何ひとりで騒いでいるの?」
「え? あ、ごめん。モヤモヤ考えごとをしてた」
「キモーいっ」
「アホっぽーい」
「二人とも失礼だな」
僕が一人暮らしを始めてから、初めて妹たちが遊びに来た。実家から電車とバスで少々時間はかかるけれど、十分日帰り可能な距離だ。高校二年生の二葉と中学三年生の三苑にとって、近い将来の独立に向けた下見のつもりらしい。
庭付き戸建てが参考になるとも思えないけれど、別荘気分で楽しいようではある。
「あたしは、一人暮らしするなら絶対きれいな部屋がいい」
「あたしもー!」
それはそうだろう。僕は日当たりと静かな環境を優先しただけだ。
「また来ていい? 今度は泊まりで。ここからだと今宣伝してるテーマパークに行きやすいんだよね」
「あたし、次来たら話題になってる水族館に行きたい! ここから行けばウチより近いし!」
「ハイハイ、いつでもホテル代わりにどうぞ」
「ホテルじゃなくて民宿だよねえ」
「ハイハイ……。そろそろ帰る時間だよな。バス停まで送って行くけど」
「あ、お兄ちゃんに頼まれていた雑誌、置いて帰るね。だけど何に使うのよ、こんな女子高生向けのファッション誌なんかさあ」
「えーと……ちょっと参考に……」
「ねえ、お兄ちゃん! なんか、家の外に怪しい人が立ってる」
窓から庭を眺めていた三苑が、キンキンの声で叫んだ。
「少し前からウロウロしていて怖いんだけど。絶対ウチを覗いていたよ!」
三苑の横から窓の外を見た。敷地の入り口に人影がある。長身で全身黒づくめの男だ。
「マコちゃん⁉︎」
僕は外に飛び出した。
「マコちゃん! マコちゃんだよね⁉︎ 」
誠に逃げられそうな気がして、僕は思わず両腕をつかんだ。見上げるように誠の顔をまじまじと見ると、誠はやや戸惑うように僕を見返してきた。
「あれ? 違う……。マコちゃんが、タンポポじゃない」
「……お前、相変わらずだな」
黒髪の誠は、あきれたように言った。少し照れたように、視線を逸らしてうつむいた。
僕は散々心配してイライラして恥ずかしい思いまでしたのに、こうして話した瞬間に今までのモヤモヤが全て吹き飛んでしまった。
きっと、誠の柔らかい笑顔を見たせいだ。それで僕は安心したのだ。
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