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1878ー1913 吉澤識
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少し酔いをさましたいと言って先に芸妓を帰らせてから、また二人で盃を交わした。宮田はかなり飲んだのか、私の肩に頭をもたれかけている。
「……吉澤さん。自分はしばらく戻っては来れないかもしれません。長らく世話になりました」
「では、次回は慰労会ですね」
宮田はそれには答えず、ぼんやりと遠い先を見ていた。
「吉澤さん。貴方と飲む酒は、いつもうまかった。いい思いをさせてもらいました。ここに戻って来るたび、ご迷惑とわかっていながら声をかけてしまった」
ゆっくりと私の肩から離れた宮田は、うつむき加減に溜息をついた。
「……大陸から列強を追い出しても、我々が同じことをしたら何も変わらないのです。共存共栄ではなかったのか。自分は理想を語っていますか? なぜ同じアジア人なのに手を取り合うことができない? だから山本さんは……」
「宮田さん!」
私は宮田を強く制した。
山本。江西で目撃されている本国人だ。
山本が江西で現地人と絡んでいるらしいことは先ほど宮田に耳打ちしたが、既に南京周辺で会っていたのか。宮田は既に山本を知っていたのだ。これから江西でも会うつもりなのか。
第二部が革命を煽るのは、大陸の自立と繁栄のためではない。大陸の国力衰退と、混乱に乗じて我が国が影響力を増大させるためだ。山本はそのための要員ではなかったのか。
機密漏洩の疑義で宮田が追っているのは山本に違いない。山本は本気で大陸側についたということか。
宮田と接触してしまった以上、山本は宮田の理想につけ入り引き込むか、宮田を消すしかないだろう。
南京で山本に会った宮田が無事ここに帰ってきた。そして今度は江西へ行く。
宮田、お前は山本に与したということか?
「飲み過ぎましたね」
私は宮田の手から盃を取って膳に置いた。
お前の理想は山本の側にあっても、お前の職務は本国にある。
職務を遂行しろ、宮田。それが嫌なら今すぐ辞職してけじめをつけろ。
「吉澤……さん……」
宮田が話を続ければ、任務に触れる可能性がある。私は軍とは関わりのない貿易商として宮田の前にいる。
これ以上話すな。私に立ち入らせるな。
「……吉澤さん。自分はしばらく戻っては来れないかもしれません。長らく世話になりました」
「では、次回は慰労会ですね」
宮田はそれには答えず、ぼんやりと遠い先を見ていた。
「吉澤さん。貴方と飲む酒は、いつもうまかった。いい思いをさせてもらいました。ここに戻って来るたび、ご迷惑とわかっていながら声をかけてしまった」
ゆっくりと私の肩から離れた宮田は、うつむき加減に溜息をついた。
「……大陸から列強を追い出しても、我々が同じことをしたら何も変わらないのです。共存共栄ではなかったのか。自分は理想を語っていますか? なぜ同じアジア人なのに手を取り合うことができない? だから山本さんは……」
「宮田さん!」
私は宮田を強く制した。
山本。江西で目撃されている本国人だ。
山本が江西で現地人と絡んでいるらしいことは先ほど宮田に耳打ちしたが、既に南京周辺で会っていたのか。宮田は既に山本を知っていたのだ。これから江西でも会うつもりなのか。
第二部が革命を煽るのは、大陸の自立と繁栄のためではない。大陸の国力衰退と、混乱に乗じて我が国が影響力を増大させるためだ。山本はそのための要員ではなかったのか。
機密漏洩の疑義で宮田が追っているのは山本に違いない。山本は本気で大陸側についたということか。
宮田と接触してしまった以上、山本は宮田の理想につけ入り引き込むか、宮田を消すしかないだろう。
南京で山本に会った宮田が無事ここに帰ってきた。そして今度は江西へ行く。
宮田、お前は山本に与したということか?
「飲み過ぎましたね」
私は宮田の手から盃を取って膳に置いた。
お前の理想は山本の側にあっても、お前の職務は本国にある。
職務を遂行しろ、宮田。それが嫌なら今すぐ辞職してけじめをつけろ。
「吉澤……さん……」
宮田が話を続ければ、任務に触れる可能性がある。私は軍とは関わりのない貿易商として宮田の前にいる。
これ以上話すな。私に立ち入らせるな。
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