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2039ー2043 相馬智律
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「すまない、相馬。すまない……」
私は何度も声にした。床に倒れたままリツを引き倒してしがみついた。
お前にもらった人生を私は全うできそうにない。この身体を守ることができない。「魂の器」として完成したであろうイオンに入って、お前の魂と共に永遠を見続けることも叶いそうにない。
謝罪? 違う。ただの独り言でしかない。相馬はここにはいない。どこにもいない。
「シキ。僕に謝られても困ります。僕には相馬の記憶がない……」
リツは申し訳なさそうに言った。
「すまない、リツ」
カイ、お前はなぜ相馬に記憶を残さなかった?
相馬は私を責めない。私がどれほど謝罪しても、リツが困惑するだけだ。
私の甘えは許されないのだ。生き続けようとする限り、謝ることは許されない。私が赦されることもない。私は誰にも罪を認められないまま、自分で罪を背負い続けなければならない。
それを死神は、あの目で見続ける。
カイ、お前も私を責めることはないのだな。ただ見続けて、私に己のやってきたことを忘れさせないのだ。
「シキ……カイがいたんですか? 今の赤ちゃんがカイなんですか⁉︎」
「間違いない。あれは、カイだ」
こんなところに生まれていたのか。こんなに近くにいたのか。
笠原の死後も私は死神の名を呼び続けてきた。それなのに、お前は夢にさえ現れなかった。
私が肉体を失いさまようのを待っているのか。ただ遠くから眺めるだけか。なぜ私のもとに来ない?
カイが欲しい。
カイに強欲の全てを暴かれ、魂を掴まれ、狩られて喰われる。絶望的な歓喜に沈んで狂いたい。魂の痛みに震えて、生きていることを実感したい。
カイは私が恐怖と快楽に正体をなくし、天を見上げるのを待っているのではなかったのか?
「シキ、身体が……震えています。こんなに手が冷たくて、顔も青ざめて、やっぱりカイが……怖いんだ。でも、それなのに……それでも待っている。あなたはカイだけを待っている」
リツは私を温めるように抱きしめてきた。
「ククッ。機械の身体はやはり苦しいな。全身の力加減はまだイオンでも難しいようだ」
「なに笑っているんですか? せっかく優しくしているのに。ねえシキ、僕は相馬ではない。でも、相馬だった。だからあなたの罪を聞いてあげられるはずです。だから、大丈夫だからなんでも言って下さい」
「他人の心を勝手に読むな」
「いいから。声に出して言ったら楽になるでしょう?」
言っただけで楽になるわけがなかろう。
私はリツに慰められているのか。情けない。
「……ならば懺悔する。相馬の荷物を全て捨てた。相馬を下品な男にした。相馬が嫌いな高瀬に身体を触らせた」
「はい? それが重大な罪ですか? 最後のは何? セクハラ⁉︎」
「手を掴まれた」
「それだけ?」
「相馬の身体は嫌がっていた」
「……」
私はリツを突き放して背を向けた。どうでもいいことを話して気が紛れた自分を悟られたくなかった。
そうだ。思い出せ。
もし目の前に相馬がいても、やはり相馬は私を責めないだろう。
私は身勝手にも後悔はしない。相馬は常に前を向いている。相馬は私に未来を託したわけではない。相馬自身が未来を作ろうとしたのだ。
だからこそ、ここにリツがいる。
我々はバカの同志だったはずだ。
諦めるな。未来を見続けろ。
私は何度も声にした。床に倒れたままリツを引き倒してしがみついた。
お前にもらった人生を私は全うできそうにない。この身体を守ることができない。「魂の器」として完成したであろうイオンに入って、お前の魂と共に永遠を見続けることも叶いそうにない。
謝罪? 違う。ただの独り言でしかない。相馬はここにはいない。どこにもいない。
「シキ。僕に謝られても困ります。僕には相馬の記憶がない……」
リツは申し訳なさそうに言った。
「すまない、リツ」
カイ、お前はなぜ相馬に記憶を残さなかった?
相馬は私を責めない。私がどれほど謝罪しても、リツが困惑するだけだ。
私の甘えは許されないのだ。生き続けようとする限り、謝ることは許されない。私が赦されることもない。私は誰にも罪を認められないまま、自分で罪を背負い続けなければならない。
それを死神は、あの目で見続ける。
カイ、お前も私を責めることはないのだな。ただ見続けて、私に己のやってきたことを忘れさせないのだ。
「シキ……カイがいたんですか? 今の赤ちゃんがカイなんですか⁉︎」
「間違いない。あれは、カイだ」
こんなところに生まれていたのか。こんなに近くにいたのか。
笠原の死後も私は死神の名を呼び続けてきた。それなのに、お前は夢にさえ現れなかった。
私が肉体を失いさまようのを待っているのか。ただ遠くから眺めるだけか。なぜ私のもとに来ない?
カイが欲しい。
カイに強欲の全てを暴かれ、魂を掴まれ、狩られて喰われる。絶望的な歓喜に沈んで狂いたい。魂の痛みに震えて、生きていることを実感したい。
カイは私が恐怖と快楽に正体をなくし、天を見上げるのを待っているのではなかったのか?
「シキ、身体が……震えています。こんなに手が冷たくて、顔も青ざめて、やっぱりカイが……怖いんだ。でも、それなのに……それでも待っている。あなたはカイだけを待っている」
リツは私を温めるように抱きしめてきた。
「ククッ。機械の身体はやはり苦しいな。全身の力加減はまだイオンでも難しいようだ」
「なに笑っているんですか? せっかく優しくしているのに。ねえシキ、僕は相馬ではない。でも、相馬だった。だからあなたの罪を聞いてあげられるはずです。だから、大丈夫だからなんでも言って下さい」
「他人の心を勝手に読むな」
「いいから。声に出して言ったら楽になるでしょう?」
言っただけで楽になるわけがなかろう。
私はリツに慰められているのか。情けない。
「……ならば懺悔する。相馬の荷物を全て捨てた。相馬を下品な男にした。相馬が嫌いな高瀬に身体を触らせた」
「はい? それが重大な罪ですか? 最後のは何? セクハラ⁉︎」
「手を掴まれた」
「それだけ?」
「相馬の身体は嫌がっていた」
「……」
私はリツを突き放して背を向けた。どうでもいいことを話して気が紛れた自分を悟られたくなかった。
そうだ。思い出せ。
もし目の前に相馬がいても、やはり相馬は私を責めないだろう。
私は身勝手にも後悔はしない。相馬は常に前を向いている。相馬は私に未来を託したわけではない。相馬自身が未来を作ろうとしたのだ。
だからこそ、ここにリツがいる。
我々はバカの同志だったはずだ。
諦めるな。未来を見続けろ。
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