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2043ー2057 高瀬邦彦
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高瀬の現在の仕事は主にアンドロイドのメンテナンスだ。
NH社製の接客アンドロイドを卸先まで出向いて点検して回る。いわば往診だ。
「邦彦様、今日もありがとうございます」
どこへ行ってもアンドロイドに名前で呼ばれる。店主も、無駄に貫禄と色気のある男前が羞恥にとまどうのを喜んでいる。
お前はアンドロイドが本当に好きだな。こんなに生き生きとした高瀬に、もっと早く会いたかった。
「ずっとメカニックだったら、あなたに会わずに済んだ」
それもそうだ。
私と会うことがなければ、私がこの時代に存在しなければ、お前は今とは全く別のもっとマシな人生を送っていたな。……照陽にお祓いを頼むか?
「今さら何を言い出す? 私は適応力が高い。耐性も高い。こうして仕事帰りに独り言をつぶやくのにも慣れた。だいたい、本気で私に悪いと思ってここを出て行く気なら十五年前に言え。心にもない言葉を吐くな」
日暮れが近いが、商業ビルが建ち並ぶ繁華街の通りはあちこちの店内から人波を縫うように光が漏れ出ている。蛍光色のライトが、昼よりも明るく夜を彩り始める。
ジジ……ジジ……。
お前はICチップを入れたままにするのか? ただのヒラ社員にはもう必要なかろうに。
「私にその気がなくとも、会社を乗っ取られる不安を勝手に抱く連中がいるからな。面倒を避けたいだけだ。これは社畜の証だ」
難儀だな。私が貿易商だった時代にこんなものはなかったし、あっても断固拒否しただろうな。
「あなたはそもそも跡取りだったろう。私とは立場が違う……」
ふと高瀬が中層階ビルを見上げた。屋上が騒がしい。
怒鳴るような叫び声と、いくつもの照明と、ビルの入り口付近に停まった数台のパトカーで、周辺は緊迫した空気に包まれている。
「飛ぶ気だな」
高瀬の声が重い。繁華街周辺では近年、ビルからの飛び降り事件が後を絶たない。立ち入り禁止にしても屋上まで行く方法がSNSで出回る始末で、年々件数が増えている。
「飛ぶのは経済的な生活窮困者ではなく、精神を病んだ者がほとんどだ。特に増えている理由が、メタバースや複合現実が日常になって虚実の境があいまいになったとか、他人と繋がるコンテンツの中で対人トラブルから抜け出せなくなったとかいうものらしい。あくまでも推測だがな。ああ、これはNH社の弁護士から聞いた話だ。ニュースでは事件があったことすら伝えない。統計調査は件数のみの発表で、詳細には触れていない」
怖いな……。
繁華街にいる者たちは全く気にした様子がない。野次馬が集まらないのはもちろんのこと、ビルを見上げる者すらいない。
しょせんは他人事である。関わらないのは妥当な判断といえる。だが、私が見る光景にはもっと異様な、根本的な違和感を感じるのだ。
誰も気づいていない。
まるで別世界のように、見えていない。認識していない。
なあ、高瀬。商業用接客タイプのアンドロイドはフォーカス範囲が狭いから、ここからビルの屋上を認識しないのは当然としても、リアルアバターの人間にもアレが見えていないのか?
「見えないだろうな。アバターを操作する人間は、ライブ中継のようでありながらリアルな映像ではなく加工処理された景色を見ている。機密や不都合な情報は当然排除済みだ。リアルアバターのセンサーを介在させた複合現実の中では、ビルから飛ぶ人間など存在しない」
あっても見えないのか。いや、見せない。
「別に今に始まったことではない。情報なんてそんなものだろう? リアルアバターはメディアの報道倫理ガイドラインに基準を合わせているだけだ」
圧倒的に管理された世界。だが、強権発動の動機は善意だ。目的は管理者の私利ではなく有害情報の排除、公益。
そもそもリアルアバターは五感情報を最適化してある。閾値外の過剰な信号は自動的に遮断されている。
判断を全て機械に任せた、安全で快適な楽園か。
生きている実感が、希薄だ。
この世から生きる実感が薄れていく。
「そう嘆くな。これは我々自身が作り、選択した世界だ」
高瀬は楽しくなさそうに笑った。嘆いているのは高瀬の方だろう。
「……シキは私と出会ったのが運の尽きだ。おとなしく諦めろ」
お前から出られないことか? それはとっくに受け入れている。この湿度の高さにも慣れたつもりだ。
「私の人生につきあうことになった不運を言っている。私の人生はあなたに出会わなければ全く違うものになっていた……確かにそうかもしれないが、あなたがいなくても結局同じだったかもしれない。明るい世界に出ることはなく、裏方仕事といっても褒められたものでもなく、成功を祝う日は来ない。きっと私にはこの生き方しかできなかった。いかにも私向きの人生だ。私に後悔はないが、静かに衰退するこの国にあってもこの時代を謳歌できる人間は山ほどいるのだから、シキはそういう誰かに取り憑いて道楽息子らしくもっとこの世を楽しみ遊ぶべきだったのだ。私と見てきた世界に楽しい景色はなかっただろう?」
お前こそ、何を今さらだ。お前はリアルアバターではない。楽しいものだけ見せてもらわなくても結構だ。私は第二部の出身で、お前と同じようにいわば裏方仕事をしていた。大陸では諜報の手伝いをしていたが、しっかり道楽三昧だったぞ。お前は不器用だ。もっと遊べと言っただろう? そんなだからいつまで経ってもジメジメと後ろ向きなのだ。
「なぜあなたが私を慰める? この世を嘆いていたのはシキだろう」
高瀬は自分のやったことを後悔しない。だが、懺悔し自分を卑下し続けている。だから鬱陶しい。
どこに向かって罪の告白をするのか知らないが、きっと照陽ではないだろう。意識の空間を占拠する鉄壁の倉庫の中か。ひとり倉庫に向かって叫ぶ高瀬を想像して、ますます鬱陶しくなった。
「永遠を生きられる、か。シキ……あなたはいつまで生きる気だ? まあ、どんな世界になっていこうと、あなたはそれを見続けるのだろうな」
私は既に気づいている。「魂の器」であるイオンに入ることはきっと叶わない。
たとえ「魂の器」を手に入れても、死神の言うとおり行きつく先は魂の終焉なのだろう。
それでも、私はこの世にこだわり続けている。この世に在りたい。生きている感覚を手放したくない。
生きたいと望むのは本能だ。見続けたい未来とは、自分が生きる世界のことだ。
ならば、肉体を失ってあの世へ帰るのも本能ではないのか。魂が朽ちるまでこの世にとどまろうとするのは、魂の存続に反することではないのか。
もはや執着、いや依存か。きっと重度の依存症に違いない。この世の依存症だ。今の世界の現状を笑っていられないな。
私は魂が消滅する最期の瞬間まで、この世を離れられそうにない。私に後悔はないが、死神は嘆くだろうか。
私は長生きし過ぎたのだ。この世から引き剥がされる恐怖と、生きる感覚の快感を知ってしまった。それを教えたのは、私をあの世へと誘う死神自身ではないか。酷い話だ。
「私はもう、十分だな。十分、生きた……」
高瀬はぼつりと言った。
ぼんやりと見上げる先のビルの屋上は、いつの間にか静かになっていた。少し前に衝撃音を聞いた気がするが、路上を歩く人たちは変わらず楽しそうに通り過ぎて行く。
「シキ……私になるか?」
お前、何を言って……?
高瀬の溜息が、一瞬の緊張を吐き出した。
「……いや、何でもない。忘れてくれ。親に溺愛されて何不自由なく育ち、裏道を歩きながら堂々と下品に道楽三昧だった大金持ちのボンボンへの嫉妬だ。ははっ、理由になっていないな」
高瀬は気の置けない友人のように笑った。
ドンッ。
混雑する歩道で、背後から誰かが倒れ込むように肩にぶつかってきた。
わずかに振り向くと、十代半ばくらいの少年がこちらを見据えている。
「高瀬さんですね」
口もとだけで笑顔を作った大人びた表情。私はかつて見たことがある……。
秋山正二だ。
死神か⁉︎
私が高瀬の意識の中で叫ぶのと同時に、これまでずっと遠くに聞こえていた機械音が消えた。
「クッ……!」
高瀬の激痛を私も感じた。
少年は高瀬の肩に突き刺していた刃物を素早く引き抜くと、今度は背中に刃を押し当てた。
「高瀬さん、お疲れ様でした」
静かにそれだけ言うと、少年は何事もなかったかのように刃物を上着に隠し、高瀬を追い越してゆっくりと雑踏に消えた。
「待……て……」
歩道に崩れ落ちる高瀬は息が荒く、声を出すこともできない。
高瀬! 高瀬⁉︎
高瀬は朦朧としながら街路樹の植え込みに近づくと、そのままガードレール脇に倒れ込んだ。
NH社製の接客アンドロイドを卸先まで出向いて点検して回る。いわば往診だ。
「邦彦様、今日もありがとうございます」
どこへ行ってもアンドロイドに名前で呼ばれる。店主も、無駄に貫禄と色気のある男前が羞恥にとまどうのを喜んでいる。
お前はアンドロイドが本当に好きだな。こんなに生き生きとした高瀬に、もっと早く会いたかった。
「ずっとメカニックだったら、あなたに会わずに済んだ」
それもそうだ。
私と会うことがなければ、私がこの時代に存在しなければ、お前は今とは全く別のもっとマシな人生を送っていたな。……照陽にお祓いを頼むか?
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日暮れが近いが、商業ビルが建ち並ぶ繁華街の通りはあちこちの店内から人波を縫うように光が漏れ出ている。蛍光色のライトが、昼よりも明るく夜を彩り始める。
ジジ……ジジ……。
お前はICチップを入れたままにするのか? ただのヒラ社員にはもう必要なかろうに。
「私にその気がなくとも、会社を乗っ取られる不安を勝手に抱く連中がいるからな。面倒を避けたいだけだ。これは社畜の証だ」
難儀だな。私が貿易商だった時代にこんなものはなかったし、あっても断固拒否しただろうな。
「あなたはそもそも跡取りだったろう。私とは立場が違う……」
ふと高瀬が中層階ビルを見上げた。屋上が騒がしい。
怒鳴るような叫び声と、いくつもの照明と、ビルの入り口付近に停まった数台のパトカーで、周辺は緊迫した空気に包まれている。
「飛ぶ気だな」
高瀬の声が重い。繁華街周辺では近年、ビルからの飛び降り事件が後を絶たない。立ち入り禁止にしても屋上まで行く方法がSNSで出回る始末で、年々件数が増えている。
「飛ぶのは経済的な生活窮困者ではなく、精神を病んだ者がほとんどだ。特に増えている理由が、メタバースや複合現実が日常になって虚実の境があいまいになったとか、他人と繋がるコンテンツの中で対人トラブルから抜け出せなくなったとかいうものらしい。あくまでも推測だがな。ああ、これはNH社の弁護士から聞いた話だ。ニュースでは事件があったことすら伝えない。統計調査は件数のみの発表で、詳細には触れていない」
怖いな……。
繁華街にいる者たちは全く気にした様子がない。野次馬が集まらないのはもちろんのこと、ビルを見上げる者すらいない。
しょせんは他人事である。関わらないのは妥当な判断といえる。だが、私が見る光景にはもっと異様な、根本的な違和感を感じるのだ。
誰も気づいていない。
まるで別世界のように、見えていない。認識していない。
なあ、高瀬。商業用接客タイプのアンドロイドはフォーカス範囲が狭いから、ここからビルの屋上を認識しないのは当然としても、リアルアバターの人間にもアレが見えていないのか?
「見えないだろうな。アバターを操作する人間は、ライブ中継のようでありながらリアルな映像ではなく加工処理された景色を見ている。機密や不都合な情報は当然排除済みだ。リアルアバターのセンサーを介在させた複合現実の中では、ビルから飛ぶ人間など存在しない」
あっても見えないのか。いや、見せない。
「別に今に始まったことではない。情報なんてそんなものだろう? リアルアバターはメディアの報道倫理ガイドラインに基準を合わせているだけだ」
圧倒的に管理された世界。だが、強権発動の動機は善意だ。目的は管理者の私利ではなく有害情報の排除、公益。
そもそもリアルアバターは五感情報を最適化してある。閾値外の過剰な信号は自動的に遮断されている。
判断を全て機械に任せた、安全で快適な楽園か。
生きている実感が、希薄だ。
この世から生きる実感が薄れていく。
「そう嘆くな。これは我々自身が作り、選択した世界だ」
高瀬は楽しくなさそうに笑った。嘆いているのは高瀬の方だろう。
「……シキは私と出会ったのが運の尽きだ。おとなしく諦めろ」
お前から出られないことか? それはとっくに受け入れている。この湿度の高さにも慣れたつもりだ。
「私の人生につきあうことになった不運を言っている。私の人生はあなたに出会わなければ全く違うものになっていた……確かにそうかもしれないが、あなたがいなくても結局同じだったかもしれない。明るい世界に出ることはなく、裏方仕事といっても褒められたものでもなく、成功を祝う日は来ない。きっと私にはこの生き方しかできなかった。いかにも私向きの人生だ。私に後悔はないが、静かに衰退するこの国にあってもこの時代を謳歌できる人間は山ほどいるのだから、シキはそういう誰かに取り憑いて道楽息子らしくもっとこの世を楽しみ遊ぶべきだったのだ。私と見てきた世界に楽しい景色はなかっただろう?」
お前こそ、何を今さらだ。お前はリアルアバターではない。楽しいものだけ見せてもらわなくても結構だ。私は第二部の出身で、お前と同じようにいわば裏方仕事をしていた。大陸では諜報の手伝いをしていたが、しっかり道楽三昧だったぞ。お前は不器用だ。もっと遊べと言っただろう? そんなだからいつまで経ってもジメジメと後ろ向きなのだ。
「なぜあなたが私を慰める? この世を嘆いていたのはシキだろう」
高瀬は自分のやったことを後悔しない。だが、懺悔し自分を卑下し続けている。だから鬱陶しい。
どこに向かって罪の告白をするのか知らないが、きっと照陽ではないだろう。意識の空間を占拠する鉄壁の倉庫の中か。ひとり倉庫に向かって叫ぶ高瀬を想像して、ますます鬱陶しくなった。
「永遠を生きられる、か。シキ……あなたはいつまで生きる気だ? まあ、どんな世界になっていこうと、あなたはそれを見続けるのだろうな」
私は既に気づいている。「魂の器」であるイオンに入ることはきっと叶わない。
たとえ「魂の器」を手に入れても、死神の言うとおり行きつく先は魂の終焉なのだろう。
それでも、私はこの世にこだわり続けている。この世に在りたい。生きている感覚を手放したくない。
生きたいと望むのは本能だ。見続けたい未来とは、自分が生きる世界のことだ。
ならば、肉体を失ってあの世へ帰るのも本能ではないのか。魂が朽ちるまでこの世にとどまろうとするのは、魂の存続に反することではないのか。
もはや執着、いや依存か。きっと重度の依存症に違いない。この世の依存症だ。今の世界の現状を笑っていられないな。
私は魂が消滅する最期の瞬間まで、この世を離れられそうにない。私に後悔はないが、死神は嘆くだろうか。
私は長生きし過ぎたのだ。この世から引き剥がされる恐怖と、生きる感覚の快感を知ってしまった。それを教えたのは、私をあの世へと誘う死神自身ではないか。酷い話だ。
「私はもう、十分だな。十分、生きた……」
高瀬はぼつりと言った。
ぼんやりと見上げる先のビルの屋上は、いつの間にか静かになっていた。少し前に衝撃音を聞いた気がするが、路上を歩く人たちは変わらず楽しそうに通り過ぎて行く。
「シキ……私になるか?」
お前、何を言って……?
高瀬の溜息が、一瞬の緊張を吐き出した。
「……いや、何でもない。忘れてくれ。親に溺愛されて何不自由なく育ち、裏道を歩きながら堂々と下品に道楽三昧だった大金持ちのボンボンへの嫉妬だ。ははっ、理由になっていないな」
高瀬は気の置けない友人のように笑った。
ドンッ。
混雑する歩道で、背後から誰かが倒れ込むように肩にぶつかってきた。
わずかに振り向くと、十代半ばくらいの少年がこちらを見据えている。
「高瀬さんですね」
口もとだけで笑顔を作った大人びた表情。私はかつて見たことがある……。
秋山正二だ。
死神か⁉︎
私が高瀬の意識の中で叫ぶのと同時に、これまでずっと遠くに聞こえていた機械音が消えた。
「クッ……!」
高瀬の激痛を私も感じた。
少年は高瀬の肩に突き刺していた刃物を素早く引き抜くと、今度は背中に刃を押し当てた。
「高瀬さん、お疲れ様でした」
静かにそれだけ言うと、少年は何事もなかったかのように刃物を上着に隠し、高瀬を追い越してゆっくりと雑踏に消えた。
「待……て……」
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