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「そうそう、そうやったら完成」
おばあちゃんは言った。
「うん」
僕はそしておはぎを皿へと持っていった。そしてそのうちの一個を別の小皿に取り分けて持っていく。
「どうするの、その一個?」
「お母さんに上げる」
「そう」
僕はそうして台所を抜けた。
部屋に入り、仏壇の前に座る。そしておはぎを置いた。おりんを鳴らして、手を合わせる。
僕は仏壇の前から立ち、台所へ行った。
「おばあちゃん、立てる?」
「ありがとうね」
僕はおばあちゃんに手を貸して、そうしながら居間のほうへと歩いていった。そしていすに座らせた。
「じゃあ待っていてね、おはぎを持ってくるから」
そういって台所へ行こうとする。するとチャイムが鳴った。
僕は玄関へと出て行った。玄関の前には友人の雅人君がいた。
「公園に二度とお目にかかれないようなものがあるぜ。見に来ないか?」
「え?そんなに珍しいものなの?」
「そりゃあもう。ナイアガラの滝やサグラダファミリアなんかよりもよっぽど珍しいぜ」
「そうかい。そんなら行くよ。先に行っていていいよ」
「おう」
雅人君はそうして走っていった。
「おばあちゃん。ちょっと外に出かけてくるよ」
「どうしたの?」
「なんか公園にナイアガラの滝やサグラダファミリアよりも珍しいものがあるみたい」
「そうかい。なら私も見に連れて行ってくれるかい?」
「おばあちゃんも?いいよ」
僕はおばあちゃんを車いすに乗せた。
外へ行くと、公園の周りには人だかりができていた。近所じゅうの人間が集まっているものと思われた。
「え、空。君、おばあちゃんもつれてきたのか」
「なんで」
「あー、ナイアガラの滝なんかと比べたのがよくなかったかもしれないな。悪いことをしたかもしれない」
「どうしたんだよ」
「いや、ここまで来たら僕に訊くより見たほうが早いぜ。まあ、公園の真ん中あたりにあるから見てみろよ」
そういわれて僕はおばあちゃんと一緒にそれを見た。
そして公園の真ん中に生首が一つあるのが見えた。
のちにあの生首についていろいろの話をクラスの人間から聞いた。それらのことをまとめると、大方こうなる。
朝になって、毎朝ジョギングのために公園を通るおじいさんが一番初めに発見はしていたらしい。ところがその時にはただバケツがかぶさっているばかりで、おじいさんもまさか生首があるとは思わなかった。そのために無視してとおっていってしまった。
やがて午前九時頃になって、子供が公園に遊びに来た。そこでバケツの存在に気が付いた。子供たちはバケツのところへ近づき、それをとって見たところあの生首を発見したというのだった。
今まで生首と言っていたが、公園にあったのは決して頭だけではなかった。頭より下は地面に埋まっていたという。
死んだ理由は窒息死だということであった。犯人と思しき人間は見つかっていないという。
これよりほかにも、近所のニートが犯人だとかそういった噂を聞くこともできた。しかしそれらはどれも憶測であり、信憑性のない話であったので割愛した。
しかしそうした憶測が流れたりすることも無理もないと思われた。とにかくこの度起こった事件は甚だ理解しがたい事件であるように思える。
なぜわざわざ体中を地面に埋めて首だけを外に出すような真似をしたのだろうか。地面は固く、掘ることは難儀である。さらに言えば、地面を掘ることに長い時間を費やしたはずなのに、その間誰一人としてその様子を見られなかったというのはどういうことなのか。
そしてなぜ頭にバケツがかぶせてあったのだろうか。死体発見を遅らせるためと考えても、おかしいように感ずる。死体を見つけてほしくなければ山奥にでも埋めてくればいいものを。しかしそれよりほかに理由がとんと思いつかぬ。
さらにその三日後、またもやその公園で、まったく同じように首以外を埋められた死体が発見された。
その時もおばあちゃんは見たいと言い出した。
「そんな、あんなものを見て何が楽しいのさ?」
「楽しいわけじゃないの。ただね、どうしても確認しておきたいことがあるだけなの」
「それって何?」
「だれが殺されたかってこと。ちゃんとした理由があってのことなのよ。でも理由はまだ言えないの。ごめんね」
そこまで言われると、僕もつれて行かざるを得なかった。
「車いす、出すよ」
「ごめんね。いつか必ず教えてあげるからね」
おばあちゃんは言った。
それからも日をおいてたびたび首以外が埋まった死体が出てきた。その度におばあちゃんは見に行った。
或日のことだった。学校から帰ると、おばあちゃんの他の誰かの声が聞こえた。それは男の人の声だった。
居間へ行ってみると、おばあちゃんと男の人がいた。男の人は髪がのっぺりとしていた。髪にポマードをべったりとつけたような状態に見えた。それでいてやけににやついていいて気味が悪かった。
何よりも驚いたのはその匂いだった。まるで硫黄のような臭いにおいが男から立ち込めているのだ。
「こんにちは」
男は言った。
「こんにちは」
おばあちゃんは僕の方を見て言った。
「ただいま」
「お帰り。お茶を今淹れてくるね」
「必要ないわ。そういうお客さんじゃないの、この人は」
そういうお客さんでなければどういうお客さんなのか、僕にはちょっと解しかねた。それでもいらないというから、僕はお茶を出さないことにした。
「それじゃあ、空君も帰ってきたことですしね」
「あなたの汚らわしい口からこの子の名前を出さないでちょうだい。さもないと」
「ええ、わかりましたよ、わかりましたとも。黙って帰ります」
そういって男の人は玄関から出て行った。
「あの人、誰なの」
「あとで教えてあげるわ」
おばあちゃんはそれだけしか言わなかった。
そうしてとうとう、死体は五つにまでなった。
そして五つの死体が見つかった翌日のことだった。おばあちゃんは息を引き取っていた。
僕がそのことを知ったのは朝にの時だった。あんまりおばあちゃんの起きるのが遅いので起こしに行ったのだ。
おばあちゃんは眠っているように見えた。ところがいつもとは違って、おばあちゃんの枕元に『空君へ』と書かれた封筒が置いてあった。
僕はそんなものが置いてある理由が一瞬、わからなかった。手紙なんぞ書かなくたって、口で言えばいいだけのことなのにと思った。
それから口で言えないから手紙にしたのだと思い、そのあとに口で言えないのは死んでしまうと思ったからではないかと思い始めた。
僕はおばあちゃんの口元に手をやった。呼気が手に当たらなかった。脈を診た。なにも指を打つものはなかった。
僕は呆然としてしまって、床に座り込んだ。しばらく座り込んで、ようやく分別が少しだけ戻ってきた後に、救急車を呼んだ。
僕はおばあちゃんのことでひと段落がついてから、手紙を読み始めた。
結局、病院まで行ってみたがおばあちゃんの死の真相がまるでつかめなかったのである。病院の先生が言うことには心臓麻痺よりほかにはっきりとしたことを言ってくれなかった。毒で死んだりしたというわけではないという。
心臓麻痺が予知できるわけがない。しかし自分が死ぬことを予見しないで、手紙を残す理由がわからなかった。
僕は真相を手紙に求めた。それだから家に帰ってすぐに手紙を読み始めたのだった。
「空君にはどうしても面と向かっては言えないようなことだったので、手紙の上で伝えます。どうして伝えることができないのかといえば、それがあまりにひどいことで、恐ろしいことだからです。そういったわけでわざわざ手紙にして伝えます。
まず、あの五人の男を殺したのは私です。と言っても、私自身が殺したのではありません。悪魔に頼んでやってもらったのです。家に男の人が来ていたことがあったでしょう。あの男がそうです。
どうしてあの男たちを殺す必要があったのかといえば、それはあなたのお母さんのことに関係があるのです。
私はお母さんの死の真相を知るために、悪魔を召還しました。その時に引き換えにしたのは腕だけでした。
悪魔はちゃんと呼び出すことができました。また、制御にも成功していました。一言、神に言いつけるぞと言いさえすればすっかり怯えて、へりくだってばかりいました。
さて、そうしたわけでお母さんの死の真相を知ることができました。
お母さんが仕事に出かけてから、帰り道にお母さんはあの五人に出会ったのです。当時お母さんは仕事の帰りが遅かったし、あの五人と出会うのは仕方のないことです。
あの五人は麻薬や賭博にまで手を出すどうしようもない悪党でした。やつらはお母さんを連れ去らってしまって、殺してしまったのです。具体的にどんなことがあって、どういう殺し方をしたのかは聞きましたけれども、言いません。私はそれを聞いた時、悲しみと憤りと嫌悪のあまり、涙を流しました。空君にまで同じ思いはさせたくありません。
私はそうしたことを聞いて、どうあっても復讐しなくてはいけないと思いました。
私が死んでしまったら、空君は家で一人ぼっちになってしまうとは思ったのですけれど、どうしてもあの五人を殺さずにはいられなかったのです。このことはどうしても空君に謝らなくてはいけないと思います。
ああした殺し方をしたことも、復讐に含まれています。首だけをさらしておいて、死後も辱めようとしたわけです。バケツをかぶせたのは野犬などに見つからないようにするためです。もし万が一食い荒らされたりなどしたら、悪魔が誰を殺したのか確認できませんから。
私が毎日空君に言ってあそこへ連れて行ってもらっていたのは、悪魔がきちんと約束を守っているか見るためだったのです。そしてその男たちは全員が全員、悪魔がお母さんを殺したと言っていた五人であることを確認しました。
五人が死んで、私は悪魔へと命を引き渡さなければなりません。この手紙を書いている今、悪魔はそばにいて私を連れ去ろうとしています。この手紙を最後に書くだけの時間をもらっているのです。
私はあなたを愛しています。たとえ私が死んでも、あなたが私を忘れない限り、私は生き続けることができるのです。だからどうか悲しまないようにしてくださいね。そして悲しいにとらわれることなく、これからを生きて行ってくださいね」
おばあちゃんは言った。
「うん」
僕はそしておはぎを皿へと持っていった。そしてそのうちの一個を別の小皿に取り分けて持っていく。
「どうするの、その一個?」
「お母さんに上げる」
「そう」
僕はそうして台所を抜けた。
部屋に入り、仏壇の前に座る。そしておはぎを置いた。おりんを鳴らして、手を合わせる。
僕は仏壇の前から立ち、台所へ行った。
「おばあちゃん、立てる?」
「ありがとうね」
僕はおばあちゃんに手を貸して、そうしながら居間のほうへと歩いていった。そしていすに座らせた。
「じゃあ待っていてね、おはぎを持ってくるから」
そういって台所へ行こうとする。するとチャイムが鳴った。
僕は玄関へと出て行った。玄関の前には友人の雅人君がいた。
「公園に二度とお目にかかれないようなものがあるぜ。見に来ないか?」
「え?そんなに珍しいものなの?」
「そりゃあもう。ナイアガラの滝やサグラダファミリアなんかよりもよっぽど珍しいぜ」
「そうかい。そんなら行くよ。先に行っていていいよ」
「おう」
雅人君はそうして走っていった。
「おばあちゃん。ちょっと外に出かけてくるよ」
「どうしたの?」
「なんか公園にナイアガラの滝やサグラダファミリアよりも珍しいものがあるみたい」
「そうかい。なら私も見に連れて行ってくれるかい?」
「おばあちゃんも?いいよ」
僕はおばあちゃんを車いすに乗せた。
外へ行くと、公園の周りには人だかりができていた。近所じゅうの人間が集まっているものと思われた。
「え、空。君、おばあちゃんもつれてきたのか」
「なんで」
「あー、ナイアガラの滝なんかと比べたのがよくなかったかもしれないな。悪いことをしたかもしれない」
「どうしたんだよ」
「いや、ここまで来たら僕に訊くより見たほうが早いぜ。まあ、公園の真ん中あたりにあるから見てみろよ」
そういわれて僕はおばあちゃんと一緒にそれを見た。
そして公園の真ん中に生首が一つあるのが見えた。
のちにあの生首についていろいろの話をクラスの人間から聞いた。それらのことをまとめると、大方こうなる。
朝になって、毎朝ジョギングのために公園を通るおじいさんが一番初めに発見はしていたらしい。ところがその時にはただバケツがかぶさっているばかりで、おじいさんもまさか生首があるとは思わなかった。そのために無視してとおっていってしまった。
やがて午前九時頃になって、子供が公園に遊びに来た。そこでバケツの存在に気が付いた。子供たちはバケツのところへ近づき、それをとって見たところあの生首を発見したというのだった。
今まで生首と言っていたが、公園にあったのは決して頭だけではなかった。頭より下は地面に埋まっていたという。
死んだ理由は窒息死だということであった。犯人と思しき人間は見つかっていないという。
これよりほかにも、近所のニートが犯人だとかそういった噂を聞くこともできた。しかしそれらはどれも憶測であり、信憑性のない話であったので割愛した。
しかしそうした憶測が流れたりすることも無理もないと思われた。とにかくこの度起こった事件は甚だ理解しがたい事件であるように思える。
なぜわざわざ体中を地面に埋めて首だけを外に出すような真似をしたのだろうか。地面は固く、掘ることは難儀である。さらに言えば、地面を掘ることに長い時間を費やしたはずなのに、その間誰一人としてその様子を見られなかったというのはどういうことなのか。
そしてなぜ頭にバケツがかぶせてあったのだろうか。死体発見を遅らせるためと考えても、おかしいように感ずる。死体を見つけてほしくなければ山奥にでも埋めてくればいいものを。しかしそれよりほかに理由がとんと思いつかぬ。
さらにその三日後、またもやその公園で、まったく同じように首以外を埋められた死体が発見された。
その時もおばあちゃんは見たいと言い出した。
「そんな、あんなものを見て何が楽しいのさ?」
「楽しいわけじゃないの。ただね、どうしても確認しておきたいことがあるだけなの」
「それって何?」
「だれが殺されたかってこと。ちゃんとした理由があってのことなのよ。でも理由はまだ言えないの。ごめんね」
そこまで言われると、僕もつれて行かざるを得なかった。
「車いす、出すよ」
「ごめんね。いつか必ず教えてあげるからね」
おばあちゃんは言った。
それからも日をおいてたびたび首以外が埋まった死体が出てきた。その度におばあちゃんは見に行った。
或日のことだった。学校から帰ると、おばあちゃんの他の誰かの声が聞こえた。それは男の人の声だった。
居間へ行ってみると、おばあちゃんと男の人がいた。男の人は髪がのっぺりとしていた。髪にポマードをべったりとつけたような状態に見えた。それでいてやけににやついていいて気味が悪かった。
何よりも驚いたのはその匂いだった。まるで硫黄のような臭いにおいが男から立ち込めているのだ。
「こんにちは」
男は言った。
「こんにちは」
おばあちゃんは僕の方を見て言った。
「ただいま」
「お帰り。お茶を今淹れてくるね」
「必要ないわ。そういうお客さんじゃないの、この人は」
そういうお客さんでなければどういうお客さんなのか、僕にはちょっと解しかねた。それでもいらないというから、僕はお茶を出さないことにした。
「それじゃあ、空君も帰ってきたことですしね」
「あなたの汚らわしい口からこの子の名前を出さないでちょうだい。さもないと」
「ええ、わかりましたよ、わかりましたとも。黙って帰ります」
そういって男の人は玄関から出て行った。
「あの人、誰なの」
「あとで教えてあげるわ」
おばあちゃんはそれだけしか言わなかった。
そうしてとうとう、死体は五つにまでなった。
そして五つの死体が見つかった翌日のことだった。おばあちゃんは息を引き取っていた。
僕がそのことを知ったのは朝にの時だった。あんまりおばあちゃんの起きるのが遅いので起こしに行ったのだ。
おばあちゃんは眠っているように見えた。ところがいつもとは違って、おばあちゃんの枕元に『空君へ』と書かれた封筒が置いてあった。
僕はそんなものが置いてある理由が一瞬、わからなかった。手紙なんぞ書かなくたって、口で言えばいいだけのことなのにと思った。
それから口で言えないから手紙にしたのだと思い、そのあとに口で言えないのは死んでしまうと思ったからではないかと思い始めた。
僕はおばあちゃんの口元に手をやった。呼気が手に当たらなかった。脈を診た。なにも指を打つものはなかった。
僕は呆然としてしまって、床に座り込んだ。しばらく座り込んで、ようやく分別が少しだけ戻ってきた後に、救急車を呼んだ。
僕はおばあちゃんのことでひと段落がついてから、手紙を読み始めた。
結局、病院まで行ってみたがおばあちゃんの死の真相がまるでつかめなかったのである。病院の先生が言うことには心臓麻痺よりほかにはっきりとしたことを言ってくれなかった。毒で死んだりしたというわけではないという。
心臓麻痺が予知できるわけがない。しかし自分が死ぬことを予見しないで、手紙を残す理由がわからなかった。
僕は真相を手紙に求めた。それだから家に帰ってすぐに手紙を読み始めたのだった。
「空君にはどうしても面と向かっては言えないようなことだったので、手紙の上で伝えます。どうして伝えることができないのかといえば、それがあまりにひどいことで、恐ろしいことだからです。そういったわけでわざわざ手紙にして伝えます。
まず、あの五人の男を殺したのは私です。と言っても、私自身が殺したのではありません。悪魔に頼んでやってもらったのです。家に男の人が来ていたことがあったでしょう。あの男がそうです。
どうしてあの男たちを殺す必要があったのかといえば、それはあなたのお母さんのことに関係があるのです。
私はお母さんの死の真相を知るために、悪魔を召還しました。その時に引き換えにしたのは腕だけでした。
悪魔はちゃんと呼び出すことができました。また、制御にも成功していました。一言、神に言いつけるぞと言いさえすればすっかり怯えて、へりくだってばかりいました。
さて、そうしたわけでお母さんの死の真相を知ることができました。
お母さんが仕事に出かけてから、帰り道にお母さんはあの五人に出会ったのです。当時お母さんは仕事の帰りが遅かったし、あの五人と出会うのは仕方のないことです。
あの五人は麻薬や賭博にまで手を出すどうしようもない悪党でした。やつらはお母さんを連れ去らってしまって、殺してしまったのです。具体的にどんなことがあって、どういう殺し方をしたのかは聞きましたけれども、言いません。私はそれを聞いた時、悲しみと憤りと嫌悪のあまり、涙を流しました。空君にまで同じ思いはさせたくありません。
私はそうしたことを聞いて、どうあっても復讐しなくてはいけないと思いました。
私が死んでしまったら、空君は家で一人ぼっちになってしまうとは思ったのですけれど、どうしてもあの五人を殺さずにはいられなかったのです。このことはどうしても空君に謝らなくてはいけないと思います。
ああした殺し方をしたことも、復讐に含まれています。首だけをさらしておいて、死後も辱めようとしたわけです。バケツをかぶせたのは野犬などに見つからないようにするためです。もし万が一食い荒らされたりなどしたら、悪魔が誰を殺したのか確認できませんから。
私が毎日空君に言ってあそこへ連れて行ってもらっていたのは、悪魔がきちんと約束を守っているか見るためだったのです。そしてその男たちは全員が全員、悪魔がお母さんを殺したと言っていた五人であることを確認しました。
五人が死んで、私は悪魔へと命を引き渡さなければなりません。この手紙を書いている今、悪魔はそばにいて私を連れ去ろうとしています。この手紙を最後に書くだけの時間をもらっているのです。
私はあなたを愛しています。たとえ私が死んでも、あなたが私を忘れない限り、私は生き続けることができるのです。だからどうか悲しまないようにしてくださいね。そして悲しいにとらわれることなく、これからを生きて行ってくださいね」
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