青の話

豆腐

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15年前、私は政府公認の魔法少女だった。

何処かの遠い星の、その中のとある国同士の戦争をしていたそうだが、ちょっと負け気味だった国が何故か地球に目を付け、侵略して武器やら食料やらを巻き上げようと策略した。
勝ってる方の国がそれを阻止しようと頑張ったが、時既に遅しで数十人程地球に入り込んでしまった。

勝ち国からその炙り出しを依頼され、代わりにもらったチート能力を使って選ばれた全世界の10歳の少年少女と協力し、夏休み期間いっぱいを使って負け国のやつらを追い出した。
政府を巻き込んでいた為、大々的に動いてもテレビや新聞雑誌には載らないようにしていたがネットまでは制限できず、覚えている人は覚えているらしくたまに声をかけられる。
依頼終了とともにチート能力は消えてしまったが、ちょっとした便利能力が残った。
人それぞれ違うが私の場合、一度覚えた言葉はどんな言語にもかかわらず忘れない事だ。

もともと本は好きだったため、就職に有利そうな国の言葉は辞書を片っ端から読んだりインターネット配信されている講座を見たりして大体覚えた事が幸いし、再就職で伝手がないにもかかわらず現在就職している外資系のこの会社に就職出来たのだ。

「魔法少女の能力っていうか、魔法関係ないんですけどね」
「それでも、俺らからしたらほんと羨ましいよ」

本社1階に入っているコーヒーショップで引き継ぎ担当者を待ちながら、加賀地さんとコーヒーを飲む。
先週異動の話があってから、たまたまなのかヤツからの連絡はなく、私も引っ越しに忙しかったため会うことはなかった。
合鍵も返さないといけなかったので、行きたくはなかったがヤツの家に行った。が、留守だったので、合鍵と別れる旨を書いた手紙を入れた封筒を扉についている郵便ポストに入れて帰った。
元の家も引っ越して、今は会社が手配した、会社近くのマンスリーマンションに住みながら新しい部屋を探している。
水曜日に辞令の話聞けて良かった、金曜日だったら絶対無理だった・・・。
それでも、水曜木曜で荷物詰めて金曜発送(流石に1日休みをもらった。日程鬼かよ)土曜日着で、荷物開封はまだまだ出来ていない。

iPadで物件を見ながら、加賀地さんとここはどうだいやここは、と物色していると、ふと私の後ろに向かって手を振った。

「おーい、由宇ちゃんこっちこっち」
「加賀地くん、遅れてごめんねぇ」

カツカツ、とヒールの音とともに、私の横にくるのがわかったので、iPadから顔を上げる。

びじょ と イケメン があらわれた!!!

「・・・・・・・・・」
「由宇ちゃん久しぶり、元気してた?」
「元気だよー、今回はありがとうね、凄く助かるわ」
「いやいや、しごき倒してやってよ・・・・・海野?おーい、起きろ」
「あいたっ・・・はっ」

あまりの美男美女を前に、半腰の状態で固まってしまっていた。
叩かれて痛いと言うことは、夢ではない。

「す、すみません」
「いや、気持ちはわかる。俺も最初はそうだった」
「ふふ、その子があなたの言ってた子?」

美女が口に手をあててくすくすと笑う。
ああああ女神系美女と、声は出てないけど大天使系イケメンが笑ってらっしゃる・・・・ここは天国だったのか。
眩しくて直視できない。誰かサングラスくれサングラス。

「そうそう、俺が前いた会社の後輩。根性あるしアホだけどそこそこ頭もいいから。アホだけど」
「2回も言わないでください・・・・挨拶が遅れました、海野柚子です。よろしくお願いします」
「はい、よろしくね。私は坂下由宇さかしたゆう。彼は楠木陽一郎くすきよういちろう
「よろしく。君には俺の下について、サポートもしてほしい」

イケメンもとい楠木さんから名刺を受け取ると手を差し出され、握り返す。
ふおおおおおお手が大きいけど形が美しいヤバいヤバいこれは夢か何かのご褒美かそれとも悪いことが起きる前触れかいかんいかん手フェチの悪い癖が出ている自重自重。

坂下さんからも名刺を受け取り、握手を返す。
この人の手もきれい・・・撫で回したい心行くまで鑑賞したい・・・天は人に二物も三物も与えるのか・・・・・・・・。

内心泣く泣く手を離し頂いた名刺を確認する。
坂下さんは総務課課長、楠木さんは業務課課長兼ITコンサルタントのようだ。
坂下さんから住所変更の書類や名札兼カードキーの使い方、部屋が決まるまで今のマンションにいていいなどの説明を受け、会社のある上階へ案内される。
途中、総務課のある階で止まり「今日の親睦会私も行くから、場所メールしといてね」と言って降りた坂下さんを見送り、更に2つ上の階で降りる。
正面の扉をカードキーで開け、中へ促されると、フロア内の視線が一気にこちらを向いた。

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