青の話

豆腐

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金曜日。
無事に外回りを終えて、楠木さんと電車で歓迎会の会場である居酒屋近くの駅に向かう。
それにしても、何で朝の集合が私の家の最寄り駅だったんだろ・・・現地集合じゃないのか、普通。まぁ、朝一で大天使スマイルを頂いて大変ハッピーだったので問題ないけど。
そこそこ混雑している社内で楠木さんとの密着にどぎまぎしていると、ブルル、と短くスマホが震えた。LINEの通知だ。
もぞもぞ体を動かし何とかポケットからスマホをとりだすと、満田さんから連絡が来ていた。

「満田さん、本当に社長とランチに行ったんですって!しかも今からディナーですって・・・嘘でも誤魔化せるとは思いましたけど、本当になると心強いですねぇ」
「そうだったんだ、なら帰りも安心だね・・・ところで」
「? はい」
「いつ満田さんと連絡先交換したの?」
「え・・・・と、昨日集まる前に、お手洗いでお会いしたので、そこで交換しました」
「へぇ・・・仲川も知ってるの?」
「い、いえ、高校のクラスのグループの繋がりくらいです」
「ふぅん・・・俺とも交換してくれる?」
「え!?い、いいです、けど」

な、なんかゾクッとした、何だ一体。
でも、交換したときの大天使スマイルが大変麗しかったし、まぁいっか。眼福。
電車を降りて、居酒屋に行くと表に仲川が立っていた。また幹事のようだ。

「お疲れ様です、課長。ウミも。席は一番奥の左の座敷です。掘りごたつですよー」
「仲川もお疲れ。席は自由かな?」
「自由ですよ・・・あ、ウミ、後で相談あるんだけど」
「うん?わかったー」

あぁ、恒例だったあれかな?久しぶりだなぁ。
奥の座敷まで行き、楠木さんのジャケットを受け取ってハンガーにかけて隣に座る。
置いてあったお絞りで手を拭いていると、楠木さんからメニューを広げてどれにする?と聞かれる。
注文を終えると、最後に来たのか加賀地さんと仲川が入ってきた。
飲み物が全員分揃うと、乾杯してそれぞれ飲み食いを始める。

前回来られなかった人とも挨拶し終えると、ほろ酔いの仲川が向かい側に座る。
「うぇーいかんぱーい」
「はいはいかんぱーい・・・アンタ酔ってね?大丈夫なん?」
「いーのいーの、それで相談なんだけどな」
「あいあい、今回はどのようなご用件で?」
「えーと、彼女のことなんだけど」

やっぱりか。だから酔ってからきたな。

「素面で相談しろよ、ヘタレめ」
「うっせ・・・でさ、彼女が来月誕生日でさ」
「ほー?誕プレが決まってない、と?」
「そうなんだよー!!ちょっとネタ切れでさぁ、何かねぇかな?」
「そういうのは自分で考えた方がいいけどなー!彼女的にはさー!!」
「わかっちゃいるんだけどさー、考えすぎて分からんくなってんだよー」

テーブルに突っ伏す仲川に、うぅん、と腕を組んで考える。
「指輪、時計、財布、バッグ、ブレスレット、ネックレス、ピアス、イヤリング」
「指輪は今度お付き合い4周年にペアリング渡す予定。後はあげてる」
「同棲はしてる?あと、彼女の最近の写真見して。出来れば全身写ってるの」
「彼女の親が厳しいから、同棲はしてない。最近の写真は・・・これだな。先週のやつ」
「甘カジ系か、バッグも同系統だな・・・ペア物とかは?あげたことある?」
「・・・ペアカップなら、俺んちにある」
「予算は?」

このくらい、と指を3本立てる。
ここ最近見た雑誌やネットの情報を思い出しながら、iPadでいくつかブランドのサイトを開いて見せる。

「アクセは、今度ペアリングあげるなら避けようか。お泊りしたりするなら、ヨッシーん家に置くルームウェアはどうかな。たぶんこのブランドと、このブランド辺りは好きそう・・・財布あげたのはいつ頃?」
「あ、こっちのブランド、ポーチとか持ってんの見たことあるかも。財布は確か3年前、あの飲み会のちょうど1週間前にあげた」
「ならぼちぼち換え時だね。このメーカー、本革オーダーメイドの割にお手頃だから、このシリーズをペアで作ってもいいんじゃないかな。」
「お、それいいな。ペア物欲しがってたし、財布にすっかな。あんがとな」
「Skypeでサイト送っといたから、まぁ見てみなよ。彼女、働いてるなら名刺入れとかパスケースでもいいと思うよ。因みにルームウェアだと、このブランドならこっちの夏限定ロンパか上下セットがおすすめ。ショーパンタイプだから美脚が映えるよ!!触り放題!!!」
「うっせ何俺の彼女で妄想してんだ馬鹿でもありがとよ!!!・・・うおっ」
「ん?・・・・・びぇっ」

うふふと我ながらゲスい顔でおすすめしたら仲川に叩かれた。痛い。
仲川が右を見て驚いた声を上げたので、何かなと、同じ方向を見ると楠木さんの顔が、息がかかるくらい近いところに、あった。
ほあああああ美しいお顔が近い近い近いよお客様こんなドアップなのに耐えられるお肌とかお顔やばいいや美し過ぎて私が耐えられない目が、目があああほんとにこの人33歳なの本当にありがとうございます
五体投地しそうになる手前まで興奮していると、反対から加賀地さんが肩を叩かれた。

「おい、戻ってこい」
「・・はっ、な、なんでしょう」
「あのな、こいつ三橋っつーんだが、結婚記念日のプレゼントの相談にのってほしいってよ」
「おれ、B班の三橋。早速で悪いけど、お願いしてもいいかな?」
「えっと、はい、大丈夫です」
「あの!彼氏のプレゼントとかも、相談できるかな?あ、私A班の蔵岡です」
「え、えぇ、ある程度情報を頂ければ」

俺も私も、と次々と人が来て、何の飲み会だか分からない状態になった。
数人相談にのったところで、時間が来てしまいお開きとなった。

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