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仕事したり電話したり荷物を纏めたり課の先輩方の相談に乗ったり魔法少女仲間が銀行強盗にあっていたのをちょっと手助けしたり仕事したりして、週末。
「これで終わりか?」
「えぇ、後は戸締まりして終わりです」
「そうか。なら、家に向かおう」
2週間しかいなかった部屋を後にして、先週もお世話になった濃いピンク寄りの赤色の車に乗る。
楠木さんには、引っ越しまで手伝ってもらって申し訳ないが本当に助かった。平日はともかく、休日なら浮気野郎のいる横浜から往復できる距離だし、住所まではバレてないだろうが駅バレの可能性が捨てきれないから一緒に居てくれるだけで有り難い。荷物の郵送代も浮くし。
「こんなに早く引っ越しできるなんて思っても見ませんでした。楠木さんのおかげです」
「いや、女性一人で引っ越しとか大変だろ?当たり前だよ」
「それでも助かってるのは事実なので。ありがとうございます」
そもそも、引っ越しは運び出しだけでも仲川に頼もうと思っていたのだ。
****************
木曜日、ぼちぼち片付けていた荷物が思いの外多かったことに気づき、一人で引っ越しは厳しいと考えていたところ、出勤してきた仲川がデスクに座るのを見て、そういえば相談料を貰ってないことを思い出し、手伝ってもらおうと声をかけた。
来るときの郵送代は本当に高かった。会社が出してくれたから良かった・・・引っ越し業者に頼むと高いし、使えるやつは使わねば。一人でやると、午後に来る前の家で使っていた荷物と、ベッドとソファの搬入に間に合わない。
「よっしー、この前の相談料として引っ越し手伝って。レンタカー借りてやるから、一人でやると時間かかるのよ」
「えー、いつ?」
「土曜日」
「えぇよ・・・・あ、や、ごめんやっぱ無理」
頷いたと思ったら、青い顔をして首を思いっきり横に振られる。
具合悪いのか?と顔を寄せようとしたら、ぽんと肩を叩かれた。
「おはよう、海野、仲川」
「楠木さん、おはようございます!」
「お、おはようございます・・・」
振替ると、楠木さんが立っていた。
今日も笑顔がお美しいいいあ、あ、きれいな御手が肩に肩にああああああと荒ぶる内心を抑えて挨拶を返す。
「何の話してたんだ?」
「あぁ、今週末には引っ越し、荷物が意外と増えてたので、仲川にこの前の相談料代わりに手伝ってもらおうと思ってたんですけど」
「ち、ちょっと、予定が入ってたの思い出しまして」
ハハハ、と引き攣った顔で笑う仲川。大丈夫かこいつ。体調悪いのか?
んん?と首を傾げていると、後ろから頭を撫でられた。
「それなら手伝うよ」
「え、先週も付き合ったもらったのに、何度もお手数かける訳にはいかないですよ」
「予定もないし、住むマンション一緒だから、全然手間じゃないし」
「う、うぅ・・・」
「それに、引っ越してすぐ買出しとかもしたいだろ?人手があった方が早く終わるし」
「そ、れは、そうですけど・・・・」
「ウミ、手伝ってもらえよ。一人でやるのキツいんだろ?」
上司にそんなに手伝ってもらってばかりで申し訳ない、しかし人手はいるしと迷って迷っていると、仲川が引き攣った顔のまま勧めてくる。
何か汗までかいてるが、どうした。風邪か?
額に手を当ててみたが、特に熱はないようだ。
「ヒッ」
「んー、熱はないみたいだけど、あんた顔色ヤバいよ。大丈夫?」
「だっ大丈夫大丈夫!!それよか、引っ越し引っ越し!」
「あぁ、う~~ん・・・あの、お願いしてもいいですか?」
「勿論だ。土日と同じ時間でいいか?」
「はい、よろしくお願いします」
じゃ、と仲川に手を振り楠木さんと一緒にデスクに戻る。
その後、相談料として夢の国のシーのパークチケットをもらった。
やった、夢の国の夏イベ満喫じゃ!!!
****************
という事で、仲川が都合がつかず、再度楠木さんにお願いすることになってしまったのだ。何度も申し訳ない。
何かお礼がしたいが、何がいいかさっぱり分からないのだ。出来れば好みに合わせたいし。装飾品も考えたが、いつも身につけてるものがお高そうな物ばかりなので却下だ。お財布に相談する前に門前払いをくらうわ。無理。
むーん、と考えていると、いつの間にかマンションに着いていた。
「さ、着いたよ」
「・・・・・・」
「? どうした?」
「イエナンデモアリマセン」
お、乙女ゲームのスチルかと思った・・・車のドア開けて手を出してくる仕草が似合うとか紳士かよこの人攻略キャラだったのか系統は爽やか大天使系紳士か日の光が似合いすぎ大天使ィと頭に一気に駆け抜けたところで現実に戻った。ヤバいよこの人、何がヤバいって、ヤバいって言葉しか出て来なくなるところがヤバい。語彙が死ぬ。
差し出された手を無視できず、取り敢えずその美術品みたいな手に自分の手を乗せると、そっと引かれて立つ。そのまま腰に手をまわされマンションに向かって歩き出す。
あれ、荷物は!?
「あぁ、コンシェルジュが台車で運んで行ったよ」
「え!?」
「ほら、あそこ」
エレベーター前に、荷物を乗せた台車を1台ずつ押している男女のコンシェルジュさんが居た。い、いつの間に。
慌てて追いかけて、エレベーターに乗りこみ、3階へ向かう。
「これで終わりか?」
「えぇ、後は戸締まりして終わりです」
「そうか。なら、家に向かおう」
2週間しかいなかった部屋を後にして、先週もお世話になった濃いピンク寄りの赤色の車に乗る。
楠木さんには、引っ越しまで手伝ってもらって申し訳ないが本当に助かった。平日はともかく、休日なら浮気野郎のいる横浜から往復できる距離だし、住所まではバレてないだろうが駅バレの可能性が捨てきれないから一緒に居てくれるだけで有り難い。荷物の郵送代も浮くし。
「こんなに早く引っ越しできるなんて思っても見ませんでした。楠木さんのおかげです」
「いや、女性一人で引っ越しとか大変だろ?当たり前だよ」
「それでも助かってるのは事実なので。ありがとうございます」
そもそも、引っ越しは運び出しだけでも仲川に頼もうと思っていたのだ。
****************
木曜日、ぼちぼち片付けていた荷物が思いの外多かったことに気づき、一人で引っ越しは厳しいと考えていたところ、出勤してきた仲川がデスクに座るのを見て、そういえば相談料を貰ってないことを思い出し、手伝ってもらおうと声をかけた。
来るときの郵送代は本当に高かった。会社が出してくれたから良かった・・・引っ越し業者に頼むと高いし、使えるやつは使わねば。一人でやると、午後に来る前の家で使っていた荷物と、ベッドとソファの搬入に間に合わない。
「よっしー、この前の相談料として引っ越し手伝って。レンタカー借りてやるから、一人でやると時間かかるのよ」
「えー、いつ?」
「土曜日」
「えぇよ・・・・あ、や、ごめんやっぱ無理」
頷いたと思ったら、青い顔をして首を思いっきり横に振られる。
具合悪いのか?と顔を寄せようとしたら、ぽんと肩を叩かれた。
「おはよう、海野、仲川」
「楠木さん、おはようございます!」
「お、おはようございます・・・」
振替ると、楠木さんが立っていた。
今日も笑顔がお美しいいいあ、あ、きれいな御手が肩に肩にああああああと荒ぶる内心を抑えて挨拶を返す。
「何の話してたんだ?」
「あぁ、今週末には引っ越し、荷物が意外と増えてたので、仲川にこの前の相談料代わりに手伝ってもらおうと思ってたんですけど」
「ち、ちょっと、予定が入ってたの思い出しまして」
ハハハ、と引き攣った顔で笑う仲川。大丈夫かこいつ。体調悪いのか?
んん?と首を傾げていると、後ろから頭を撫でられた。
「それなら手伝うよ」
「え、先週も付き合ったもらったのに、何度もお手数かける訳にはいかないですよ」
「予定もないし、住むマンション一緒だから、全然手間じゃないし」
「う、うぅ・・・」
「それに、引っ越してすぐ買出しとかもしたいだろ?人手があった方が早く終わるし」
「そ、れは、そうですけど・・・・」
「ウミ、手伝ってもらえよ。一人でやるのキツいんだろ?」
上司にそんなに手伝ってもらってばかりで申し訳ない、しかし人手はいるしと迷って迷っていると、仲川が引き攣った顔のまま勧めてくる。
何か汗までかいてるが、どうした。風邪か?
額に手を当ててみたが、特に熱はないようだ。
「ヒッ」
「んー、熱はないみたいだけど、あんた顔色ヤバいよ。大丈夫?」
「だっ大丈夫大丈夫!!それよか、引っ越し引っ越し!」
「あぁ、う~~ん・・・あの、お願いしてもいいですか?」
「勿論だ。土日と同じ時間でいいか?」
「はい、よろしくお願いします」
じゃ、と仲川に手を振り楠木さんと一緒にデスクに戻る。
その後、相談料として夢の国のシーのパークチケットをもらった。
やった、夢の国の夏イベ満喫じゃ!!!
****************
という事で、仲川が都合がつかず、再度楠木さんにお願いすることになってしまったのだ。何度も申し訳ない。
何かお礼がしたいが、何がいいかさっぱり分からないのだ。出来れば好みに合わせたいし。装飾品も考えたが、いつも身につけてるものがお高そうな物ばかりなので却下だ。お財布に相談する前に門前払いをくらうわ。無理。
むーん、と考えていると、いつの間にかマンションに着いていた。
「さ、着いたよ」
「・・・・・・」
「? どうした?」
「イエナンデモアリマセン」
お、乙女ゲームのスチルかと思った・・・車のドア開けて手を出してくる仕草が似合うとか紳士かよこの人攻略キャラだったのか系統は爽やか大天使系紳士か日の光が似合いすぎ大天使ィと頭に一気に駆け抜けたところで現実に戻った。ヤバいよこの人、何がヤバいって、ヤバいって言葉しか出て来なくなるところがヤバい。語彙が死ぬ。
差し出された手を無視できず、取り敢えずその美術品みたいな手に自分の手を乗せると、そっと引かれて立つ。そのまま腰に手をまわされマンションに向かって歩き出す。
あれ、荷物は!?
「あぁ、コンシェルジュが台車で運んで行ったよ」
「え!?」
「ほら、あそこ」
エレベーター前に、荷物を乗せた台車を1台ずつ押している男女のコンシェルジュさんが居た。い、いつの間に。
慌てて追いかけて、エレベーターに乗りこみ、3階へ向かう。
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