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「わざわざここまで、ありがとうございます」
「いえいえ、ご希望頂いた場合は荷物の受け渡しもしておりますので」
「ついでに紹介しておくよ。コンシェルジュの近衛と新田だ。他にもいるが、この二人は勤めて長いんだ。何かあれば頼るといい」
「よろしくお願いします」
「此方こそ、お世話になります。あの、これ地元の銘菓なんです。皆さんで食べてください」
先週、鍵をくれた初老の方が近衛さん、ショートカットのお姉さんが新田さんだそうだ。
キリッとしてかっこよかったが、母から送ってもらった銘菓を渡すと嬉しそうににこにこして受け取ってくれた。可愛いなぁ。
二人はそれぞれの部屋にダンボールを置いて、仕事に戻っていった。
「お昼はどうしようか。何か食べたい物はあるか?」
「うーん、居ない間に荷物が来ちゃうかもしれないですよねぇ」
「そうだな・・・何かデリバリーでも頼むか」
すいすい、と楠木さんが自身のiPhoneをいじるのを見ながら、持ってきた荷物を思い出す。
そういえば、いくらか食材が残っていた。
「あの、何か作りましょうか?」
「え?」
「えっと、嫌でなければ、ですけど」
「全然嫌じゃない、お願いしてもいいか?」
「は、はい、簡単なものだけですけど」
うお、食い気味。あんまり期待されても困るんだけど。
キッチンに入り、ダンボールからエプロンと鍋とフライパン、まな板と包丁とボールをとりだす。取り敢えず使うかはさておき、小さい鍋2つとフライパンをコンロに置いてみた。三口って便利だ。
エプロンを着けて、食材の確認。さて、保冷バッグの中身はどうかなー。保冷剤と冷凍した肉とか野菜でそこそこガッツリ冷えてると思うけど、と1番心配だったバターケースを取り出し中身を確認するが、全く溶けてなかった。安心安心。
鍋にお湯を沸かしながら材料を出していると、何か手伝うか、と楠木さんから声をかけられたので、ベランダに出しておいたハーブの鉢の中からバジルを詰んできてもらうように頼む。
鍋にまとめ買いしたときに切って冷凍しておいたベーコンとしめじ、水を入れて火にかける。
もう1つは普通にお湯を沸かす。沸いたところで火を止め、切り込みをいれたトマトを2つボンボン入れる。皮がふやける間ににんにく2つを細かく刻んで、半分はボールへ。
「バジル、このくらいでいいか?」
「ありがとうございます!あと、ダンボールからトースター出してもらっていいですか?朝食ってマジックで大きく書いてある箱なんですけど」
「・・・あった、これか」
トマトを湯剥きしてサイコロ状に切り、バジルも細かく切ってにんにくと合わせ、オリーブオイルとパルメザンチーズ、塩胡椒と和えてブルスケッタの具を作り、ラップをして保冷バッグへ戻す。味が馴染む時間が短くなるかもしれないが、まぁ仕方ない。
トマトの湯剥き用のお湯を沸かした鍋をシンクに退けて、深めの大きいフライパンを出してまたお湯を沸かす。
湯が沸くまでに、ベーコンとしめじをいれた鍋に茹でて冷凍しておいたほうれん草、人参、じゃが芋を入れて、顆粒だし、薄口醤油、ブラックペッパーで味付けをして和風ポトフの完成。
深型フライパンのお湯が沸いたところでパスタを入れて軽く解して蓋をする。
最初に出しておいたフライパンを火にかけ、オリーブオイルとにんにくの残りを入れて熱している間に茄子、ししとう、パプリカを切って入れて炒める。ある程度火が通ったところでさらにウインナーをのせて酒、水、塩を入れて蓋をして蒸す。
その間にパスタをザルにあげてバターで和えておき、空いた深型フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れて香りが立つまで熱する。
間で蒸し焼きのフライパンの蓋を開けてヘタを取ったミニトマトを入れて軽く混ぜ、水分が飛ぶまで火にかけておく。
深型フライパンに茹でて冷凍したほうれん草、海老を入れて炒め、バター、醤油で味付けしパスタを投入。塩胡椒で味を整えて和風パスタの出来上がりだ。
深型フライパンも水分が飛んだところで火を止める。
ブルスケッタ用のバゲットを出そうと顔を上げたところで、カウンターに頬杖をついた楠木さんからジッと見られていた事に気付いた。
「あ、やっと気付いた」
「も、もしかして呼びました?」
「いや、呼んではないよ。ただ見てただけだ。手際いいな・・・トースターは取り敢えずここに置いておくな」
「ありがとうございます。家族が多かったので、品数作るのに大変だったんです。慣れですね」
「へー、大したもんだな。見てて面白かったよ」
「ソ、ソソ、ソウデスカ」
向けられた笑顔に熱くなる顔を伏せて誤魔化し、パン切り包丁でバゲットを切る。
カウンターに置かれた朝食準備セットのトースターに切ったバゲットを入れてトーストする。焼けたところでバターを塗り、ブルスケッタの具を乗せて完成。
「出来ましたー!」
「おー」
ぱちぱち、と手を叩く楠木さんに笑顔を返しながら、先週買った食器に盛る。
お客様が来た時用にセット買いしたのが早速役に立った。
因みに、今まで使っていた分は一部を除いて捨てた。アイツが使っていた物を見ると腹が立つので。
テーブルがまだ無いので、カウンターで立食でいただきます。
「保存食ばっかりだったので、素材偏ってますね、すみません」
「いや、充分美味いよ。毎日作って欲しいくらい」
「またまたー、大げさですよぉ。ありがとうございます」
「冗談じゃないんだがなぁ・・・それより、これすごいな。コーヒーメーカーとホットプレートとトースターが一緒になってるんだな」
「?・・・あぁ、これ、弟が留学先で使ってたやつを貰ったんですよ!便利なんですよ、これ」
何か話を逸らされた気もするが、まぁいっか。
朝食準備セット、その名の通り朝食の準備に使用するものがくっついているのだ。
少々火力が足りないが、取り外しお手入れも楽ちんだし。
弟は帰国してからは実家暮らしになり、実家では使わないからと貰ったのだ。
「本当はミル付きのコーヒーメーカーが欲しいんですけどね。まだ使えるから買うの勿体なくって」
「挽きたては美味しいもんな。うちにあるから、良かったら今度飲みに来るといいよ」
「本当ですか?ありがとうございます!」
それからも仕事の事やこの近くのスーパーなどのお店についてなど、雑談しながら昼食を楽しんだ。
「いえいえ、ご希望頂いた場合は荷物の受け渡しもしておりますので」
「ついでに紹介しておくよ。コンシェルジュの近衛と新田だ。他にもいるが、この二人は勤めて長いんだ。何かあれば頼るといい」
「よろしくお願いします」
「此方こそ、お世話になります。あの、これ地元の銘菓なんです。皆さんで食べてください」
先週、鍵をくれた初老の方が近衛さん、ショートカットのお姉さんが新田さんだそうだ。
キリッとしてかっこよかったが、母から送ってもらった銘菓を渡すと嬉しそうににこにこして受け取ってくれた。可愛いなぁ。
二人はそれぞれの部屋にダンボールを置いて、仕事に戻っていった。
「お昼はどうしようか。何か食べたい物はあるか?」
「うーん、居ない間に荷物が来ちゃうかもしれないですよねぇ」
「そうだな・・・何かデリバリーでも頼むか」
すいすい、と楠木さんが自身のiPhoneをいじるのを見ながら、持ってきた荷物を思い出す。
そういえば、いくらか食材が残っていた。
「あの、何か作りましょうか?」
「え?」
「えっと、嫌でなければ、ですけど」
「全然嫌じゃない、お願いしてもいいか?」
「は、はい、簡単なものだけですけど」
うお、食い気味。あんまり期待されても困るんだけど。
キッチンに入り、ダンボールからエプロンと鍋とフライパン、まな板と包丁とボールをとりだす。取り敢えず使うかはさておき、小さい鍋2つとフライパンをコンロに置いてみた。三口って便利だ。
エプロンを着けて、食材の確認。さて、保冷バッグの中身はどうかなー。保冷剤と冷凍した肉とか野菜でそこそこガッツリ冷えてると思うけど、と1番心配だったバターケースを取り出し中身を確認するが、全く溶けてなかった。安心安心。
鍋にお湯を沸かしながら材料を出していると、何か手伝うか、と楠木さんから声をかけられたので、ベランダに出しておいたハーブの鉢の中からバジルを詰んできてもらうように頼む。
鍋にまとめ買いしたときに切って冷凍しておいたベーコンとしめじ、水を入れて火にかける。
もう1つは普通にお湯を沸かす。沸いたところで火を止め、切り込みをいれたトマトを2つボンボン入れる。皮がふやける間ににんにく2つを細かく刻んで、半分はボールへ。
「バジル、このくらいでいいか?」
「ありがとうございます!あと、ダンボールからトースター出してもらっていいですか?朝食ってマジックで大きく書いてある箱なんですけど」
「・・・あった、これか」
トマトを湯剥きしてサイコロ状に切り、バジルも細かく切ってにんにくと合わせ、オリーブオイルとパルメザンチーズ、塩胡椒と和えてブルスケッタの具を作り、ラップをして保冷バッグへ戻す。味が馴染む時間が短くなるかもしれないが、まぁ仕方ない。
トマトの湯剥き用のお湯を沸かした鍋をシンクに退けて、深めの大きいフライパンを出してまたお湯を沸かす。
湯が沸くまでに、ベーコンとしめじをいれた鍋に茹でて冷凍しておいたほうれん草、人参、じゃが芋を入れて、顆粒だし、薄口醤油、ブラックペッパーで味付けをして和風ポトフの完成。
深型フライパンのお湯が沸いたところでパスタを入れて軽く解して蓋をする。
最初に出しておいたフライパンを火にかけ、オリーブオイルとにんにくの残りを入れて熱している間に茄子、ししとう、パプリカを切って入れて炒める。ある程度火が通ったところでさらにウインナーをのせて酒、水、塩を入れて蓋をして蒸す。
その間にパスタをザルにあげてバターで和えておき、空いた深型フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れて香りが立つまで熱する。
間で蒸し焼きのフライパンの蓋を開けてヘタを取ったミニトマトを入れて軽く混ぜ、水分が飛ぶまで火にかけておく。
深型フライパンに茹でて冷凍したほうれん草、海老を入れて炒め、バター、醤油で味付けしパスタを投入。塩胡椒で味を整えて和風パスタの出来上がりだ。
深型フライパンも水分が飛んだところで火を止める。
ブルスケッタ用のバゲットを出そうと顔を上げたところで、カウンターに頬杖をついた楠木さんからジッと見られていた事に気付いた。
「あ、やっと気付いた」
「も、もしかして呼びました?」
「いや、呼んではないよ。ただ見てただけだ。手際いいな・・・トースターは取り敢えずここに置いておくな」
「ありがとうございます。家族が多かったので、品数作るのに大変だったんです。慣れですね」
「へー、大したもんだな。見てて面白かったよ」
「ソ、ソソ、ソウデスカ」
向けられた笑顔に熱くなる顔を伏せて誤魔化し、パン切り包丁でバゲットを切る。
カウンターに置かれた朝食準備セットのトースターに切ったバゲットを入れてトーストする。焼けたところでバターを塗り、ブルスケッタの具を乗せて完成。
「出来ましたー!」
「おー」
ぱちぱち、と手を叩く楠木さんに笑顔を返しながら、先週買った食器に盛る。
お客様が来た時用にセット買いしたのが早速役に立った。
因みに、今まで使っていた分は一部を除いて捨てた。アイツが使っていた物を見ると腹が立つので。
テーブルがまだ無いので、カウンターで立食でいただきます。
「保存食ばっかりだったので、素材偏ってますね、すみません」
「いや、充分美味いよ。毎日作って欲しいくらい」
「またまたー、大げさですよぉ。ありがとうございます」
「冗談じゃないんだがなぁ・・・それより、これすごいな。コーヒーメーカーとホットプレートとトースターが一緒になってるんだな」
「?・・・あぁ、これ、弟が留学先で使ってたやつを貰ったんですよ!便利なんですよ、これ」
何か話を逸らされた気もするが、まぁいっか。
朝食準備セット、その名の通り朝食の準備に使用するものがくっついているのだ。
少々火力が足りないが、取り外しお手入れも楽ちんだし。
弟は帰国してからは実家暮らしになり、実家では使わないからと貰ったのだ。
「本当はミル付きのコーヒーメーカーが欲しいんですけどね。まだ使えるから買うの勿体なくって」
「挽きたては美味しいもんな。うちにあるから、良かったら今度飲みに来るといいよ」
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